さて、お次は「眼」である。こちらは3年ほど前から「緑内障」の治療を続けているが、元々長
く通院していた眼科を変えたことに潮目が変わる。あまりの待ち時間の長さと、それについての
説明が受付時になく、ほぼ3時間も(!)待たされた挙句に受診しないまま目薬だけもらって帰
宅、その対応に我慢できずに自宅近くのX眼科に変えたのだが、こちらの対応にも大いに驚かさ
れる事態になってしまったのである。
まずは目薬が切れたので1/25に受診し、緑内障関連の検査を受けた後2/25の予約を入れられ、
再度目薬の処方と検査を受けると、突然初めての院長の診察時に「緑内障の進みを遅くするため
に手術をしましょう。同じ目の手術なので、同時に白内障の手術もします。次回、説明会に来て
ください」と言われてこちらはびっくり仰天である。
前の眼科クリニックで緑内障の手術について訊ねたことがあるが、「点眼薬で充分」と断られ、
白内障についても「まだまだ急ぐ必要はない」と聞いていたのに、いきなり診察後の看護師さん
から手術の日程や眼内レンズについて説明され、3/29の説明会に来るよう言い渡されて、まさ
しく「眼が点」になる始末。
ともあれ、説明会に参加してから、とはいうものの、この時点で5月第1週、第2週の手術予
定を入れられたりと、事は着々と進んでいく。勤務も休む必要があるので、一応リーダーに声
を掛けておいたが、急展開に納得出来ている訳ではない。あくまでもこの時点では「様子見」
で何も決めてはいなかったのである。
肝心の説明会は7,8人ほどの参加者がいたが、パソコンの大画面での簡単な映像説明の後、
有無を言わせず検査、院長の診察へと雪崩れるように進み、「緑内障の進みを遅くする手術
です」、「白内障は単焦点レンズで正視(遠方合わせ)になります」とまくしたてられ、さ
すがに「遠方合わせでは仕事で使うパソコン画面を見られないので、中間合わせを希望した
いのですが」と切り出すと、「それなら多焦点レンズになりますね。レンズ代は自費です」
と切って捨てるように言われ、「どうするか決めて電話してください」と話を打ち切られて
しまう有様。
その後、看護師さんに確認すると「選定療養のレンズ(手術等は保険適応)は、乱視込みで
両眼5~60万円」、「全部自費だと120万円ぐらい」と聞かされるに至って、とんでもない
話だと鼻白んでしまい、「もう少し考えてみます」と言い置いて帰宅した。
大事な眼のこと、多少の出費はやむを得ないが、それでも5~60万円はやはりお高い。2020
年までは、医療保険の「先進医療」に加入していれば2焦点、3焦点の高額眼内レンズを入
れても補填されたが、その制度も打ち切られ、今や「保険診療の単焦点レンズ」か「自費診
療の高額多焦点レンズ」かのほぼ二択になりつつあるらしい。
だが、うろ覚えながら確か「保険適応の多焦点レンズ」があったはずだと思い出し、ネット
検索で調べた処、「レンティスコンフォート」というレンズが見つかった。正しくは『低加入
分節型眼内レンズ』と呼ばれ、上半分が遠方に合うようなレンズ、下半分に+1.5Dという加
入度数(少し近くが見えるような度数)が入ったプレート状のレンズで、多くの単焦点や多
焦点レンズのような、丸いレンズに曲がった足の付いた外見とは全く異なっている。
完全に保険診療が適応される単焦点眼内レンズの扱いながら、2焦点のため私の希望通り、中
間とやや遠方に合わせられ、最近追加の乱視用を選べば乱視の矯正も可能で、多焦点にありが
ちなハロー、グレアも少なく、単焦点より広く良好な視野を得られるとのこと。
「これだ!」を膝を打って、すぐに「レンティスコンフォート トーリック」を使用している
眼科を調べてみたが、これがなかなかない。熊本、福岡、広島、岐阜、愛知、神奈川、東京、
埼玉、宮城、青森と遠方ばかりで、関西に絞ってみても大阪府、京田辺、神戸とかなり遠く、
西宮市内には夙川と甲子園口の眼科ぐらいで、しかも最寄駅からはかなり歩く立地である。
悩んだ末、甲子園口の「うえはら眼科クリニック」さんを選ぶことに。理由は、使用レンズの
一覧(長短所や保険適応か否かなど)のページがあり、ネットでの予約やキャンセルが容易で、
19時と遅くまで診療しているなど、患者に優しいクリニックさんだと信じられたからである。
早速3/31に予約、これまでの経緯を説明し、「やや近視寄りの中間~やや遠方合わせ」の希望
と「レンティスコンフォート トーリック」を使用したいと話すと、すぐにパソコンを使う勤務
先の仕事内容を理解されホッとして手術をお願いしたような次第である。すぐに5/16に右目、
5/23に左目の手術が決定。3日前から術前の目薬点眼が開始、13時の手術開始前1時間にク
リニックに到着。散瞳(術前に瞳孔を開く)のための点眼、乱視用にレンズの傾きが判るよう
白目に青いインクで印を入れられ、麻酔の点眼薬の後、いよいよ手術室へ。
リクライニングした椅子に座り、胸に心電図の端子を、右中指には酸素濃度の機械を付けられ、
顔には目の部分を空けた重めの防水布が掛けられた。ざぶざぶと消毒液を顔に流され、まぶしい
ライトの下、右目を閉じないよう固定されて執刀が始まった。
さくっと黒目と白目の境に小さくメスが入る。違和感はあるが、痛みはない。続いて水晶体を
砕く機械の先端が差し込まれ、水晶体がみるみる砕かれ、吸い出されていく(らしい。先生の
口頭説明による)。少し眼球を押される感じがあるが痛みも不快感もほぼなかった。そのうち、
眼内レンズが差し込まれ、あっという間に中で開いた(見えるというのも変だがはっきり判っ
た)。視界が少し明るくなり、乱視用に眼内レンズの位置を調整、およそ15分くらいで手術は
あっさりと終了。
保護メガネをかけ、少し休憩しただけで、無事クリニックを後にした。裸眼視力がド近眼の左
目で歩くのは頼りないが、あいにくタクシーがつかまらず、付き添いの高齢の母を頼りにゆっ
くり慎重に最寄り駅の甲子園口まで歩く。途中で、眼内レンズが落ち着いたのか視野が開け、
視界がよく見えるようになって少々驚く。
右目は青みが強くなり、左目の黄色味がかった視界とは色味がかなり異なって見え、また近視
も乱視も矯正されて、不安定ながら良好な視界を得て、気分はうきうきに。もちろん、切開の
痛みやゴロゴロ感もあるのだが、見えて一安心という処。バスと電車を乗り継いで、無事帰宅
後は痛み止めを飲み、所定の目薬を差して、ひたすら横になって眠ることに。
翌日も翌々日も、クリニックに行く以外は、目薬を差して横になるだけ。右目は非常に順調で
最初から視界もクリア、0.8程度の視力で上々吉の首尾だったかな。
5/22にはお試しで出勤し、お仕事再開。右目だけが見えている訳だが、視界良好で仕事に差し
支えは全くない。なので、二回目ということもあり、右目同様3日前から術前の点眼を開始、
楽な気分で13時の手術開始1時間前にクリニックに赴いた。その後も右目同様、散瞳(術前に
瞳孔を開く)のための点眼、乱視用にレンズの傾きが判るように白目に青いインクで印を入れ
られた時に違和感が発生。前回には感じなかった強い痛みがあり、あっと思ったが、先生に告
げる間もなく部屋を移動、麻酔の点眼薬の後には手術室へ。
その後の経緯は同じだが、やはり直前のライン入れの痛みが鈍く続いているのが気になった。
前回より時間が掛かっていたようだが、今回も無事に終了。保護メガネをかけて、呼んでもら
ったタクシーで甲子園口まで戻り、前回同様バスと電車を乗り継いで帰宅。痛みが強く、目薬
もそこそこにすぐに横になった。
今回は前回とはかなり違いがあると感じた。視界も霞が掛かったようにクリアではなく、とも
かく目がゴロゴロしてすっきりしない。翌日の受診時に先生に説明すると、写真などを撮られ、
改めて説明してもらうと、何ということか、左目の角膜がペロリと剥がれている。元々、ドラ
イアイがあったのだが、大量の消毒液の流し込みや手術の刺激により、薄く剥がれたのだとか。
という訳で、痛み止めを追加してもらい、抗菌目薬以外にドライアイ用のヒアルロン酸目薬を
処方されて、角膜の回復を待つことになった。その後、ヒアルロン酸目薬はあまり回復が見ら
れないようで、別の目薬に交換となり、今はまだふたつの目薬で角膜の回復を待つのみである。
診察ごとの視力検査でも、左目は角膜剥がれによる霞が災いして、遠方中間とも視力は0.3と
なかなか上がらない。とはいえ、5/29から出勤だが、仕事に大きな影響はなく、何とかこなせ
てはいるので、ホッとしている次第である。術後約3週間、まだ完全ではないが、まずまず見
えてはいるので、視界万全まで待ち遠しい限りである。
白内障の術後の安定は3ヶ月から半年かかるとか。「レンティスコンフォート トーリック」
の使用感を含め、おいおい追記していきたいと思っている。術後1ヶ月ほどの現在はまあまあ
落ち着いていると言えるだろう(続)。