つい先日、某SNSで二次創作の漫画家さんがトレスされました、みたいなツイを上げておりました。

 ただ、それその人の同人誌の作品を表紙から話、コマ割り、台詞に至るまでほぼ丸パクリで、トレパクって言うより完全盗作ではないかと思うんですよね。

 で、ウワサのパクった当人はアカウント消しているようですが……正直クリエイター側の人間としてこんなに悲しいことはありません。

 

 こういう案件が出るとよく、

「二次創作なんて前提がパクりみたいなものなんだからいちいちトレスぐらいでうるさく言うな」

 という方も出て来るんですけど、要は素材を使ってオリジナルな話を動かす訳ですよ二次創作って。

 それだけ漫画家さんや小説家さんがその作品やキャラクターが好きすぎて、妄想で話を作る訳です。

「こんな話とかあったら面白いだろうな」

「こういう考え方しそうだから、あんなトラブルを発生させて……」

 とかですね。溢れまくる愛なんですよ。

 

 これって、原作を読んでる人も楽しめたりするし、逆にその話を読んで原作に興味を持って読もうとする人たちもいるので、決して悪い話ではないハズなのです。だから二次創作も【作品を貶める方向にならなければ黙認します】と言うスタンスのプロの漫画家さんや出版社も多いんだと思います。要はファン活動の一環ですしね。

 

 それでよっぽど利益を上げてるなんてことがあればそれは問題かも知れませんが、大多数は良くてせいぜい印刷代金と即売会での交通費やホテル代、あとはお気持ち程度の原稿代(注いだ創作時間を時給に換算すると泣けてくるぐらいの額)みたいなもので、赤字になるような個人やサークルばかりじゃないかと思います。好きじゃなきゃやれねえわ、って感じですね(笑)

 

 まあ私も昔同人誌作成をやっていただけなので現在のシステム的なものは分かりません。今はBOOTHやDLsiteみたいな同人誌をネット上で普通に販売できるところがいくつもあるので、経費的にはもっと削減出来ているかも知れませんね。

 

 だから二次創作とは言えストーリー構成やコマ割り、キャラの動かし方に至るまで作者のオリジナル要素が多々あるんです。

 『HUNTER×HUNTER』とかで例えると、ゴンやキルア、クラピカなど主要なキャラの性格的なものを考え、こういう行動しそうとかこんな展開になりそうだ、と考えてその通りに駒を配置するのであって、それも個人の創作力ですよね。

 皆が皆、このキャラクターの駒好きなように動かして面白いの作って、って言われて作れるか、という話になります。

 ここに「愛情のあるなし」「面白い話を作れる技能があるか」が如実に表れるんだと私は考えます。

 

 ですから、人の作品を丸パクリしてさも自作のように売るとかね、正直創作者としての価値はゼロ、いやマイナスです。

 だって自分で何一つ生み出してないんですから。

 

 ……で、そこで疑問なんですけど、絵も話も丸パクリするのにも時間と労力はかかるじゃないですか。

 コピーして使えば丸々盗作なのが分かるから出来ないだろうし、全部自分でデジタルでも紙でも描いてちょこっと変えて行かないとダメでしょう?

 そんな時間を費やしてまでオリジナリティーの欠片もないものを作って何が楽しいのかが分からないんですよ私には。

 だって万が一それが話題になったり、出版社から声が掛かったりすればそれだけ人の目に触れるんですよ?

 そうしたらそれまで元の漫画家にバレてなかったものがバレる可能性も飛躍的に高まるし、何とかスルー出来てアンソロジーの一つで出せたとしても、盗作だと分かれば出版社で回収騒ぎが起きて損害賠償問題だって発生するかも知れないんですよ?

 時間と労力使ってパクったところで「知らない人が見てちょっとチヤホヤされるだけ」という報酬でそこまでやれることが不思議で仕方ないのです。ハイリスクローリターンじゃないですか?

 自分で頑張ったって達成感もゼロですしね。

 「自分、何も一から創り出す能力ないんす、すんません」

 と宣言しちゃうようなもんじゃないですか。

 

 同人誌ではないですが、先日出版したラノベでも回収騒ぎが起きたのもありましたしね。

 別の他社作品の台詞だか文章を印象深いものとして作家がメモしていたものを、出典が別の作家だと気づかずそのままその数行を自作に引用していたって感じだったかと思います。明らかにまんまの文章で、流石これは言い訳も出来ないって感じでしたが。

 悪意があろうがなかろうが、見過ごせない過ちが判明すれば出版社は印刷していた本を回収するしかありません。そりゃ大赤字です。倍売れてくれないと元が取れません。その上回収したものはゴミとして裁断処分するしかなくなるんですよ。

 ダメ人間な私にも分かりますが、自分の手持ちの札で勝負をしないのは、大変リスキーな行為と隣り合わせなのです。

 下手すりゃ数十、数百万単位の賠償金が発生する可能性だってあります。

 周囲の身内や友人にまで被害が及ぶ可能性もあります。

 「バレなきゃいい」って言葉は「バレたらえらいことになる」と同義語だと心に刻みましょう。