タバコを吸わなくなってもう10年以上経つ私。

只今断捨離中なのにネットオークションサイトを眺めていたら、一際私の目を引き付けてどうしても購入せずにいられなくなったジッポーが有った。

それがこのハワイのダイヤモンドヘッドの柄のジッポー。

もうベッコベコのボロボロのジッポー。

凄まじくボロいジッポーだ。

まるで本物のベトナムジッポーの様なボロ加減だ。

表も裏もこれでもかとベコベコにヘコみまくっていて、かつてはピカピカだったであろうハイポリッシュクロームメッキも経年の擦れでまるでヘアライン加工された様な風貌だ。

ボトムのコンディションはそこまで悪く無かった。

ボトムのイヤーコードから1991年6月製造のジッポーと言う事が分かる。

リッドをオープンしたハワイアンジッポー。

このジッポーは長年放置されていたのだろう。

焼入れされたフリントホイールは既に真っ赤に錆付いており、セットされたまま放置されていたフリントがフリントチューブの中で固着して取り出せなかったのでフリントスプリングを取り出した注入口から長めの釘を差し込んでハンマーでブッ叩いてやり、中で腐ってこびりついていたフリントを破壊して取り出した。

そこに新しいフリントを入れてスプリング付きのスクリューを捩じ込んだ。

フリントのカスやカーボンでインサイドユニットが汚れきった状態のハワイアンジッポー。

ウイックも真っ黒に煤けているが、そのままだ。

ケースから取り出したインサイドユニット。

カムが激しく摩耗しているが、ベトナムジッポーだとこれ位の摩耗度合いの物はザラに有るし、これだけカムが擦り減っていてもリッドの開閉は全く問題無く使用出来るのがジッポーの堅牢さの証明でもある。

サイドの刻印が擦れており製造年の判別は出来なかったが、残っている刻印から判別するにインサイドユニットはケースと同一年代の当時のままの物の様だ。

インサイドユニット底部のフェルトを起こしてみたら、そこには予備のフリントが入れられており予備のフリントも風化して崩れかけていたのには閉口した。

フリントの風化具合からして、10年以上は放置されていたのでは無いだろうか?

ヒンジに取り替えられたり修理された形跡は無かった。

この外観から察する通り、それなりにヒンジが緩んでいたがまだ何とか使える程度の緩みだ。

もう暫く使用してみてから様子を見てヒンジを締めてやろうかと思う。

それにしても見れば見る程にボロいジッポーだ。

余りにもボロいその風貌に似つかわしく無いペイントの剥げかけたハワイのダイヤモンドヘッドのエッチングプリントが凄まじく渋い風合いで、買わずには居られなかった。

ボロ過ぎたからこそ欲しくなった。

ここまでボロいならばこのジッポーの最後を看取る位の気持ちで使ってやりたい。

そしてボロくて汚いこのジッポーは敢えてそのままの状態を維持しながら使いたい。

黒ずむ程に汚れたインサイドユニットの底のフェルトに空いた穴にオイル缶の注入口を差し込んでジッポーオイルを注ぎ込む。

真っ黒に煤けた何十年物の積もりきったフリントカスだらけのウイックにオイルが回った事を確認した後、赤く錆び付いたフリントホイールを親指で一回しする。

「シュボッ!」

赤く錆び付いたフリントホイールはまだ生きているのだ。

錆び付いたフリントホイールのヤスリの目はまだ生きており、新しいフリントを激しくスパークさせて真っ黒に煤けたウイックに火花を散らせて一発目で着火した。

やはりジッポーは機能する道具だ。

四の五の言わずともこのベコベコのボロボロのオイルライターは親指の一撃で何時でも火が着く。

このボロのハワイアンジッポーは登山時に携行する事にした。

登山時の飯作りの際のエスビットやガスストーブの着火に使おう。

車中泊の際のコーヒーを淹れるのに、ガスストーブに着火するのにも使いたい。

ベコベコのボロジッポーに新しい生命の火を灯して、ライターに描かれた様な常夏の風景が待ち遠しい梅雨入り前の夕刻の私でした✨。