映画「ダーティハリー・2」
原題「マグナム・フォース」。

マグナム・フォース(マグナム部隊)とは?

その意味はこの映画を観た人にしか分からないだろう。

1971年の第一作の「ダーティ・ハリー」は言わずもがな名画中の名画で有るが、こと日本に於いてはこの1973年公開の続編のダーティハリー・2の影響の方が大きいであろう。

何故ならばこの映画は全編に渡り「マグナムリボルバーの威力」を誇示する為の映画に思える程に、S&W M29 44マグナム VS コルトパイソン357マグナム。の図式で有るからだ。

但し、前作の有名な下りのハリーの名台詞の「お~っと、お前の考えは分かっている。俺が六発撃ったか、まだ五発か?」は残念ながら今作では出て来ない。

このダーティハリー・2の影響は日本では凄まじい物が有った。

当時はまだ日本のモデルガンで44マグナムは販売されていなかったらしく、形が似ているMGCの金属モデルガンの357コンバットマグナムの6インチをこぞって買い求めたとの事。

残念ながら私はこの時代の経緯はまだ知らないので、ネットで当時からのオールドガンマニアの方の記事にて知った。

そして第二作のダーティハリー・2が公開され、日本中のガンマニアがまだかまだかと44マグナムのモデルガンを熱望していた時に、MGCが本格的樹脂製リボルバーモデルガンの名作であるハイウェイ・パトロールマン41マグナムを改造して、「ヘビーデューティー・44マグナム」を発売した。
これがそのMGCのヘビーデューティー・44マグナム「後期型」。

私もMGCの初期の44マグナムのモデルガンを持ってはいるのだが、ハンマーの穴に通るスタッドが折れており、シャーシ裏側から生えているスタッドが折れてしまっては修理のしようも無いので部品取りに保存している。

MGCのヘビーデューティー・44マグナムは、それまでのハイパト41マグナムのシリンダーとバレルを変えただけでは無く、延長されたシリンダーの長さの分フォーシングコーン部も短くカットされており、カートリッジの長さも異なるとの事。

私はMGCのハイパト41マグナムを持っていないので、比較は出来ない。

私のこのMGCの44マグナム6.5インチは以前お世話になった方から頂いたボロボロの錆でガビガビになってシリンダーが固着していたジャンクの物をレストアして再生した物。

何せ頂いた時には発火した後にクリーニングもせずに40年位の間放置されていたモデルガンだったので、このモデルガンのレストアは苦行の様な物だった。

以前のオーナーの手により白い塗料を流し込まれたヘビーデューティー・44マグナムの刻印もそのまま。

傷や打痕はわざとそのまま消さずにレストアした。

前オーナーのこのモデルガンと過ごしたメモリアルを消してはならないと判断してそうした。

バレルリブが傷だらけなのは、前オーナーがこのモデルガンにピストルスコープを乗せていたらしくて、バレルリブの溝の所に直接ピストルスコープのマウントリングの爪をガッチリ挟み込んでいたからだろう。

何度も乗せたり外したりして遊んでいたのだろう。

お陰でバレルリブは傷だらけの勲章にまみれている。

ダーティハリー・2を観て44マグナムを熱望していた当時の日本のガンキッズにはこの「CAL 44 MAGNUM」の刻印にシビれまくった事だろう。

映画ダーティハリー・2の冒頭。

3分近く構えられた44マグナムのハンマーを親指で静かに起こした後、ゆっくりと画面こちらに銃口を移動しながら山田康雄の吹き替えで必殺の殺し文句が流れる。

「これが44マグナム。最高のパワーを持ったピストルで、お前さんの頭を1発でブッ飛ばせる。試してみるか?」

もうこのセリフで44マグナムの絶対的存在感を決定付けてしまったと言っても良いだろう。

私にとって、44マグナムのハンマーを起こした姿はマグナムを向けられた相手への死刑宣告の様に思える。

それは前述のこのダーティハリー・2の冒頭のシーンの迫力に幼心に恐怖さえ抱いた程に、「44マグナム」の威力を連想させるからだ。

しかしそんな私もモデルガンの44マグナムとの出会いは、このMGCのヘビーデューティー・44マグナムが初めてでは無い。

私の初めての44マグナムとの出会いは、東京マルイの作るモデルガンの44マグナム。6.5インチを親父に作って貰った物が最初の出会いだった。

そんな初めての出会いのマルイの作るモデルガンの44マグナムは、火薬を入れてパンパン音が出るだけで幼い私にはその面白さが分からなかった。

親父が私の為に丁寧に作ってくれた44マグナムは、程なくして当時の学友が持っていたマルイのオレンジ色の7mmつづみ弾を情けない威力で弾き出すコルト・ウッズマンのスポーツタイプのストライカーガンと交換してしまい、私の手元から44マグナムのモデルガンは消えて行った。

その事実を知った際、酷く親父が落胆していた記憶が有るのだが、そんな親父も「仕方が無い。やはり子供にゃ弾の出る玩具の銃じゃなきゃつまらんのだろうな。」と呟いていた記憶が有る。

そんな親父に対して申し訳無い気持ちの残る、初めての44マグナムとの出会いから30年以上経った親父になった私がお世話になった知人から頂いた44マグナムが、私にとって初めてのこのボロボロのMGCの44マグナムだった。

無論当時は既にMGCのモデルガンの44マグナムの存在はイヤと言う程に知っていたし、MGCの44マグナムのメカニズムが実銃とは似ても似つかぬオリジナルアレンジされたメカを搭載していた事も知っていた。

だから私はこのMGCの44マグナムに対して1つとしてカッコ良いイメージは持ち合わせては居なかった。

中でもこのダーティ・ハリーの44マグナムの6.5インチ銃身とサービスサイズグリップ&アダプターの組み合わせが、強烈にダサく感じでいて大キライだった。

なんで8インチにはオーバーサイズグリップが付いているのに、ハリーの44マグナムで1番人気?の筈のドル箱モデルの6.5インチモデルにはこの細身のサービスサイズグリップとアダプターの組み合わせとしたのか、発案者は頭がおかしいのでは無いのか?とすら思っていた。

後に知った話では、それまでの主流だった金属モデルガンから度重なる法規制を経て、樹脂製モデルガンに主流が変わった事は良いのだが、いざその樹脂製モデルガンを手に取った今までのガンマニアがその軽さに興醒めしてしまわない様に、少しでも重量を稼ぐ為に亜鉛ダイキャスト製のグリップアダプターとサービスサイズグリップの組み合わせとしたらしい。

事実この6.5インチモデルとサービスサイズグリップ&アダプターの組み合わせは不評だったのであろう。後発の同じMGCの44マグナム8インチでは44マグナム専用のオーバーサイズグリップは用意されておらず、オーバーサイズグリップを望むファンの為にMGCはどうしたかと言うと、前述した金属モデルガンの357コンバットマグナムのグリップに金属製スペーサーを挟み込んでこの44マグナムに装着出来る様に急場しのぎの策を考じてあるのだ。

そんな当時のMGCの苦し紛れの苦肉の策のオーバーサイズグリップを装着した8インチモデルも今では持っているのだが、大人になった今の私はあれだけ嫌いだった6.5インチ銃身にサービスサイズグリップ&アダプターの組み合わせの方がしっくり来る様に感じてしまうのは皮肉な物だ。

黒染めの褪せたグリップアダプターには「イージードロウアダプター・for 41 or 44 Rev」と刻印が入る。

きっとこの文言もタニコバ氏の発案だろう。

イチイチわざとらしい迄にアメリカっぽい文言で、こう言った演出が当時のMGCのニクい所だ。

そしてグリップアダプターの裏側にはちゃっかりMGCの正式社名のモデルガン・コーポレーションの刻印が入る。

表の文言だけ見たら実銃用かと思える位にカッコ良い刻印が入るのに、裏側にはちゃっかりモデルガン専用と分かる様に社名を入れてくるMGCの狡猾さが面白おかしい。

サイドプレートに刻まれるMGCのモノグラムにもホワイトが入れられているが、これも前オーナーの手による物。

久々にバラしてみた。

酷くデタラメのMGCの44マグナムのメカニズム。

板バネ式からコイルスプリング式に改められていて、どちらかと言えば同じS&WでもJフレームのM36に似た機構だ。

しかし昔はオリジナルアレンジと馬鹿にしていたMGCのハイパト/44マグナムの機構も、確実に機能して嫌と言う程酷使されるであろうモデルガンとしてのメカニズムとしては、大きめの採寸で作られた各パーツの強度がこれでもかと確保されていて、とても合理的なメカニズムに思える。

タニオコバ氏の天才的設計によるモデルガンだからこそ、50年以上前の製品でも今でも現存する個体が沢山有るのだろう。

これをもし実銃に忠実なサイズと機構のモデルガンで出していたならば、モデルガンに使用出来る金属パーツの強度不足で現在は殆ど消滅していた事だろう。

本来のS&Wのアドレス刻印が入っている箇所にはMGCのモデルナンバーやモデル名。それに社名や生産国表記の刻印が入っている。

よく見ればデタラメな刻印だが、極めて自然にそれっぽく刻印が入っていて違和感は感じない。

MGCのヘビーデューティー・44マグナム。

この樹脂製マグナムモデルガンがその後スクリーンやテレビドラマに与えた恩恵は計り知れない。

松田優作。寺尾聰。草刈正雄。etc。

かつて日本中で刑事達が44マグナムをブッ放してした。

現実離れし過ぎ?

そんな事はどうだって良い。

嫌なら観なきゃ良い。

「大切なのはイメージ」。

大人になった私には今でこそ分かる世界が有った。

ダーティ・ハリーの44マグナム。

例え本物がコンクリート製の電柱を1発で倒せなくても、エンジンブロックを1発で撃ち抜けなくとも、象を1発で仕留める事が出来なくても。

44マグナムは今もこれからも「最高のパワーを持ったピストル」なのだ✨。