10月の半ばを過ぎた頃、秀山荘時代のお客さんでもありテレマークスキーのグループ《ノルハイム》の仲間でもあったT澤さんからメッセージ。



新品のスキーに手持ちのビンディングを取り付けたいが、行きつけだった神田のタマキスポーツさんが廃業しちゃって『どうしたもんかなぁ』というご相談でした



ペーパーゲージがあれば作業そのものは(想像力があれば)一般のスキーショップでも可能なんだけど、金属製の《ゲージ》と呼ばれるドリルホールがあいている金型がない場合は断られるか、OKでも高額な取り付け料金を取られることも。。



T澤さんは現在退職されて新潟の山奥に移住されているし、ショップ探すのも苦労するだろうなぁ…



…ってことで『送ってくれれば工賃無しでやりますよ💕』って返信してみました


岩手と新潟の往復の送料とショップ持ち込みの工賃、どっちが高いかなぁと思いながら。



そしたら即、返信が。


頼っていただけるというのは、とても嬉しいこと。



Tさんの板をいじるのは、過去にやったことがあったとしても恐らく20年以上ぶりかな



で、数日前にスキーが届きまして、定休日の本日やっとこさ取り付け作業っ!


こちらは《ATOMIC KONTEGA》というモデル



ネット探しても、恐ろしいほどに情報がありませんww



一見するとツインチップだけどフレックスが硬めで、いかにもアトミックらしい印象



ビンディングを取り付けるときは、まずスキーの性格を知るところからスタートし、センター位置を決めます



いまのスキーは基本的にブーツセンターの位置が指定されており、テレマークの場合もブーツセンター合わせでOKとされることが増えました



但し、フリースタイルなど《飛び系》のスキーの場合は推奨のセンター位置がかなり前寄りだったりするので、テレマークの場合はフォロースキーの噛みが甘くなることがあるため自分はセットバックします



この《セットバック度合い》がどのくらいなのか、毎度の事ながらかなり考えます



今回取り付けるのは《テレブルドッグ》の3ピンタイプ



プラスチックパーツを多用してあり、経年劣化も考えてゆくゆくはG3のTARGAに載せ換えるかも、とのこと。



ホールパターンは同じなのに、トゥのネジから3ピンまでの長さが違うみたい…


上はTさんから送られてきた写真で、同じブランドのブーツをセットしているのに1cm違うとのこと



75mmノルムのブーツは昔からサイドの研磨の個体差があってビンディングの奥まで入らなかったりってこともあったから、もしかするとそれかな?とも思ったんだけど…



タルガは《40.1mm》


これに対して、届いたライトスパイクを計測すると…



しっかり50mmある



ってことは、将来的にタルガに載せ換えると1cm前に出ちゃうし、ライトスパイクの消耗具合を観察するとプラスチックパーツのヒビが散見されるので、《載せ換えするかも》ではなく《いずれ載せ換える》前提の位置にしておいた方が現実的。



ってことで、センター付近のサイドカーブの形状やフォロースキーの噛みを考え、ブーツセンターから2cmセットバックすることに決定! 



次に、スキーにプリントされているセンターマークを左右とも実測。


すると…



左右で3mmずれてるぢゃん ( ̄▽ ̄;)


全長の1/2の位置から10cm後ろがブーツセンターマークでしたが…



テールからミリ単位で計測してみると、ずれてる方はこんな感じで約3ミリの誤差がww


まぁ、コレも想定範囲内。



実はこれ、決して珍しいことではなくてマークがトップシートと一体になっている場合はこんなもんですw



刻印だったりトップシートの上にインクでプリントされている場合は割合正確なのですが…



こんなのも場数踏んでないと見逃しちゃうポイントだったりします



次にテープを貼り、ブーツセンター位置からソール長の1/2前方にラインを引きます


⬆️ ここがピンラインになります



《BC》の位置は、スキーのブーツセンターに合わせた場合のピン位置で、それを2cmセットバックしたのがラインの位置



次に、スキーのテールからラインまでの距離を実測して、もう片方のスキーにそれを移します


⬆️ 奥のスキーにも同じ位置にラインを引きます



ここまで来たらゲージをセット!


これ、秀山荘を退職するときにノルハイムから買ったゲージ



いまでも活躍してます!



で、先程のラインを合わせるのが下の写真の菱形の窓


いろんなビンディングに対応するので穴がいくつもあるんだけど、タルガやライトスパイクは一番右と一番左の穴を使います



板にドリル径指定がない場合はまずは3.5mmで開けてみて、ここでメタル屑が出てきたら4.1mmを使います



今回はメタルシートが入っていないようなので、そのまま面取り作業!


ウッドコアではなくグラス系なのかな? 白い削りカスが出てきました



これ、昔の超人気モデル《ケスレー・ツアーランドーネ》なんかだと取り付け作業やった後に指がチクチクして困ったものです



今回もできるだけ触れないように作業を進めていきます



ネジ穴に2液混合のエポキシを流し込んで強度アップと防水を図ります


ドバッと垂らすと穴の奥の方に届かないので、竹串で穴の側面に塗り込むように時間をかけて作業するのがポイント



ここまで来たら、やっとトゥピースの取り付け♪


土台に使われているプラスチックがG3等と比べると粘りがなく、ネジを締め込み過ぎるとパキッと割れてしまいそう(ってゆーか、届いた時からクラック入ってるんだよねw)



次にブーツをセットしてヒールピースの位置決め!



偶然にもTさんとボクが使っているブーツのサイズが同じだったので、今回は自分のブーツをセットして計測しドリリングしました



その後はトゥピース同様にエポキシまでの作業を行い、ヒールの取り付けになるのですが…



ここで予想通りに…


ヒールピースの土台にクラックが入ってるww



後ろも…


んー、こりゃ気を付けないと滑ってるときに割れて取れちゃうかもなぁ



これはライトスパイクの決定的な設計上のミスで、ヒールポストを立てる時にベースプレートを持ち上げて変型させ板バネのように使うので、すぐに割れてしまうんです



シンプルで軽いので、発想はいいんだけど…



せめて素材はコレじゃないのにすればよかったのにねー



実測値で27mmなので、TARGAのヒールピースを持っていればドンピシャのサイズ(ホールパターンも同じ)で流用でき、もしくは22DesignsのLynx用25mmダブルアップヒールを購入して取り付けるという作戦もアリ。



実際に北米の人たちがアップしてる写真には22Dのヒールをつけたものが多いので、もしかすると北米ではその組み合わせで売ってたのかもしれませんね



そんなこんなで完成っ \(^o^)/


このくらいしっかりしたフレックスのスキーって、しばらく乗ってないかも。



ぜひコーデュロイバーンで乗ってみたいスキー。


でも、3ピンで乗る度胸はないw



20代の頃に使ってた《Voile 3ピンケーブル》以来、ピンタイプは全く使ってないような。。



それも、ツアーでハイクするとき専用でしたw


素材を見直してリニューアルしても良さそうなものだけど、何しろ商売になるだけ売れるのかな?ってところがね。。



さて、Tさんの冬のためのお手伝いはめでたく終了です!




喜んでもらえたし自分のスキルアップにも役立って、一石二鳥っ♪



あ、そうそう、先程の22Dのダブルアップヒールはこちら
 ⬇️


ライトスパイクは爪先を突っ込んだら踵を強く踏み下ろすようにしてステップインさせるので、キャラバンのOさん曰く『踵があまり上がってるとステップインしないのかも』とのことで32mmじゃない方がいいだろう、と。



トゥの末端の高さが30mmでヒールが27mmというのは本来だとダックビルの付け根にストレスが出るのでよくないんだけど、『設計上わざとそういう仕様なのかもしれないよー』という見解でした



なるほどー、それは気づかなかったっす。



TARGAも初期はヒールドロップしてて途中からあの半透明のプレートが付くようになったから、ライトスパイクもヒールの高さ足りないぢゃんって思ってたんです(すまんのぅ)





さぁ、明日はロストアロー主催で八幡平の山麓にて最新のビーコンの講習会!



夕方、店のハイエース取りに行ったら店長が本社での会議から帰ってきておらず、明日の朝イチ通勤ラッシュタイムに店に寄ってから八幡平まで行かねば。



家からなら1時間なのに、ナビに時間入れてみると無駄に40分以上ロスする模様ww



これなら高速使う前提で出張届出しときゃよかったなー


ってことで、今夜は早めに寝なきゃです