《道の駅しょうわ》の夜は、思ったほど冷えなくて済んだが…


朝、起きてみるとジムニーは朝露でびしょ濡れになっていた



深夜も30℃を越えていたあの日々から、1ヶ月半が経つ



季節は、確実に進んでいた。




気持ちのよい青空のもと、身支度を整えてばぁちゃんの家を目指す



Yさんちのばぁちゃん、上旬に初めてお伺いした時に感じたんだけど以前どこかで会ったような雰囲気の方だった



ボクの生活パターンから考えても絶対に秋田市に住む90歳のご老人に会うことなど有り得ないわけで、ずーっと考えていた



見た目ではなく、あの話し方なんだよな…



作業中にボランティアを気遣って『お茶があるから』『暑いだろうから』と休憩を促しに来てくれる時の話し方が、身近な誰かに似ている…



んー、誰だったろう…


実りの稲穂の海の中を、ナビに任せて走る



車窓には地平近くまで美しい黄金色がひろがる


…これ、手刈りは無理だな。



ふと、数日前の《TEGARI FES》のことを思い出す



秋田が穀倉地帯になったのは、おそらくコンバイン等の機械の発達がかなり影響した面が大きいのではないだろうか



いくら土地が稲作に向いていても、この広大な土地に植えられた稲を人力で刈り取るのはタダゴトではない。



そうこうしているうちに、市街地へ


あの病院の建物の裏に、浸水被害を受けて度々報道されている《秋田聖霊高校》があり、ばぁちゃんの家は高校のグラウンドに面している



こんな街のど真ん中で【床上浸水】が起きてしまうという雨の降り方って…



もちろん、山の使い方や川の護岸の方法など、今回の水害の原因には降雨以外の要素もあると思うが、【降った雨を吸収しきれない】ことが原因で県庁所在地の街のど真ん中が床上浸水って、やはり異常事態だと言えるだろう



下の写真は前日使用したN95規格のマスク


解体系の作業をすると、たった1日でこれほどまで汚れる



剥がした床板を下に置くとき等に粉塵が舞うが、病原菌が無いとも限らないのでマスクは自己防衛のためにもキチンとしたものを使いたい



そして今回気づいたのだが、排気弁は雨で濡れると作動しづらくなる


一晩経過して乾いたので普通に作動するようになったけど、昨日は解体をしながら廃材を家の外に運んだりしていたら強めに息を吐かないと排気弁が閉じたままだった



意外と繊細なパーツみたいだ



で、現場に到着。


そうそう、思い出した!



Yさんのばぁちゃんの話し方は志村けん演じる《ひとみばあさん》にソックリなんだ!



ということで、この日も大工さんが入るまでの間、ひーちゃんが安全に過ごせるようにタンスの部屋の床をコンパネで補強する作業


『木造の建物は必ず歪みがあるんだ』と坂野先生。



コンパネの端が余って切り落とさなければならない場合、平行線を引いてカットすると合わないことが多々あるそうだ



あくまでも《現物合わせ》を優先で採寸して加工していく



『あれ? やっぱ少し合わないなー』なんてことも。
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柱や幅木の下に隠れている釘などを回避するために、コンパネの端を加工する


目の細かいノコギリや幅が細いノコギリが活躍する



そして、どかしたタンスの後ろには子どもたちの落書きの跡が…


いったいどれくらい前に描いたものだろう



兄弟の悪口なんかも書いた跡が残っていたりと、かつて確実にこの部屋に流れていた時間を感じる一瞬



さて、タンスがあった場所(右側)にもきちんとコンパネを設置!


これで足元を踏み抜いてしまう危険もなくなった



仕上げに段差になっているところに木ネジを打ち、板同士の境を養生テープでふさいで怪我をしないように加工する


大型送風機の場所は前回と少しずらした位置にセットすることにして、張ったコンパネの半分をカット



さらに、送風機の風が届きづらい方向へもサーキュレーターから伸びるダクトで風を送る


風が床下でどう回るか、建物の基礎に開けられている換気口を開放することでどう変化するか、その辺りを考えながら坂野さんがテキパキと設置をしていく



んー、なるほど。


こちらは部屋の奥から撮影



右奥の出入り口から左のタンスへの動線はコンパネで完全に塞がれ、前回に比べると送風機のための穴が半分以下になっているので転落のリスクも低くなった



何よりも、これで一般のボランティアが入っても事故の危険がない状態になったので、社協に一般ボラ案件として上げることが出来るようになったと。



…2016年の岩泉の現場のことを考えると、かなり危険なことをぶっつけ本番でたくさんやってきたんだなぁとしみじみ。



『重機がないと無理』っていうこと以外は、床下潜りまで社協ボラでもやってた(ただし経験者に限る)し、コンパネ貼るのも頼まれてやったことあったなぁ…



自治体によって《一般ボラにどこまで任せるか》がかなり異なるらしいっていうことを、今回の水害では毎回感じる。。



さて、こちらは《仏壇の部屋》


左手に出入り口があり正面左がお仏壇



前回はあちこち床板が剥がされた状態で、仏壇以外の場所は行きづらい状態だったような…



気になっていた床下、かなり乾燥が進んでいて『もう送風機は無くてもいいかもね』と桑さん。


そして、束を横方向に繋げている木について質問してみた



床下に潜っての泥だし等のときに、この横方向の木が邪魔になって前進できないって話をよく聞くので、何のための役割をしているのかと



すると、『家を作るときに束が動かないようにするためのものだから、一旦家が建ってしまえば不要』とのこと



つまり、床下案件で潜ったときに邪魔であればカットしてしまっても家の構造には何ら影響がないと。



なるほど! これはかなり重要な情報をゲット!!



もちろん、住人さんに了解してもらってからカットしないといけないけど。



さて、こちらではKahoさんがマルチツールを使ってコンパネの端を加工しているところ


先端の小さなノコギリが往復運動するツールで、壁なんかもこれで切れてしまう



⬆️
まだ練習中なので、やや危なっかしいところはご愛敬。



で、こんな感じにドンピシャに仕上げる


冬になれば屋根に雪が載るので、どうしても家に重みが加わって柱の継ぎ目などがずれている場所があったりする



木造家屋の場合、縦も横も歪みがある前提で採寸&カットして仕上げるのがポイントかも。


こちらの部屋もコンパネの浮いているところをネジで固定したら養生テープで縁を保護する


歩いてみて、板が動いたりしないかも確認。



そうこうしていたら、ひーちゃんが様子を見にやってきた


お仏壇や押し入れとの動線は確保できたから、あとは通風のための穴に落ちないようにだけ気をつけてね



そして、念のために再び床下にサーキュレーターを設置。


この部屋はダクト無しで時々方向を変えてもらえるようにしておく作戦。



そして、大工さんが入ったときにコンパネを外しやすいよう、ネジを打ったところにサインペンでマークしておくとのこと


次の人へ想いを伝える



これも、大切なボランティア精神。



外に出てみると、家の前のナナカマドの実が赤く光っていた


前回は気がつかなかったなぁ…




紅葉はいつ頃なのかな?





この日は早めに案件が終了し、メンバーのみんなと遅めの昼御飯を食べて別れた



桑さんたちは、このあと福島のいわき市の現場へ入るらしい



『いわき市、遠いよね?』って軽く誘われたけど…



なかなか財布の中身が続かないっす。。どうしても一日あたり食費が2000円では収まらないし、高速無料措置があってもガソリンは自費だし…



行きたい気持ちはあるのですが。。



いろいろ考えていたら、ただでさえ分かりづらい秋田市内の道路にまんまと捕まり、路地に迷い込む


ふと右手を見てみると…



これって…


竿燈祭りのときに歩道が崩れてるからと問題になってた場所?



4車線のうちの3車線が右折レーンで、ここを直進したらすぐ次の交差点は同じく4車線のうちの3車線が左折レーンで、これを直進しなきゃいけない



そんな難関を4周回ってたどり着いたのがここだった


この川も、護岸はかなりの高さがあるけど溢れたんだろうなぁ…



ハードだけに頼らない水害対策の必要性を、かなり感じさせられた



ハードだけでは、太刀打ちできない



もしやるなら東京のように巨大な地下プールでも作るか?



秋田市内はそれでいいとして他の場所はどうする? 原資はどこから?



そんなことを考えると、やはり『洪水は起きるもの』という前提での街作りや暮らし方というのを真剣に模索していく必要があるように思えてならない



本来、《洪水=災害》ではない



洪水が起きる場所に人が生活の拠点を構えるようになったから《災害》になる



ある程度、洪水を許容できる街作りってできないものだろうか…




考え、学ぶことが多い2日間だった


雫石ライナー下り便、無事故無検挙で無事に帰還!



ガソリン、安くなったなぁ…


もう少し落ちてくれないかな

 ⬆️ 10/9現在、154円まで落ちました



そしてコレ。


桑さんから頂いたタカラモノ。



『一応、認定試験パスということで』って



そして『これは現場に出て経験を積もうとする人のユニフォームだよ』とのお言葉を頂戴しました



字体は熊本で活動したときに出会った書家の女性に書いてもらったんだとか



初日に頂いて2日目に『あ! 着てないじゃん!!』って言われたけど、もったいなくて袖を通せなかったっすスミマセヌ。



いつか必ず、次の現場で着させていただきます!




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7/19から続いた秋田通い、この辺で一区切りつけようかと。



早めにボラセンをクローズしてしまった五城目が気になる一方で、初期のフェーズは過ぎており大工待ちのところが多いのかな、という印象



そんな中にも今回のKさんやYさんのように声を上げられなかった人が埋もれているはずなんだけど、自分が行くのはちょっと経済的にもそろそろ限界かな…



あとは同志に任せ、充電期間にしようかなと思う



通算でわずか10日間の活動



しかし、その中で多くの人と出会い、仲間となり、そしてまた多くのことを学んだ





冬が来る前に、少しでも暖かく過ごせるように戻したい



少しでも、元の生活へと。



2016年も2019年も、それだけを思って活動していた



そして、今回もまた。



今回は夏の始めの発災で時間的猶予はあったはずなんだけど、やはり季節は分け隔てなく被災地へもめぐってくる





神様、もう少し待ってくれませんか…