- 歳月〈上〉 (講談社文庫)/司馬 遼太郎
- ¥750
- Amazon.co.jp
昨日司馬遼太郎の歳月を読了。
幕末から明治維新、佐賀の乱まで一気に読んだ。
これまで「跳ぶが如く」で明治維新の頃のことは読んでいたが、
司法卿 江藤新平にかんしては佐賀出身で法律の基礎を作った人という程度の知識だった。
「峠」を読んだときに、この「歳月」が時系列的に「峠」と「跳ぶが如く」との間の作品であることから
興味がわいた。
・・・ほんとに時勢というものは人の運命をここまで変転させるものか、
というのが月並みだが最初の感想だ。
なぜなら、佐賀藩の中で江藤新平は足軽レベルの存在で
当時の藩主 鍋島直正(号は閑そう)とは話すことすらできない存在だったからだ。
そんな江藤がまさかその後参議にまで上り詰めるとは、その頃の藩の閣僚達は
想像もつかなかっただろう。
もちろん、江藤新平という人間の能力が前提にあるが、この時代でなければ身分の
壁がそれを許さない。
「歳月」は文庫では上下あるが、下の中盤からは、佐賀の乱にはいり、大久保利通により
処刑されるまでを描く。
最後は大久保利通という人間の目的のためならどんなことでも実行する冷徹さが印象に残った。
司馬遼太郎も引き合いに出しているが、戊辰戦争の幕府方の榎本武陽ですら処刑されておらず
旧法、新法どちらにもそんな法令はないことを考えると見せしめの感は否めない。
最後の瞬間、江藤新平は何を思ったのだろう。
遠い佐賀に思いをはせながら。