今週のもう一本!「コンペティション」(21年) | プロレスライター新井宏の「映画とプロレスPARTⅡ」

プロレスライター新井宏の「映画とプロレスPARTⅡ」

週刊プロレスモバイル連載「週モバロードショー~映画とプロレス~」延長戦!

スペインの大富豪が世間の目を引くために映画製作に名乗りを挙げる。といっても大富豪は資金を提供するのみで映画に興味があるわけではなく、内容には無関心、さらには名監督と名優を起用すれば傑作ができると信じているくらいだ。大富豪がほしいのは、傑作のプロデューサーという地位と名誉のみである。そこで選ばれたのは国際映画祭の常連である女性監督、ベテランの演技派俳優、そして世界的大スター(もちろん大富豪は彼らを知らない)。この企画によって初めて顔を合わせた彼らは、監督の自宅(超豪華!)でリハーサルを開始する。映画はその様子をとらえていくのだが、3人の個性がぶつかり合い、本読みの段階からリハーサルは紛糾する。入念なリハーサルがラストシーンにたどり着いて映画も終わりかと思いきや、ここから先の急展開がものすごい。それまでの細かい場面が伏線になっているのも見事。ペネロペ・クルス、アントニオ・バンデラスの2大スター、そしてオスカル・マルティネスによるアンサンブルが生み出す化学反応が見事にハマっている。オスカル・マルティネスは知らなかったが、傑作『人生スイッチ』(14年)に出ていると知り、納得。

 (C) 2021 Mediaproduccion S.L.U, Prom TV S.A.U.