今週のもう一本!「僕たちのラストステージ」(18年) | プロレスライター新井宏の「映画とプロレスPARTⅡ」

プロレスライター新井宏の「映画とプロレスPARTⅡ」

週刊プロレスモバイル連載「週モバロードショー~映画とプロレス~」延長戦!

世界三大喜劇王と呼ばれるチャーリー・チャップリン、ハロルド・ロイド、バスター・キートンは日本でも知られているが、お笑いコンビの先駆けと言われているローレル&ハーディを知っている人はどれだけ日本にいるだろう?私自身も今回の映画で初めて知った。が、『僕たちのラストステージ』は、この2人の存在を知らなくても問題なくこの世界観に入っていける。SNSがないというだけで、むしろどの時代にも通じる普遍性。それこそがこの作品にまさかの日本公開をもたらしたのではなかろうか。30年代に大スターとなったスタン・ローレル(スティーブ・クーガン)とオリバー・ハーディ(ジョン・C・ライリー)。しかし時代の推移とともに人気にも陰りが見え始める(戦中はどうだったのだろう? その部分が描かれていなかったのが惜しい)。50年代に入ると、映画撮影の資金を集めるため海外ツアーを、しかし細々と開始する。イギリスに渡った彼らを待っていたのはVIP待遇ではなく、B&B(「ベッドと朝食」を意味する安ホテル)での宿泊に、小劇場。行く先々で一般人から「引退したんじゃなかったの?」と聞かれる始末。しかしその芸風はホンモノで、徐々に公演の評判が高まっていく。“腐っても○○”というヤツである。しかしながら、長年やっているだけに考え方の違いや確執も生まれてくる。肉体的衰えも隠せない。そして決定的かと思われる亀裂が生じ、結成以来最大の危機がやってくる…。仲違いしてもショー・マスト・ゴー・オン(ショーはつづけなければならない)。コンビ解消の危機を迎えれば、オマエじゃなきゃダメなんだ。そんな腐れ縁の2人から、人間の信頼関係に時代は無関係と教えられるのだ。

 

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