今週のもう一本!「シャークネード ラスト・チェーンソー4DX」(18年) | プロレスライター新井宏の「映画とプロレスPARTⅡ」

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週刊プロレスモバイル連載「週モバロードショー~映画とプロレス~」延長戦!

スティーブン・スピルバーグ監督の出世作『ジョーズ』(75年)をきっかけに、サメが人間を襲うパニック映画が大量生産され、一大ジャンルを確立した。スピルバーグの離れたところで『ジョーズ』がシリーズ化されたばかりでなく、『シャーク!』『シャーク・トレジャー』(ともに75年)などドキュメンタリーから模倣作まで、それこそ雨後の竹の子のようにスクリーンにはサメが出没。サメばかりではなく熊や蜂、大小さまざまな動物が(映画で)人間を襲いはじめたのである。しかしながら、極論すれば現在も生き残っているのはサメだけかもしれない。ジョージ・A・ロメロ監督が定型を考案したゾンビ同様、人食いザメは絶えることなく暴れ回っている。近いところでは、『ロスト・バケーション』(16年)、『MEGザ・モンスター』が公開され人気を博した。しかも『MEGザ・モンスター』はジョーズを抜いてサメ映画史上最大のヒットを記録したとか。大作でもまだまだいけるジャンルであることを、巨大ザメが証明してみせたのだ。とはいいながらも、素材としてはB級映画が得意とするところのジャンルだろう。本来の生態を無視し、ここまで映画でいじられてきた生物はいないのではないか。サメのメカ化や、頭の数がどんどん増えたり(『トリプルヘッド・ジョーズ』=15年にはロブ・ヴァン・ダムが出演)…それこそ中二病的なアイデアには事欠かない。とはいえ、人は海に行くからサメに襲われてしまうのだ。サメが怖ければ海に入らなければいいだけではないか。と思いきや、映画でのサメはところ構わず襲ってくる! 竜巻に巻き上げられた大量のサメが宙を舞い、陸地に落下し人間を襲撃するのだから逃げ場はない。そんなアイデアを映像化したのが13年から始まった『シャークネード』シリーズだ。これはアメリカのSyfyチャンネルが放送するテレビムービーで、製作はヒット作の便乗やパクリ(オマージュとは言えない)で知られるアサイラム映画。チープなCGがB級を通り越してZ級となる作品も多数である。マジメに観たら激怒する可能性大の映画ばかり作るスタジオなのだ。しかし、『シャークネード』はこれまで全6作が作られる人気シリーズとなった。『デッドプール2』(18年)では未来からやってきたサイボーグに主人公が「オマエの時代にシャークネードは何作目になっている?」と質問するシーンがあるほど。そのくらい、永遠につづいてもおかしくないシリーズなのだ(実際、やろうと思えばネタは尽きないだろう)。だがしかし、6作目となる『シャークネード ラスト・チェーンソー4DX』(原題『THE LAST SHARKNADO:IT'S ABOUT TIME』)が最終作になるというではないか(べつにそんなに残念でもないが…)。しかも驚くことに、日本だけ劇場公開がされるという。さらにもうひとつ驚くことに、劇場が揺れ水しぶきが飛び風が吹くという特殊効果上映の4DXで! そしてトドメは、2週間限定公開の予定が1週間延長! どうかしてるよ、この国は…。というわけで、劇場でシャークネード最終作を鑑賞した。そしたらもう、全編クライマックス!のアトラクションムービーだった。アメリカから世界、そして宇宙まで飛び出したシャークネード退治は、ついにタイムトラベルにまで(しかも当たり前のように)発展する。恐竜時代、中世、西部開拓時代、現代、そして未来にまで。全作に渡りサメと闘いつづけてきた主人公は歴史上の人物に出会いながらも、そこに大した意味はない。彼の行くところ、竜巻が発生し殺人ザメが降ってくる。シリーズ中に死んだと思われた登場人物もなぜか次から次へと(これも当たり前のように)現れる。最後だからなんでもいいだろうと言わんばかりのハチャメチャさ。上映が終了した瞬間、場内には大爆笑が竜巻のように発生した、マジで。それは本編のギャグというよりも、エンドロールに対しての笑いだろう。テレビ番組で見たことはあるが(テレビムービーとはいえ)映画でこれをやってしまうとは…。劇中にかかったあるレスラーの曲を確認しようとしたが無理だった。DVDを買って観ろ、ということか。「おもしろかった~」「いままでの4DXで一番だったんじゃないかな」というのが、劇場を出ていく人たちから聞こえてきた感想。皮肉にも、これはもっとも4DXが似合う“テレビ映画”だったのかもしれない。だって最初から最後までストーリー度外視の完全アトラクション。これが最後というけれど、いまになってもったいないなあという気も。まあ、シャークネードが終わったとしても、手を変え品を変え映画のサメはサバイバルするでしょう。原題のサブタイトル『IT'S ABOUT TIME(そろそろ終わりでいいんじゃね?)』は、復活もあるかもよ、とのニュアンス含みか!

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