新作映画「運び屋」贖罪 | アーチストの歓喜

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夢と現実のはざまで


自身の監督作では『グラン・トリノ』 以来10年ぶりに俳優として出演
88歳のクリント・イーストウッドが90歳の老人を演じる
それを見るだけでも歴史の証人になれる

あの年齢であの存在感なのだから
やっぱりイーストウッドはスターなのだろう
日本なら高倉健がそうだったように
元二枚目、背の高さ、渋みの中のチャーミングさ
どれも衰えの中にも健在

実話を元にしたシンプルなストーリーは
まるでディヴッド・リンチ監督『ストレイト・ストーリー』のようだけど
違うのは、『運び屋』が何度も何度も同じ道を繰り返し走ること
まさにイーストウッドそのもので、それに退屈することもない

なにげに観てしまうのは、いつ主人公が
麻薬捜査官 (ブラッドリー・ クーパー)に捕まるのか
というサスペンスが生きているから
能天気にカントリーソングを口ずさみながら
アメリカの道を走る主人公にとって
それは茨の道などではない

彼はすでに今までの人生でそういうものを経験してきたのだ
それはイーストウッドがそうであるように
主人公はもう家族以外に何もない
過去に仕事を優先したことで、その家族とも
キョリができている
これはその贖罪の物語である

そういう意味で、まさにイーストウッド的な
「許し」についての映画でもあり
『グラン・トリノ』で自分に罰を与えた彼が
今回しっかりと罪をつぐなうことになる
そして家族は、なんとか彼を許してくれる

「学ぶことに年齢は関係ない 。年を取っても学べる。そうしながら、 人に教えることもできる。私はいつも異なるタイプの物語に興味がある。西部劇でも、現代劇でも、どんな作品でも、 私はずっと新しいもの、脳を刺激するも のを探そうとしてきたし、この作品もそうだ」

by クリント・イーストウッド

★★★★