ディア・ファミリー

心臓疾患を持つ娘の寿命はあと１０年。成人式を迎えれないことを知った娘の父親は何とか娘の病気の完治を求めて日本全国、海外まで足を延ばすが解決策が見つからない。その時、実験中の人工心臓の存在を知り、研究を進めている大学に協力を依頼するが予算不足などにより娘の寿命までに完成は見込めない。

普通ならここで「娘との思い出作り」を考えると思われるものの、この父親は諦めるという発想がなく、考えた末に出した答えが

「娘を救う為に自ら人工心臓を作る」考えを思いつく。それに対して妻は止める訳でもなく、むしろ「その手があったか」と父親

を後押し。ここで小休止。実はこの父親は医者でも無ければ、医療関係者でもないずぶの素人。

「作りたいけど素人には無理か」と思う人が大半を占めるところを全くその考えもなくずんずん進んでいく。

まず、この夫婦の発想、行動に感動を覚えた。

映画では、猪突猛進で進む父親の影響で徐々に周りも巻き込まれ完成に向けて一気に進む姿が描かれているが、本作は実話をベースにした作品。実際は資金繰りはかなり大変で途中で投げ出したり、悲嘆にくれることも一回や二回あったかと思うものの、実際はある結果まで辿り着く。

不屈の精神と言えば聞こえは良いが、実際は一言では言い表せないほどの苦労の連続で、家族間もギスギスしたかと思うものの家族一丸となって成果を出したことは驚き、感動、尊敬では言い表せない。

主役の夫婦を大泉洋と菅野美穂が安定の演技で好演。心臓疾患を持つ娘を福本莉子が良い演技を見せてくれているが、一番驚きは

川栄李奈の姉役。映画を観ながら「なんで（このキャスティング）？」と思ったものの、妹を想い、両親を支えるキャラクターを

自然に演じていました。キャスティングの妙です。

しかし、本作で描かれている医療界の闇を観て複雑な気持ちになりました。医者とは何をする仕事なんでしょうか？
父親を支える三人の医者、最後の最後に腹を括って父親の夢の実現を支援する医者。こんな人が一人でも増えればもっと良い医療界になるのではないでしょうか。

【２０２３年/日本】

【ジャンル】ドラマ