この作品を観ると日本が技術後進国になった理由がよくわかる
インターネット誕生後に日本で起こったPeer to Peer(P2P)技術を用いたファイル共有ソフトである「Winny」を巡った事件と
その裁判の顛末を描いた実話に基づいた作品。
裁判で加害者として訴えられた金子勇氏とその弁護団の目線で物語が進み、史実の通り物語は終了します。
観終わって疑問に思ったのが「なぜ開発者が逮捕されなければならなかったのか?」について明確な理由がわからなかった。
本作で金子勇氏を弁護する壇弁護士が語る「殺人に使われた包丁をつくった職人は逮捕されるのか?」の疑問に対しては、明確
な理由が本作では回収されなかったと思っている。
鑑賞後、本裁判の経緯や顛末を記載したネット公開情報や書籍を確認すると原告側である国、警察にも言い分があることがわかり、特に違和感はなかった。
裁判による結審は、2011年に下されているが、実際のところ本作の通り弁護団=正義、検察側=悪の図式だったのかは、疑問
が残る。
一方で、当時、金子勇氏が開発した技術は画期的なものであったのは史実から明確であり、いかなる理由でもその技術を守れなかった日本の限界、課題、問題が浮き彫りになったのは事実である。
本作では、金子勇氏はプログラムミングには天才的閃き、技術を持っているものの一般生活において問題を抱えるキャラクターとして描かれているが、そのような「短所もあるがそれを補う以上の長所がある」人材の活躍の場を提供できないことが、日本が
抱える大きな問題ではないか?ということが本作が訴えたかったテーマではないだろうか?
とりあえず「やってみないか?」という考えに対してブレーキを掛ける世の中であり、海外と比較していまだにスタートアップが
誕生し難い日本の構造の核心を本作では描いていると思う。
因みに本人が憑依したと絶賛されている東出昌大は難しいキャラクターを好演しているが、エンドロールに登場する生前の氏のインタビュー映像を観る限りいたって普通の人物で、本作で描かれている若干癖のある人物には到底思えず、憑依は言い過ぎのように思える。但し、本作が主演東出昌大の代表作の1本であることは紛れもない事実である。
【2023年/日本】
【ジャンル】ドラマ
【出演】東出昌大 三浦貴大 吉田羊 他
映画『Winny』|公式サイト (winny-movie.com)