日本の歪なシステムが生み出す悲劇

 

42人の殺人を犯した介護士と弁護士のお話です。

これだけ書くとオカルトやスプラッター映画のように思えますが、日本でも今起こっても何の不思議もない人間ドラマです。

 

観て心から良かったと思えるものでもなく、どちらかというと暗い気持ちになります。ただ、本作で描かれている物語は、周り起こっても不思議でない話です。

 

テーマは老人介護の実態とその闇です。訪問介護先で42人の殺人を犯した介護士は、その行為を「殺人」ではなく「救い」と言います。

なぜ救いなんででしょうか?物語が進むにつれてその真相が明らかになります。

 

人は残念ながらいつかは老います。自分一人の力で生きていくことができず、周り

の助けがないと何もできなくなります。

当然のことながらその負担は家族に加されます。

不幸にもそれは本人だけでなく周りにも重い影響を与えます。

つい数年前までは仲が良かった家族にもです。

ただ、それに対して国は助けの手を差し伸べてくれません。

 

本作は、その歪んだ日本のシステムが引き起こす悲劇のお話し、介護士は救いという

殺人を犯し、対する検事はその彼の正義(救い)に対しての判断に迷います。

 

鑑賞しても考えさせられるだけの作品かと思いますが、本作を観て日本の現状とこれからの将来を考える機会は得られるかと思います。

 

殺人はいかなる理由でも罰される行為です。但し、本作に登場する介護士の行為が

完全悪かというとその答えはまだ見つかっていません。

【2023年/日本】

 

映画『ロストケア』2023年3月24日(金)全国ロードショー (lost-care.com)