実写化とは「足すこと」ではなく「守ること」

 

1977年から1979年にかけて放送され、今なおタツノコプロを代表する作品として語り継がれる『ヤッターマン』。

その実写映画化が発表された際、多くの人が抱いた感情は期待よりも不安だったはずだ。
「なぜ今、ヤッターマンなのか」
「現代的な解釈で改変されてしまうのではないか」
「子供向けを装った大人向け作品になるのではないか」。

だが、2009年に公開された実写版『ヤッターマン』は、そうした懸念を真正面から覆す一本となった。

本作の最大の成功要因は明確だ。
作り手が“余計なことをしなかった”ことである。

原作の世界観、キャラクター造形、善悪の構図、そして「バカバカしさ」を全力で肯定する姿勢。
製作者側の解釈や再構築で作品を“賢く”しようとせず、あくまでアニメ版の精神を実写で再現することに徹している。

その姿勢は、キャスティングに最も顕著に表れている。

ヤッターマン1号・2号を演じたのは、嵐の櫻井翔と福田沙紀。
アイドル主演という点だけを切り取れば拒否反応を示す層がいても不思議ではない。

しかし、彼らは決して作品を私物化せず、あくまで“ヤッターマン”として振る舞うことに徹している。
主役が前に出過ぎないという判断は、本作において極めて重要だった。

そして、本作の評価を決定づけたのは、間違いなくドロンボー一味である。

ドロンジョを演じた深田恭子は、単なる「色気のある悪役」ではなく、アニメ版が持っていた“愛嬌と品のなさ”を絶妙なバランスで体現した。

さらに特筆すべきは、ボヤッキー役・生瀬勝久、トンズラー役・ケンドーコバヤシ。

この二人に関しては、再現度という言葉では足りない。
声、間、動き、存在感、すべてがアニメから抜け出してきたかのようで、本作を「実写化成功例」と断言できる最大の理由となっている。

セット、美術、メカ描写も2009年当時の最新CG技術を駆使しながら、あくまで「作り物感」を消さない。
リアルに寄せすぎない判断が、結果として作品世界の説得力を高めている。

さらに、音楽・効果音・声優陣にオリジナル版のスタッフを起用し、主題歌を嵐が担当するという布陣は、
原作ファンと新規層の両取りを見事に成功させた。

アイドル主演の実写化作品は、原作の魅力を損なう例も少なくない。
だが本作は、「アイドルが出演したから成功した」のではなく、「原作を尊重した結果、アイドル起用も機能した」作品だ。

春休み興行で1位を獲得したのは、話題性だけではない。
観た人が「ちゃんとヤッターマンだった」と納得できたからこその結果である。

実写化とは、新しく作り替えることではない。
守るべきものを正確に理解し、それを別の表現形式に移し替えることだ。

2009年版『ヤッターマン』は、その教科書のような一本であり、タツノコプロ作品の実写化史においても
確かな成功例として記憶されるべき作品である。

 

【2009年/日本】

【ジャンル】コメディ

【監督】三池崇史

【出演者】櫻井翔 福田沙紀 深田恭子 生瀬勝久 ケンドーコバヤシ 阿部サダヲ 他

【上映時間】1時間51分

【お勧め度(5点満点)】☆☆☆