静かな労働者(ワーキングマン)を怒らせてはいけない

 

主人公レヴォンは、かつてイギリス海兵隊特殊部隊に所属していた男。
現在はその過去を伏せ、シカゴの建設現場で汗を流す“ただの労働者”として生きている。

無口だが誠実。
現場では信頼され、建築会社を営む家族からも厚い信頼を寄せられている。
一方で、私生活は決して順風満帆ではない。
娘とは離れて暮らし、義父との関係も冷え切っている。

そんな彼の日常は、ある事件をきっかけに崩れ去る。
建築会社の娘が何者かに誘拐されたのだ。
警察は頼りにならず、時間だけが過ぎていく中、家族が最後に助けを求めたのがレヴォンだった。

「もう争いには関わらない」
そう決めていた男が、自分を慕う“家族同然の存在”を救うため、
再び戦場へと足を踏み入れる。

本作は設定だけを見れば、サスペンスやクライムドラマとしても成立する物語だ。
だが製作陣が選んだのは、一切の迷いのない“直球のアクション映画”という道だった。

主演はジェイソン・ステイサム。
脚本にはシルヴェスター・スタローンが名を連ねる。
この組み合わせを見た時点で、観客が期待する方向性はほぼ一択だろう。

実際、本作は理屈よりも勢いを優先する。
銃弾はなぜか主人公を避け、これだけの死者が出ても警察もマスコミも機能しない。
人身売買という重い題材を扱いながらも、社会的リアリズムを追求する気配はない。

だが、それでいい。
いや、それこそが本作の正解だ。

『ワーキングマン』は、「なぜ?」と考える映画ではなく、「来た来た、それでいい」と身を委ねる映画である。

80年代、スタローンやシュワルツェネッガーが一人で数百人を相手にしても誰も疑問を抱かなかった時代があった。
ジェイソン・ステイサムは、あの時代の“誇張された肉体神話”とは異なる。
彼は決して超人的なマッチョではない。
だが、動きに無駄がなく、銃器・格闘・環境利用を組み合わせたアクションに現実的な説得力と独特のしなやかさがある。

だからこそ、彼が一人で敵陣に踏み込んでも不思議と納得できる。
これは肉体の大きさではなく、“経験と覚悟を背負った男”としての存在感の勝利だ。

また、タイトル通り本作が描くのは、「働く男(ワーキングマン)」の物語でもある。
誰かを守るために拳を振るうこと、責任を引き受けること、逃げずに立ち向かうこと。

それらはすべて、彼が元軍人だからではなく、“誠実に働いてきた男”だからこそ選び取る行動として描かれる。

ラストは、明らかに続編を意識した幕引きだ。
物語としては一区切りつきながらも、この男の戦いはまだ終わっていないことを匂わせる。

もしシリーズ化されるなら、それは歓迎すべきことだろう。

『ワーキングマン』は、アクション映画が持つ原初的な快楽、「悪を殴り倒す爽快感」を一切の照れなく、全力で提示してくれる一本だ。

怒らせると怖い男は数多くいる。
だが、“普段は誰よりも真面目に働いている男”が怒った時ほど、手に負えない存在はない。

本作は、その事実を拳と銃声で、これでもかと証明してみせる。

 

 

【2025年/アメリカ イギリス】

【ジャンル】アクション

【監督】デヴィッド・エアー

【出演者】ジェイソン・ステイサム ジェイソン・フレミング マイケル・ペーニャ 他

【上映時間】1時間56分

【お勧め度(5点満点)】

 

 

【ワーキングマン 予告編】

 

【ワーキングマン 公式サイト】