TBSラジオで正月スペシャルとして「お宝音源」の番組がいくつかあった。
まず「鴻上尚史の耳で聞く戦後史」TBSラジオ1月1日の深夜25時から28時まで。誰も聞いていないよな。俺は、mp3で予約録音できるようにセットアップしてあるので今日やっと全部聞いた。これが、凄く面白い。
ゲスト:姜尚中、森達也
姜尚中がいい声なんだ。磯山さやかというグラビア・アイドルも声が良くしかも頭がいい。森達也は木訥で生真面目な地方出身者のいい感じの野暮ったさ。玉音放送から始まるのがいかにも、だったが、一時間過ぎてから娯楽番組になる。
26時台は「フォーク」で語るその時代、という感じで、好き勝手な「フォーク・ソング」をかけて話すという趣向。聞いたことのない昔のいわゆる「フォーク」が凄く面白かった。こてこてのフォークは、メッセージ性の強い「言葉」に命を込めた音楽だ。
高田渡「系図」。脳天気な三拍子のmajor。ギターの弾き語りだが、思い切りダサイ。アコーディオンやフィドルが入って、カントリー調なのだが音楽としてはどうにも恥ずかしい。
- 高田渡
- 系図
歌詞は以下の通り。
ボクがこの世にやってきた夜、おふくろはめちゃくちゃに嬉しがり、親父はうろたえて質屋に走り、それから酒屋をたたき起こした。
その酒を飲み終わるやいなや、親父は一生懸命、ねじりはちまき、死ぬほど働いて、死ぬほど働いて、その通りくたばった。
くたばってからというもの、今度はおふくろが一生懸命、後家の歯ぎしり、後家の歯ぎしり、頑張ってボクはご覧の通り。
丙午(ひのえうま)のおふくろは、おふくろはことし60歳。親父を参らせた昔の美少女は、凄く太って元気がいいな。
実はせんだってボクにも娘が出来た。女房はめちゃくちゃに嬉しがり、ボクはうろたえて質屋へ走り、それから酒屋をたたき起こしたのだ。
ボクがこの世にやってきた夜、おふくろはめちゃくちゃに嬉しがり、親父はうろたえて質屋に走り、それから酒屋をたたき起こした。
高田渡「系図」
団塊世代の幸福感を表しているが、高田渡はこの通りとにかく酒、酒で、56歳で昨年亡くなった。酒で死んだのだ。風貌は80歳の老人のようだ。酒屋に走るのはもはや無効な価値観だ。この人が団塊世代のカリスマだった。
友部正人。「大阪へやってきた」
- 友部正人
- 大阪へやってきた
これも驚いた。団塊世代、フォーク世代には常識なのかも知れないが、インパクトのある音楽だ。ギターをガンガンかき鳴らし、ハーモニカの呼吸、たたきつけるような歌詞。凄いなあ!!
「イカ天バンド」時代に「たま」というバンドがあった。そのなかの山下清みたいな石川の音楽に影響を与えているなあ!ハーモニカとギター。強烈な歌詞、メッセージ。
いま、押尾コータローの影響でアコギが空前のブームだそうだ。ただし、この「フォーク」の時代とは違い「言葉」があまりに空虚だ。それがフォークとは違う、
高田渡の「あきらめ節」。またしても脳天気なmajorの曲がついている。歌詞は「社会風刺」「問題提起」「シニカルな韜晦」。独特の古くさい語り口。節回し。
イッセー尾方に「フォーク歌手」というネタがあるが、この高田渡をモデルにしているのだろう。初めてわかった。
「ぶらぶら節」。ギターの腕前は相当のものだったらしい。この曲にはその様子がうかがわれる。20歳の頃の録音を聞いたが、歌詞の厭世観、老成感はただごとではない。今聞くと、今の時代を歌っているとしか思えない。不景気、失業者、暮らし向きの苦労。。。そんなことを歌っているのだが。
今年こそは本当に うんと働くぞ そしてああしてこうもする
ウソの行き止まりの大晦日
なったなったなったなった
大晦日が正月になってま~たおめでたくブ~ラブラ
高田渡「ぶらぶら節」
そんなことを歌う歌手は今いないね。すべてが「売れる」「売れない」で量られて、メッセージを含む音楽も少ない。ましてや、現実世界の厭世、悲哀を歌える歌手がいない。本当はその言葉、音楽を求めている人は山ほどいるだろうに。商売にならない言葉は価値がない。そんな、狂った思想に押し込められているのだな。
そんなことを、古くさくてどうしようもなくダサイ「フォーク・ソング」を聞いて考えた。