幼稚園の子供が、上のお姉ちゃんやお兄ちゃんの影響を受けて「うち」と言うのを聞くとぎょっとします。あと20年したらそれが普通になるのかもね。どうせ俺には関係ない。言葉使いで、家庭の知性環境まではっきり階層分化してくるのだ。ただそれだけ。

関東圏ではこの10年ぐらいのあいだに、自分のことを「うち」と呼ぶ子供が増えた。高校生は使っている。小学生も使う。5歳ぐらいの幼稚園の子供も使っている。男も女も使うが、俺の取材対象はどうも女に偏っているようなので、女子がより多く使うような気がする。まったく正確な情報ではない。感じるだけだ。

「うち」を使う20代男もいそうだ。頭が悪そうな言葉使いだ。自分をさして「自分」という男も多い。「私」という大人言葉が使えない。30代のサラリーマンでも使っている奴がいる。それを聞くと俺は、何故かそいつの上官になって、気をつけ!敬礼!と言って、殴りつけたくなる。帝国軍人の呪われた血が騒ぐのだと思う。

「うちら」という言い方は、20年ぐらい前から、汚らしい「コギャル」「チーマー」「ヤマンバ」など、学校に通っているというだけの、プロの売春婦やヤクザ、チンピラどもが使っていた。バンド関係や、スポーツ関係でも「うちらのバンド」「うちらのチーム」という感じで使う。

それが、子供たちが「うちら」を使っているな、と思ったら、自分のことを「うち」と言い出した。自然な流れではある。違和感あるな。

関西弁の女性の一人称が「うち」ですよね?詳しくないので、テレビでなんとなくそうかな、と思う程度ですが。それも、年配の人が使う感じ。商人の家で使う感じ?「あて」なんていう言い方も思い出した。浪速千栄子とか、思い切り古い大阪の俳優さんの映画で「あてかて、なんたらかんたら・・・」なんて愚痴の場面で使っていた。

昔は、矢沢永吉、宇崎竜童などが「オレら」と言う感じで使っていたような気もする。なんの根拠もなく印象です。たけしの「おいらなんかよ~」も「オレらなんか」から来ているような気がする。

大人言葉の使い方で「うちの会社」「うちの上司」「うちの業界」などと、限られた場面で「うち」を使う。「私の会社」「私の上司」「私の業界」を、曖昧に指し示す感じかな?「当方」というような言い方にも当たる。「私達の」という意味を含ませているね。

家を表す「うちの車」「うちの犬」「うちのお母さん」もある。「うち」=「家族の」とか「家庭」を表す感じと、「うちに置いてきた」「うちにある」などの、家自体の場所を指し示す場合もある。

一番変化しやすい日常語かも知れない。関西語の広がりの一例と言えるのかも知れない。「わたし」という三つの音より「うち」のほうが短くて言いやすい。言葉は、少なく言う方に流れていく。誰にも止めることは出来ない。嫌いな語を死ぬまで使わない、という人が死に絶えたとき、言葉は完全に定着する。

俺が死んだら、勝手に使ってくれ。

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