不気味なカウボウイが去ると、不安げなアダム・ケシャーの顔が残る。

HOLLYWOODのサイン。山の上に中継アンテナが林立している。

「いたの?」ピンクのバス・ローブで真剣な面持ちのベティ。「戻った。それが望みだろ?」赤いガウンのリタ。深刻な会話のようだ。憎らしそうな顔のベティが「出てってよ」と叫ぶ。この二人は喧嘩を始めたのだろうか?リタの手元には、レジュメが。昨夜ココが持ってきてくれたオーディションの台詞の練習をしているのだ。

しばらく会話が進む。父親の親友と関係を持つ女の痴話喧嘩のようだ。逮捕される、とか殺すとか、物騒な話をしている。興奮気味のベティ。リタは、男役の台詞だが、紙片を見ながら読んでいる。ぎこちないしゃべり方だ。なぜか、before という言葉を言いにくそうにひっかかる。最後まで読み合わせて、吹き出す二人。

「ここでこう叫ぶのよね。『大嫌い。あんたも私自身も』」。食事用のナイフを振りかざし、全身で叫ぶベティ。迫真の演技だ。二度目に見ると、痛ましい台詞だ。監督はこの台詞を印象づけたいと思っている。

練習を終えて楽しげな二人。リタとベティの場面は常に官能に満ちている。劇中劇は微妙な虚実の境を行き来する。

大家のココが現れる。ハリウッドのベテラン女優アン・ミラー。派手なドレスに身を包み、玄関の網戸越しに現れる。紗のかかった映像は、不思議な雰囲気を醸し出す。
    ann4
ココは、リタを見つけて、誰なの?と聞く。ベティを呼び出し「トラブルに巻き込まれないでね」とやさしく諭すココ。大女優の貫禄を見せる場面だ。鼻梁が細くすっと高い特徴ある美貌。どんなゴージャスなドレスでも着こなす華やかさ。シュールなほど昔ながらの「ハリウッド」の香りを放っている。

    ann2

   

(この項まだまだ続く)

(お疲れさまと思ったらクリックお願いします。)