ミッドサマー | <ムービーナビ> by映画コーディネーター・門倉カド

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雰囲気と展開の驚異のギャップ。ゾッとする静寂とカオス。

2020年2月21日公開
監督:アリ・アスター
出演:フローレンス・ピュー
ジャック・レイナー 他

【賛否両論チェック】
賛:作品の心温まるような静かで明るい描写と、ストーリーの不気味さのギャップがとにかく恐ろしい。ラストのカオスは本質的な恐怖をかき立てられる。
否:その雰囲気に反し、過激なラブシーンやグロテスクなシーンが多いので、苦手な人は観られない。物語の趣旨や主張もよく分からず、消化不良感も残る。


ラブシーン・・・過激なシーンがあり
グロシーン・・・かなりあり
アクションシーン・・・なし
怖シーン・・・雰囲気はかなり怖いかも


 家族を失ったヒロインが、恋人達と共にスウェーデンの村で開催される祝祭を訪れ、そこで巻き起こる事件を描きます。主演はフローレンス・ピュー。

 深夜、離れて暮らす両親へ電話をかけるヒロイン・ダニー(フローレンス・ピュー)。しかし両親は電話に出ず、不安を隠せません。原因は双極性障がいを患う妹・テリーからの、
「もう耐えられない。パパとママも一緒に行く。さようなら。」
という意味深なメールでした。その後もテリーとは連絡がつかず、いてもたってもいられなくなったダニーは、恋人のクリスチャン(ジャック・レイナー)へ電話をするのでした。

 その時クリスチャンは、悪友のマーク(ウィル・ポールター)やジョシュ(ウィリアム・ジャクソン・ハーパー)達と、地元のバーにいました。精神的に不安定なことが多いダニーに、いつも振り回されているクリスチャン。そんな彼を見かねたマーク達は、ダニーと別れるよう説得しますが、そこへ再びダニーから電話が。しかし今度の彼女は、半狂乱状態になっていました。実はこの時、テリーが両親を道連れにしてガス自殺をしたと、ダニーの下へ連絡が来ていたのでした。

 それからしばらく経ったある時、大学で民俗学を研究しているクリスチャン達は、ジョシュの夏至祭に関する論文の取材も兼ねて、ペレ(ウィルヘルム・ブロングレン)の故郷であるスウェーデン・ヘルスランド地方へ旅行に行くことになります。実はその地方の山奥にあるペレの村では、90年に1度行われるという祝祭が、まさに今年行われるということでした。ダニーは旅行に行くことを迷っており、マーク達も複雑な心境を隠せませんでしたが、結局クリスチャンはダニーを連れ、一緒にスウェーデンへと旅立ちます。しかしそれが思いもよらない悲劇の幕開けになろうとは、この時はまだ誰一人として想像してはいませんでした・・・。

 意外に思われそうですが、レーティングはR-15指定で、かなり過激なラブシーンやグロシーンがありますので要注意です。

 それもそのはず、この作品の大きな特徴であり、その恐怖の根源ともなっているのが、作品から受ける雰囲気と実際の展開とのギャップです。豊かな自然の中、彩り鮮やかな緑と穏やかな人々に囲まれた、静かなスウェーデンの山奥の村。本来であれば心安らぐはずのそんな空気の中で、ダニー達が祝祭について知っていくうち、次第にその静寂が安らぎではなく、不気味さへと変わっていくのが印象的です。そしてその不安に呼応するかのように、後半で一気に畳みかけられるカオスな世界には、観ていて思わずついていけなくなるというか、ただただゾッとさせられてしまいます。

 ただ逆に言ってしまうと、そのギャップからの恐怖が故に、物語の伝えたいこともよく分からないまま、何となく観終わってしまう感も否めません。また、
「これは・・・こういうことだったのかな?」
と自分で類推しなければいけない部分も多く、消化不良感も残ります。

 作品の雰囲気からは想像しづらいですが、どちらかというと、ホラー映画やスプラッター映画好きな方向けの作品といえるかも知れませんね。


【ワンチャン・ポイント】
※ウィル・ポールター・・・本作では、クリスチャンの悪友・マーク役。最近の映画では、レオナルド・ディカプリオ主演の「レヴェナント 蘇えりし者」や、1967年に実際に起きた暴動を描いた「デトロイト」、そして「メイズ・ランナー」シリーズ等、有名な作品に多数出演されています。


オススメジャンル&オススメ度・・・<ハラハラしたい>

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