フォードvsフェラーリ

あらすじ/解説
マット・デイモンとクリスチャン・ベールが初共演でダブル主演を務め、1966年のル・マン24時間耐久レースで絶対王者フェラーリに挑んだフォードの男たちを描いたドラマ。ル・マンでの勝利を目指すフォード・モーター社から依頼を受けた、元レーサーのカーデザイナー、キャロル・シェルビーは、常勝チームのフェラーリ社に勝つため、フェラーリを超える新しい車の開発と優秀なドライバーの獲得を必要としていた。シェルビーは、破天荒なイギリス人レーサーのケン・マイルズに目をつけ、一部上層部からの反発を受けながらもマイルズをチームに引き入れる。限られた資金と時間の中、シェルビーとマイルズは力を合わせて数々の困難を乗り越えていくが……。シェルビーをデイモン、マイルズをベールがそれぞれ演じる。監督は「LOGAN ローガン」「ウォーク・ザ・ライン 君につづく道」のジェームズ・マンゴールド。



★5.0/5



映画館初めのフォードvsフェラーリは最高過ぎてオーバーフロウ寸前!



連勝のフェラーリにフォードがルマンで勝つって流れの、よくあるジャイアントキリング映画かと思いきや、下町ロケットっぽい職業映画の要素があり、リアルスティールのようなファミリー映画の要素があり、ただのレース映画では収まりきらない力強さと魅力が溢れた2時間30分はあっという間だった。

主役を張るクリスチャンベールとマッドデイモンは安定の演技力で納得のハマり役。ケンマイルズを演じたクリスチャンベールは本人と見分けがつかないくらいの激似っぷりで、もう人間なら誰でも似せれる域に達してるではないか。


登場人物の中ではフォードの社長ヘンリー2世のどこか抜けている馬鹿っぽさに笑わせられたり、社長らしい冷酷さがムカついたりと、劇中では機能的な役目を果たしているのが良かった。中でも、シェルビーに説得させられる下りは盛られてる演出とは言え声を出して笑ってしまう程面白かった。 



レースの最中にヘリでディナーに出掛けてレースの終盤に戻ってきて口出しするヘンリーと、最初から最後までレースを見守るエンツォフェラーリ、どちらの元で働きたいかと問われたら間違いなくエンツォフェラーリだよな〜。



企業のイメージアップの為なら命を懸けるレーサーのプライドも平気で潰し、ルマンの伝統でさえも関係ないと泥を塗る。劇中のフォード社の描かれ方はひたすら胸糞。それだからプロの誇りを懸けて権力に立ち向かうシェルビーとケンの姿には思わず共感してしまうわけだが、現フォードの社長はどう観たのか気になる。


そしてCGに頼らない撮影を選んだレースシーンは迫力があり、ここだけでも劇場で観る価値は十分にあるだろう。特に今作のメインディッシュであるルマン24時間耐久レースでは気がついたら前の座席を握って観ていたほどの没入度。7000回転とか専門用語に疎いモータースポーツにわかファンの僕にも理解出来るように絵で伝えてくれる親切設計は映画的で好感をもてる。



ストーリーの主軸はVSフェラーリというよりもシェルビー&ケンVSフォードな構成で、フェラーリ要素に少しばかりの物足りなさを感じるけど、そこは拘り抜かれたグッドミュージックと様々な形の人間ドラマとレースに懸ける情熱で十分補えていたように思う。


今年始まってまだ全然経たないけど、フォードvsフェラーリは2020年のベスト3にランクインさせたいくらい自分には最高にどストライク映画だった。ルマン24時間耐久レースまた地上波で放送してはくれないだろうか。