ジョーカー

あらすじ/解説
「バットマン」の悪役として広く知られるジョーカーの誕生秘話を、ホアキン・フェニックス主演&トッド・フィリップス監督で映画化。道化師のメイクを施し、恐るべき狂気で人々を恐怖に陥れる悪のカリスマが、いかにして誕生したのか。原作のDCコミックスにはない映画オリジナルのストーリーで描く。「どんな時でも笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸に、大都会で大道芸人として生きるアーサー。しかし、コメディアンとして世界に笑顔を届けようとしていたはずのひとりの男は、やがて狂気あふれる悪へと変貌していく。これまでジャック・ニコルソン、ヒース・レジャー、ジャレット・レトが演じてきたジョーカーを、「ザ・マスター」のホアキン・フェニックスが新たに演じ、名優ロバート・デ・ニーロが共演。「ハングオーバー!」シリーズなどコメディ作品で手腕を発揮してきたトッド・フィリップスがメガホンをとった。第79回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品され、DCコミックスの映画化作品としては史上初めて、最高賞の金獅子賞を受賞した。


★4.0/5


あの悪名高き、神出鬼没なジョーカーの誕生秘話は、意外と丁寧で真面目な作りの正統派な映画だった。




真実と虚構を交えた最後まで先読みできないストーリーテリングに見事に騙される。ストーリーの邪魔にならないように必要最低限に抑えられたバイオレンス描写は静寂と喧騒の対比効果もあってインパクトと緊張感がありゾクゾクさせられる。なかでも地下鉄で追われる証券マンと追うジョーカーを横スクロール風に撮ったカットは1番印象的だった。


不安を煽るようなストリングスは良い意味で気味悪さがあり、そうかと思えばクリームやゲイリーグリッターの名曲達で格好良くキメてきたりと、音楽を担当したヒルドゥルドナドッティルが良い仕事をしている。名前が覚え難いけど今後の為に覚えておいて損はないはずだ。


そしてホアキンフェニックスの怪演。アカデミー賞主演男優賞も夢ではないと言われてるだけあってキャラの作り込みが半端ない。そんなんだからか、所々ホアキンフェニックスのPVみたいになっているのが気になる。



あのキモい身体、高笑いからの急に真面目な表情の落差のヤバさ、キマッてない奇怪なダンスはアドリブだったのかぁ〜、走り方なんて絶妙にダサくて『万引き家族』のリリーフランキーじゃん。って少し笑ってしまった笑。喜怒哀楽を笑って表現しちゃう表現力の引き出しの多さと細かさ。ホアキンフェニックスの演技目当てで今作を観ても元が取れるくらい衝撃的で良かった。



ロバートデニーロは『キングオブコメディ』のその後を彷彿とさせる。素人の何も実績のないアーサーをオファーした事を考えると、喰い者にしてやろう感はあるんだろうけど、きっと悪い人ではないように思う。でもジョーカーにぶっ殺された時はそこに行き着く過程のテンションに乗せられた事もあり、カタルシスを感じざるをえないし、これって自分も反乱分子だよなぁ〜なんて知らぬ間にアーサーやデモ隊に感情移入してしまってた気がする。


そんな事もあってか、ジョーカーを上映するのはあまりにも危険だろ!って訴える人がいたり、逆に今の社会問題とリンクした内容は現代社会に必要な映画だ!なんて訴える人がいたりして、ちょっとしたムーブメントが起こってるんですよね。こういうやり取りを見ると、たかが映画、されど映画だよなぁ〜って、あの悪名高きヒトラーも映画を使って民衆を集団洗脳してた事実が脳裏を過ぎる。今やネットやSNSが身近になってるから意図もたやすく情報操作なんて出来ちゃうんだろうなぁ〜。



あとアーサーって本当にコメディアンになりたかったのか?って思う。突発的な発作で笑ってしまう疾患を隠す為に、止むを得ず笑われても、笑っても世間とズレの少ないコメディアンを選ぶしかなかったのかも。まだ当時は精神疾患を患ってる人への理解がまだ浸透してなかったって時代背景の事を考えて尚更そう思ってしまったり。悲しいなぁ〜。



狂ってるのはアーサー?自分達?社会?


今日も社会に揉まれて、泥水飲んで、生きてます。33歳。魔球です。