恐怖の報酬 オリジナル完全版

恐怖の報酬 オリジナル完全版


あらすじ／解説
「フレンチ・コネクション」「エクソシスト」で知られるウィリアム・フリードキン監督が1977年に手がけたサスペンス大作で、ジョルジュ・アルノー原作＆アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督による同名フランス映画をリメイク。南米のジャングルを舞台に、反政府ゲリラによって爆破された油田の火災を鎮火させるため、1万ドルの報酬と引き換えに、危険なニトログリセリン運搬を引き受けた4人の男たちの命運を描いた。ユニバーサルとパラマウントという2大メジャースタジオが共同出資し、3大陸5カ国でのロケを敢行するなど、完成までに2年の歳月と2000万ドル（現在の100億円相当）という当時として破格の製作費が投じられた。しかし、77年の全米公開時「スター・ウォーズ」が一大旋風を巻き起こした影響で興行的に大失敗し、78年に公開された日本をはじめとする北米以外の国では、監督に無断で大幅にカットされた92分の短縮版が上映された。その後も長らく権利関係などで上映もDVD発売もされていなかったが、2013年にフリードキン監督の手により121分のオリジナル版の4Kデジタル修復が行われ、同年のベネチア国際映画祭でプレミア上映された。日本でも18年11月「オリジナル完全版」として劇場公開され、121分の本来のバージョンが初めて日本で日の目を見る。


★4.3／5点


無理難題の連続に観てるこちらも疲れるほどの没入感と勢いがある映画。ミッションがインポッシブルし過ぎてイーサンハントもお手上げ状態な事間違いないだろう。



監督はウィリアム・フリードキン。代表作は間違いなく『フレンチコネクション』と『エクソシスト』だがデルトロとジョーンズ星人が危機迫るリアルナイフアクションを魅せる『ハンテッド』も推しておきたい。

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人口密集地での爆弾テロにビビる。木っ端微塵に吹き飛ぶ建物と周囲の人、爆破の威力にブレるカメラ。冒頭から火薬の量を間違えた事故か？疑っしまうほどに気合いの入ったこのシーンは、この映画への狂気染みた意気込みを感じる。

4人の食い詰めたアウトサイダーが現地に集まってからの紹介や説明がある序盤こそローギアな展開で眠気を誘わなくもないが、そこを過ぎてからの、トップギアへの覚醒っぷりが凄い。

まずオンボロトラックをレストアするという意表を突いたシーンに興奮。ネジ回しーの、ギア磨きーの、エンジン調整からーの、ライトアップ！という時代を感じる演出、少しの衝撃で爆発してしまうニトログリセリンを謎の装置を使って男達が汗だくになりながら慎重に荷台に運ぶシーンなど＂支度映画＂としてのレベルも高い。


いよいよニトログリセリンを積んで300キロ先の町まで運搬するミッションが始まるわけだが、これが地獄のデスロードってやつでした。

少しの衝撃でも爆発する代物を積んでるってのに、雨嵐の吹き荒ぶ道無き道を走破していくオンボロトラックと、追い詰められた男4人。事が始まってから必要最小限まで削がれたタフなセリフに、ついつい熱が入っしまう。

なかでも、この映画のジャケにもなってる吊り橋のシーンの緊張感！


乗用車でも壊れてしまいそうな吊り橋を、大雨強風という最悪の環境でトラックを走らせるシーンは息を呑んで吐くのを忘れるほどの鬼気迫る臨場感があって観ていて疲れる。もう、これVRでした。

この吊り橋の撮影時に何度もトラックが吊り橋から川に落ちて流されたという裏話があるだけに、役者の表情もたぶんマジだったんじゃないですかね。冒頭の爆破テロにしろ、油田の爆破にしろ、吊り橋にしろ、実写ならではのCGでは出せない危なさが滲み出ていて、どのシーンも迫力があります。


サントラを担当した、タンジェリンドリームのスコアは作品の恐怖を増幅させていて良い意味で気味が悪く印象に残る。このせいで劇場から帰る時の車の運転はニトログリセリンも積んでないのに無駄に安全運転で帰りましたよw

安堵からの終わりの始まり的なラストは、この映画がアメリカンニューシネマ真っ只中に作られた40年前の映画だったという事を改めて思い出すし、当時は不評だった今作を40年振りに蘇らせた監督やスタッフの熱意とセンスと行動力に頭が下がるばかりです。

僕にとってフリードキン＝『エクソシスト』だったけど、この映画を観た後だとフリードキン＝『恐怖の報酬』になったのは言うまでもない。

んー！傑作！