ロレッタ・ラックス(Loretta Lux, 1961年 - )は、幼い子どもたちを被写体としたシュールで幻想的なポートレート写真で国際的に知られる芸術写真家です。
旧東ドイツのドレスデンに生まれ、現在はアイルランドを拠点に活動しています。彼女は1990年代にミュンヘンの視覚芸術アカデミーを卒業し、絵画を学んでいましたが、写真へと表現の軸を移しました。本格的に写真制作を始めたのは1999年からで、その作品は瞬く間にヨーロッパやアメリカを中心に高い評価を獲得します。
特に、2004年にニューヨーク市のヨッシ・ミロ・ギャラリーで開かれた初の個展は、彼女のキャリアにおける大きなデビューとなりました。
Loretta Lux
ラックスの作品の最大の特徴は、古典的な絵画のような雰囲気と、現代的な写真技術を融合させた点にあります。彼女は、子どもたちを撮影した後、その画像をデジタルで入念に加工します。肌や背景の色調を調整し、現実にはありえないような夢幻的で不気味なほどの作りこまれた美しさと、不思議な奥行きを持つ世界を創造します。この独特な技法により、被写体の子どもたちは、単なるポートレートの枠を超え、神話的な存在、あるいは時代を超越した異世界の住人のように見えます。
作品は主にイルフォクロームプリント(ILFOCHROME)という鮮やかで深みのある発色が特徴の技法で制作されており、その精巧な仕上がりは、見る者に強い印象を与えます。
ロレッタ・ラックスは、古くはルネサンス絵画から影響を受けつつも、写真というメディアで独自の詩的なリアリズムを追求し、現代アート界において重要な地位を占めています。主な写真集としては『LORETTA LUX』(2005年)などがあります。

