~前回までのあらすじ~
日々退屈な日々をむさぼる男、ムーブ・スタフー。
そんな彼の日常に、突如として絶大なるヒマつぶ・・・
いや正義の鉄槌を下すべき敵が現れた!
戦え!ムーブ・スタフー!
今こそ屁理屈症を生かす時だ!
次回、「闘争」!
こうご期待!
第二章 闘争
「そのサイトならしっているかもしれません。」
スタフーは答えた。
電話口の男はしめたと思ったのか、さらに饒舌に話し出す。
男の名は「ワタナベ」というらしい。面倒だからナベにしよう。
ナベは軽い口調でスタフーに50万円を請求し出した。
それにしてもこんなステレオタイプな方法で振り込め詐欺を
するやつが未だにいるもんかね。
もうちょっと捻ったらどうなんだ。
・・・それでもお年寄りなどはひっかかってしまうのかもしれない。
このご時世、ただでさえお金に困ってるであろうお年寄りから
金をむしり取って喜んでる奴らがいるかと思うと、本当に腹が立つ。
スタフーは義憤に駆られていた。
普段はさして正義感でない、
いやむしろ冷めた考え方をする方であったが、
スタフーは生粋のお年寄り贔屓(ひいき)である。
お年寄りなら無条件に助けたいものだ。
マイケ●ジャクソン級に資産力があれば(晩年は借金苦だったようだが)
ネバーランドならぬクローバーランドを作りたいぐらいである。
・・・お年寄りと戯れたくはないが。
などど当たっていない宝くじの使い道を考えるような
意味のない妄想を続けている間にも、ナベは得意気な様子で
ペラペラと喋っていたようだ。
「申し訳ないのですが、今日中に振り込んでいただけますか?」
そう質問を投げかけられた部分だけ、はっきりと聞こえた。
・・・特に聞いていなかったが問題はあるまい。
彼らのような人種が話すことなど、
国を正すべき政治家たちの利権争いの国会を聞いているくらい
意味のないことである。
「えぇっ!でもそんな大金、急には払えませんよ。」
スタフーは大げさ気味に答えた。今にも噴き出しそうな心情を抑えた。
「いやぁそんなことを言われても。使ったものは払ってもらわないと。
もう期限も過ぎてますし、このままでは法的手段に訴えるしかありませんよ。」
言い慣れた口調である。ヘラヘラと半笑いで答えてるに違いない。
・・・まぁこっちは半笑いどころか爆笑寸前だが。
「ほ、法的手段!?勘弁してくださいよ~」
スタフーは、某有名リアクション芸人 出川●朗のモノマネをしながら
答えた。語尾に「タモ●さ~ん」をつけようかどうか迷ったが、
そんな事をすれば相手に気取られる可能性がある。
ここはふざけたいのを我慢して道化を演じるとしよう。
相手はますます調子づいてくる。
こういった手合いは相手が弱い立場であればるほど、
次第に威圧感をましていくのが定石らしい。
「こっちが勘弁してほしいですよ!料金の未払いは犯罪ですよ!!」
ヤクザ的口調で答えやがる。
犯罪者が何をぬけぬけと。
「・・・期限内で払えなかったらどうなるんですか?」
おびえた口調で聞いてみる。
答えは分かっていたが、スタフーにとってはこのやり取り事態に意味がある。
「それはもちろん、裁判にさせていただきますが、
その前にこちらの回収員が自宅へ向かわせて頂きます。
調べは付いていますので。
ただその場合は、さらに調査料20万円と自宅までの交通費を
プラスさせて頂きます。」
・・・いよいよ脅しである。
こんな事を言われたら、一人暮らしの女の子や
老人夫婦しかいないお宅ではさぞかし怖いことだろう。
しかしながらスタフーは男一人暮らし。
というよりこういった犯罪は自宅まで来るなんて事はめったにない事を
スタフーは知っていた。
電話番号から住所を調べることは可能であるし、
いわゆる借金取りなんかはあらゆる手を駆使して自宅を
探してくるのだが、こういった手合いの場合は
自宅に来ても、回収が見込めないうえに
自らの姿をさらす事がかなりのリスクになってしまう。
金を借りていればまだしも、実際に請求されている金額は存在しない。
何よりスタフーは詐欺の電話など何度も経験済みであり、
日常の生活の中である程度の恐怖を体験していたがために、
一切の恐怖心はこの時なかった。
少し怒りが湧いてきた。ここは抑えなければ。
だから引き続きナベをからか・・・
いや戦うことにした。
「えぇ!そんなぁ。許してください。お願いしますぅ。
自宅に来られても困りますぅ。」
自分でも大丈夫かなと思うほど
胡散臭い半泣きを演じて見せる。
・・・やったあとで後悔する。やり過ぎたか。
「・・・」
電話の向こうが沈黙する。
しまった。バレたかもしれない。
と、思ったが
「そんな泣かれても困るのはこっちですよ。
泣きたいのはこっちの方なんですから。」
ナベは言い放つ。
・・・
・・・・
・・・・・
・・・・・よし!!!
コイツ馬鹿だ(笑)
「そんなこと言われてもそんなお金なんてもってないんですぅ(半泣き笑い)
今すぐに払えって言われても、払える訳ないじゃないですかぁ。
こっちは知らなかったんだしぃ。」
泣き真似は思ったより難しい。
自分でも吹き出すほどのクオリティである。
アクターズスクールにでも通っておくべきだったか。
・・・などと、スタフーはまたもや脱線した。
それに対するナベの切り返し。
思うのだが、詐欺業者はここからが周到である。
まぁ分かっている人からすれば稚拙極まりないのだが、
騙されている人間からすれば天の救いに聞こえるに違いない。
「・・・わかりました。
では今すぐ支払うのは無理だというのはこちらも分かりましたから、
こうしましょう。今回はこちらの確認の不備もありますし。
あなたが今払えるだけの金額を、今日中に支払ってください。
それを頭金として、しばらく様子を見ることにます。」
冷静に考えればあり得ない話である。
たかが受付窓口の分際で、会社の使用料金どうこうを
その場で即決できる訳がない。
だが、この飴と鞭こそが、その日中に相手に金を支払わせるという行為を
可能にしている。
手が込んでいる。
「ほ、本当ですかぁ!!」
まるでドラ●もんに道具を出してもらった
の●太くんのように、スタフーは喜んで見せた。
またもや明らかにやり過ぎている。
・・・
電話口がまたしばらく黙りこむ。
・・・
・・・・なるほど。今わかった。
沈黙している時は向うで受話器を手で抑えて爆笑しているらしいな。
ガサガサという音が沈黙の前にいつも入るのが根拠である。
「そ、そそれでは(笑い終えられてないぞ)
今いくらぐらい払えますか?値段によってはこちらも善処します」
・・・ふむ。
そろそろ本気でからか・・・戦いだすことにしよう。
スタフーは答える。
「どんなに捻り出しても49万円しかありません。」
ほとんどあるじゃねーか。
自分でツッコミをいれたくなる。
我ながら最高の切り返しだ。
芸人にでもなろうか。
さすがに「ふざけているのか」、と向うも怒り出すかと予想していたが、
そこはさすがにナベである。
「ほとんどあるじゃないですか!
そんなにあるんだったら残り一万円はサービスで
この際割引しても大丈夫ですよ!」
あきれ果てるほどアホである。
まぁ振りこめ詐欺なんてほとんどはヤクザ屋さんにもなれなかった
チンピラクラスの模倣犯である。
発想もどこまでも低俗だと言ってさしつかえない。
でも本物もいるので皆さんにはこのような行為はお薦めしない。
スタフーがここまで大胆な行動に出るのも、
このやりとりの前にこの電話番号を思い出していたからである。
2か月ほど前にも、確か同じ番号から同じ電話がかかってきていた。
・・・2か月も同じ電話番号をつかっている。
これはもはや後ろ盾がないことを証明しているようなものだ。
たいして大規模な業者でもあるまい。
まぁ最大の理由はスタフーも他ならぬアホだからなのだが・・・
なんだか怒ってくれないと、からかい・・・戦い甲斐がないというものだが、
まぁ仕方あるまい。
何がサービスだ。50万円の商品を1万円引きなんて、
今日びどこのお店でもやってはいまい。
せめて5万円くらい引いてみせろ。
このまま筋違いなサービスを要求するのもよかったが、
ここはおとなしく喜ぶことにした。
「大サービスですよ。本来は割引なんて駄目なんですから。」
などとナベはほざいていた。調子に乗るなよ。
「どうやって払えばいいんですか?」
「今から言うところに振り込んでください。」
でたな。
振りこめ詐欺が捕まらないのは、実態がつかめないからである。
口座があるのに捕まえられないなんて、警察も銀行も無能極まりないな。
「できれば会って直接お渡ししたいです。」
駄目もとで言ってみた。
できれば警察を大量に送りこんで、
ナベを東スポに載せてやりたかった。
見出しは・・・そうだな。
「振りこめ詐欺犯ワタナベ。ナベだけに煮え湯を飲まされる」
・・・うむ。決まりだ。
しかしそこは振りこめ詐欺犯である。
マニュアルで絶対に会ってはいけない、とあるのだろう。
「申し訳ありませんが当社は振り込みしか対応していない。」
の一点張りである。
住所を聞いてみたが、答えはしてくれたものの
そこに自分はいないという。
それは住所とは言わないな。多分更地なんだろうな。
捕まえる路線は諦めよう。
「わかりました。。。。じゃあ振り込みます。
ただ、実は銀行振り込みをしたことがなくて振り込み方がわからないんです」
今のご時世20を過ぎた男でそんな人間がいるかどうかわからんが、
ナベは仕方なく銀行のシステムを1から教え始めた。
もちろんこの間、意味のない質問を何度もはさんでいる。
ナベはディ●ニーランドの店員のような丁寧さで、
事細かに銀行振り込みの仕方を教えてくれた。
・・・ありがとう。知ってるけど。
終いには銀行がどこにあるかわからない。などと言って、
スタフーの実際の住所とは程遠い八王子の適当な住所を伝え、
最寄りの銀行まで調べさせた。
このまま色々聞き続けたら、ア●街っく天国くらい詳しい八王子情報を
教えていただけるかもしれないな。
ちなみにこの間電話を始めてから30分以上は経過している。
僕のために無駄な時間と電話代をつかってくれてありがとう。
スタフーはほくそ笑んだ。
・・・まぁそろそろこっちも動かないと、
向うも付き合ってくれなくなるかも知れないな。
振り込む誠意を見せないと。
「ちょっと待ってください。今から振込に行きます。
ただ、説明がよくわからなかったので、
(※皆様には、この瞬間ナベの30分間が
無駄になったことを見逃さないで頂きたい。)
銀行につくころ・・15分くらいまた後から電話もらってもいいですか?」
ぬけぬけとスタフーは答える。
ちなみに電話をしてもらうことで、
スタフーに電話代がかからない事も要チェックである。
さすがに面倒そうではあったがナベは親切にも答えた。
「わかりました。じゃあ説明しながら振り込んでいただくので。
またかけ直しますね。」
ブチっ・・・ツーツーツー
ふぅ・・・長いやり取りだった。
ナベよ、あんた本当はいい人なんじゃないのかい?
・・・などと軽い感慨と満足に浸っていたスタフーだったが、
まだ戦いは終わってはいない。
まだ最後の大詰めがある。
すなわちカミングアウトである。
まぁ・・・焦ることはない。
時間はある。
「トイレ休憩と準備をはさむとしよう。」
スタフーは独り言を呟きながら、要約ベッドから起き出して
ひとまずトイレに向かった。
第二章 終
第三章へ続く
日々退屈な日々をむさぼる男、ムーブ・スタフー。
そんな彼の日常に、突如として絶大なるヒマつぶ・・・
いや正義の鉄槌を下すべき敵が現れた!
戦え!ムーブ・スタフー!
今こそ屁理屈症を生かす時だ!
次回、「闘争」!
こうご期待!
第二章 闘争
「そのサイトならしっているかもしれません。」
スタフーは答えた。
電話口の男はしめたと思ったのか、さらに饒舌に話し出す。
男の名は「ワタナベ」というらしい。面倒だからナベにしよう。
ナベは軽い口調でスタフーに50万円を請求し出した。
それにしてもこんなステレオタイプな方法で振り込め詐欺を
するやつが未だにいるもんかね。
もうちょっと捻ったらどうなんだ。
・・・それでもお年寄りなどはひっかかってしまうのかもしれない。
このご時世、ただでさえお金に困ってるであろうお年寄りから
金をむしり取って喜んでる奴らがいるかと思うと、本当に腹が立つ。
スタフーは義憤に駆られていた。
普段はさして正義感でない、
いやむしろ冷めた考え方をする方であったが、
スタフーは生粋のお年寄り贔屓(ひいき)である。
お年寄りなら無条件に助けたいものだ。
マイケ●ジャクソン級に資産力があれば(晩年は借金苦だったようだが)
ネバーランドならぬクローバーランドを作りたいぐらいである。
・・・お年寄りと戯れたくはないが。
などど当たっていない宝くじの使い道を考えるような
意味のない妄想を続けている間にも、ナベは得意気な様子で
ペラペラと喋っていたようだ。
「申し訳ないのですが、今日中に振り込んでいただけますか?」
そう質問を投げかけられた部分だけ、はっきりと聞こえた。
・・・特に聞いていなかったが問題はあるまい。
彼らのような人種が話すことなど、
国を正すべき政治家たちの利権争いの国会を聞いているくらい
意味のないことである。
「えぇっ!でもそんな大金、急には払えませんよ。」
スタフーは大げさ気味に答えた。今にも噴き出しそうな心情を抑えた。
「いやぁそんなことを言われても。使ったものは払ってもらわないと。
もう期限も過ぎてますし、このままでは法的手段に訴えるしかありませんよ。」
言い慣れた口調である。ヘラヘラと半笑いで答えてるに違いない。
・・・まぁこっちは半笑いどころか爆笑寸前だが。
「ほ、法的手段!?勘弁してくださいよ~」
スタフーは、某有名リアクション芸人 出川●朗のモノマネをしながら
答えた。語尾に「タモ●さ~ん」をつけようかどうか迷ったが、
そんな事をすれば相手に気取られる可能性がある。
ここはふざけたいのを我慢して道化を演じるとしよう。
相手はますます調子づいてくる。
こういった手合いは相手が弱い立場であればるほど、
次第に威圧感をましていくのが定石らしい。
「こっちが勘弁してほしいですよ!料金の未払いは犯罪ですよ!!」
ヤクザ的口調で答えやがる。
犯罪者が何をぬけぬけと。
「・・・期限内で払えなかったらどうなるんですか?」
おびえた口調で聞いてみる。
答えは分かっていたが、スタフーにとってはこのやり取り事態に意味がある。
「それはもちろん、裁判にさせていただきますが、
その前にこちらの回収員が自宅へ向かわせて頂きます。
調べは付いていますので。
ただその場合は、さらに調査料20万円と自宅までの交通費を
プラスさせて頂きます。」
・・・いよいよ脅しである。
こんな事を言われたら、一人暮らしの女の子や
老人夫婦しかいないお宅ではさぞかし怖いことだろう。
しかしながらスタフーは男一人暮らし。
というよりこういった犯罪は自宅まで来るなんて事はめったにない事を
スタフーは知っていた。
電話番号から住所を調べることは可能であるし、
いわゆる借金取りなんかはあらゆる手を駆使して自宅を
探してくるのだが、こういった手合いの場合は
自宅に来ても、回収が見込めないうえに
自らの姿をさらす事がかなりのリスクになってしまう。
金を借りていればまだしも、実際に請求されている金額は存在しない。
何よりスタフーは詐欺の電話など何度も経験済みであり、
日常の生活の中である程度の恐怖を体験していたがために、
一切の恐怖心はこの時なかった。
少し怒りが湧いてきた。ここは抑えなければ。
だから引き続きナベをからか・・・
いや戦うことにした。
「えぇ!そんなぁ。許してください。お願いしますぅ。
自宅に来られても困りますぅ。」
自分でも大丈夫かなと思うほど
胡散臭い半泣きを演じて見せる。
・・・やったあとで後悔する。やり過ぎたか。
「・・・」
電話の向こうが沈黙する。
しまった。バレたかもしれない。
と、思ったが
「そんな泣かれても困るのはこっちですよ。
泣きたいのはこっちの方なんですから。」
ナベは言い放つ。
・・・
・・・・
・・・・・
・・・・・よし!!!
コイツ馬鹿だ(笑)
「そんなこと言われてもそんなお金なんてもってないんですぅ(半泣き笑い)
今すぐに払えって言われても、払える訳ないじゃないですかぁ。
こっちは知らなかったんだしぃ。」
泣き真似は思ったより難しい。
自分でも吹き出すほどのクオリティである。
アクターズスクールにでも通っておくべきだったか。
・・・などと、スタフーはまたもや脱線した。
それに対するナベの切り返し。
思うのだが、詐欺業者はここからが周到である。
まぁ分かっている人からすれば稚拙極まりないのだが、
騙されている人間からすれば天の救いに聞こえるに違いない。
「・・・わかりました。
では今すぐ支払うのは無理だというのはこちらも分かりましたから、
こうしましょう。今回はこちらの確認の不備もありますし。
あなたが今払えるだけの金額を、今日中に支払ってください。
それを頭金として、しばらく様子を見ることにます。」
冷静に考えればあり得ない話である。
たかが受付窓口の分際で、会社の使用料金どうこうを
その場で即決できる訳がない。
だが、この飴と鞭こそが、その日中に相手に金を支払わせるという行為を
可能にしている。
手が込んでいる。
「ほ、本当ですかぁ!!」
まるでドラ●もんに道具を出してもらった
の●太くんのように、スタフーは喜んで見せた。
またもや明らかにやり過ぎている。
・・・
電話口がまたしばらく黙りこむ。
・・・
・・・・なるほど。今わかった。
沈黙している時は向うで受話器を手で抑えて爆笑しているらしいな。
ガサガサという音が沈黙の前にいつも入るのが根拠である。
「そ、そそれでは(笑い終えられてないぞ)
今いくらぐらい払えますか?値段によってはこちらも善処します」
・・・ふむ。
そろそろ本気でからか・・・戦いだすことにしよう。
スタフーは答える。
「どんなに捻り出しても49万円しかありません。」
ほとんどあるじゃねーか。
自分でツッコミをいれたくなる。
我ながら最高の切り返しだ。
芸人にでもなろうか。
さすがに「ふざけているのか」、と向うも怒り出すかと予想していたが、
そこはさすがにナベである。
「ほとんどあるじゃないですか!
そんなにあるんだったら残り一万円はサービスで
この際割引しても大丈夫ですよ!」
あきれ果てるほどアホである。
まぁ振りこめ詐欺なんてほとんどはヤクザ屋さんにもなれなかった
チンピラクラスの模倣犯である。
発想もどこまでも低俗だと言ってさしつかえない。
でも本物もいるので皆さんにはこのような行為はお薦めしない。
スタフーがここまで大胆な行動に出るのも、
このやりとりの前にこの電話番号を思い出していたからである。
2か月ほど前にも、確か同じ番号から同じ電話がかかってきていた。
・・・2か月も同じ電話番号をつかっている。
これはもはや後ろ盾がないことを証明しているようなものだ。
たいして大規模な業者でもあるまい。
まぁ最大の理由はスタフーも他ならぬアホだからなのだが・・・
なんだか怒ってくれないと、からかい・・・戦い甲斐がないというものだが、
まぁ仕方あるまい。
何がサービスだ。50万円の商品を1万円引きなんて、
今日びどこのお店でもやってはいまい。
せめて5万円くらい引いてみせろ。
このまま筋違いなサービスを要求するのもよかったが、
ここはおとなしく喜ぶことにした。
「大サービスですよ。本来は割引なんて駄目なんですから。」
などとナベはほざいていた。調子に乗るなよ。
「どうやって払えばいいんですか?」
「今から言うところに振り込んでください。」
でたな。
振りこめ詐欺が捕まらないのは、実態がつかめないからである。
口座があるのに捕まえられないなんて、警察も銀行も無能極まりないな。
「できれば会って直接お渡ししたいです。」
駄目もとで言ってみた。
できれば警察を大量に送りこんで、
ナベを東スポに載せてやりたかった。
見出しは・・・そうだな。
「振りこめ詐欺犯ワタナベ。ナベだけに煮え湯を飲まされる」
・・・うむ。決まりだ。
しかしそこは振りこめ詐欺犯である。
マニュアルで絶対に会ってはいけない、とあるのだろう。
「申し訳ありませんが当社は振り込みしか対応していない。」
の一点張りである。
住所を聞いてみたが、答えはしてくれたものの
そこに自分はいないという。
それは住所とは言わないな。多分更地なんだろうな。
捕まえる路線は諦めよう。
「わかりました。。。。じゃあ振り込みます。
ただ、実は銀行振り込みをしたことがなくて振り込み方がわからないんです」
今のご時世20を過ぎた男でそんな人間がいるかどうかわからんが、
ナベは仕方なく銀行のシステムを1から教え始めた。
もちろんこの間、意味のない質問を何度もはさんでいる。
ナベはディ●ニーランドの店員のような丁寧さで、
事細かに銀行振り込みの仕方を教えてくれた。
・・・ありがとう。知ってるけど。
終いには銀行がどこにあるかわからない。などと言って、
スタフーの実際の住所とは程遠い八王子の適当な住所を伝え、
最寄りの銀行まで調べさせた。
このまま色々聞き続けたら、ア●街っく天国くらい詳しい八王子情報を
教えていただけるかもしれないな。
ちなみにこの間電話を始めてから30分以上は経過している。
僕のために無駄な時間と電話代をつかってくれてありがとう。
スタフーはほくそ笑んだ。
・・・まぁそろそろこっちも動かないと、
向うも付き合ってくれなくなるかも知れないな。
振り込む誠意を見せないと。
「ちょっと待ってください。今から振込に行きます。
ただ、説明がよくわからなかったので、
(※皆様には、この瞬間ナベの30分間が
無駄になったことを見逃さないで頂きたい。)
銀行につくころ・・15分くらいまた後から電話もらってもいいですか?」
ぬけぬけとスタフーは答える。
ちなみに電話をしてもらうことで、
スタフーに電話代がかからない事も要チェックである。
さすがに面倒そうではあったがナベは親切にも答えた。
「わかりました。じゃあ説明しながら振り込んでいただくので。
またかけ直しますね。」
ブチっ・・・ツーツーツー
ふぅ・・・長いやり取りだった。
ナベよ、あんた本当はいい人なんじゃないのかい?
・・・などと軽い感慨と満足に浸っていたスタフーだったが、
まだ戦いは終わってはいない。
まだ最後の大詰めがある。
すなわちカミングアウトである。
まぁ・・・焦ることはない。
時間はある。
「トイレ休憩と準備をはさむとしよう。」
スタフーは独り言を呟きながら、要約ベッドから起き出して
ひとまずトイレに向かった。
第二章 終
第三章へ続く