林業、矢打ち、ハルダー:ショックレスハンマー/土佐斧:ヨキ[山人 2017]-其の12- | 望創家、蜃気楼が如く

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夢の引きこもり生活を目指し日々修行中

ひとの数だけ例外あり

「やりたくないことをやっている暇はない」

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ショックレスハンマー(手前)とヨキ(奥)の二刀流だよ』
  
(※黄色いのがプラスチックのクサビ(矢))
(※上記は2017年望創家腰袋)
 

  
(※2017年11月27日の記事を新たに更新しました)
(※1年間ショックレスハンマーを使い続けました)
(※2019年3月に追加:柄の交換方法は→現在は頭径70mmを柄を交換して使用中)
 

『2018年6月現在の望創家の格好』
 
(※左腰にショックレスハンマーを縦挿し、矢は懐収納、携帯や小物は胸ポケット)
 

『背中にヨキを縦に』
 
(※このスタイルですと、重機の運転で座るときも邪魔にならず、腰の負担もなく、楽に林業が出来ています)
(※因みにこのベストはタクティカルベストです。もっと高いお金を出せばメッシュのベストもあります)
 
 
世界の、
 
「林業のイメージってなに?チェンソーで木を伐る?他は?農家さんと同じような格好?危ないイメージはない?あっそう」
 
と無闇に自分の職業を晒したあとに、あまりの素っ気なさと認知度の低さに淋しくなったことのある皆さん、こんにちは。望創家ノリです。
 
本日の大分県北部は晴れ。漸く大量発生していたカメムシ(※)の勢いが弱まり、洗濯物が安心して干せる陽気になって参りました。
 
皆さんの地域は如何でしょうか。
 
(※アリエナイ量です。大量ですよ。大分県に来た際は梅雨どきから秋までは気をつけてください)
 
 
ペーペーの皆さん、道具は着実に揃えてますか。チェンソーはokですか?ヘルメットは決められましたか?
 
 
今私は作業着の研究を。
 
理想は「山用装備品で固めること」ですが…それは夢で、やはり作業着は消耗品のひとつなので、適度に丈夫で適度に安価なものを選んで、自分の作業スタイルと時期にあったものを選んでおります。
 
(※山用装備品は値段をかけた分応えてくれるのですが、いかんせん同じ山でも山違いな場所&やることなんで「引っ掛け」で破れることが圧倒的に多いです。それをも惜しまない方は、山用装備品がおススメです。4〜5万円もするGore-Texなどのレインスーツを一ヶ月あまりで破った日には、泣けないですよね)
 
今漸く冬用作業着が揃い、今冬を迎えます。おいおいそんな作業着特集もしたいと思います。
 
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『望創家特製ハルダーのショックレスハンマー』
 
(※山で無くさないようにビニールテープで…)
 
 
さてはて、今日は安全な伐倒(※)時に必要不可欠なクサビ(矢)。そのクサビ打ちに欠かせない、ハルダーのショックレスハンマ(※)をご紹介したいと思います。
 
(※伐倒:木を伐って倒すこと)
(※ホームセンターなどで安く売ってるショックレスハンマーではなく、ハルダーのショックレスハンマーということで話を進めます)
 
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『望創家特製土佐斧(ヨキ)』
 
 
林業の世界では昔から、ヨキ(斧)で矢打ちをして来たのではないでしょうか。勿論今現在においてもここでは90%以上の方がヨキで矢打ち、残りの7%がフェリングレバー、そして2%のひとが普通のハンマー、最後の1%がショックレスハンマーだと思います。
 
(※勝手な妄想を含んでおります)
 
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『竹やメジャーで尺取りをします』
 
 
私が初めてこの土地で林業の世界に入ったとき、まずは伐倒する先輩につき、倒し終わった木の尺取り(※)、次にヨキを持ち枝払い。その作業を1ヶ月ぐらい続けていたときに、あることに気づきました。
  
(※尺取り竹というものを伐倒木にあて、2〜4mごとにチョークで印を付ける作業)
 
「どうして先輩たちはプラスチックのを打つのに金属のヨキを使うのかなぁ…しかも凄い労力を使って」
 
 
伐倒するときの体力図を望創家的に数値化すると、
 
チェンソーワーク:30〜40%
矢打ち:60〜70%
 
だと感じます。
 
チェンソー作業は確かに疲れます。それはカウボーイが暴れ馬に跨りロデオよろしくで手なづける労力に匹敵するのではないでしょうか(※)
 
(※誇張中)
 
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『切り株の真ん中ら辺の毛羽立ったところがツル』
 
(※倒れるときにむしり取られて切れる場所)
 
 
更に矢打ち作業は少しでも安全に木を倒そうとするときはツル(※)を多めに残すので、このときが一番苦労するわけです。ひたすらに頭上の揺れを見、伐倒方向を確認し、
 
「カーン、カーン」
 
と静かな山に奏で、
 
「メキメキ…ズドーーーーンッ!」
 
といく手前まで、矢を打つわけであります。
 
(※ツル:木が直ぐに倒れないようにする意味や、確実に決めた伐倒方向に倒すために必要な最後まで切らない部分)
 
この矢打ち作業をヨキでするのが一般的で、しかしヨキで打つのも矢の跳ね返りもあるので、大変。しかも今はプラスチックな矢が主流で、それを金属のヨキで打つもんですから、プラスチックの矢もボロボロに。
 
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『太い木のときは矢打ちも大変』
 
(※画像のも沢山ツルを取った跡が…)
 
 
ヨキで矢打ち作業をする良い点:

・取り敢えず一本持っておけば矢打ちもカズラ切りもこなせ、一人二役な便利もの
 
強いて挙げるヨキを持つ利点:

・ツルや笹、雑木を切ったり枝を払ったり出来る
・邪魔な切られた小径木など、ヨキで刺してどかすことが出来る
・伐倒時に立木の根元などチェンソーで伐る場所の掃除に使える
・矢打ちが出来る
・斜面を登るときにヨキを斜面に突き刺して登ることが出来る(※)
 
(※なるべくやめてください)
 
ヨキで矢打ち作業をする悪い点:

・手首や肘に振動でダメージ
 (※地味に手首や肘を痛めます)
 
・矢に弾かれヨキの刃で脛をケガしやすい
 (※ペーペーに多い事故)
 
・矢が壊れやすい
 (※矢は消耗品ですが、地味に高い!)
 
・打ち損じでヨキの柄が壊れやすい
 (※ペーペーに多い事故)
 
・天鋼(※)入りじゃないヨキの場合は、ヨキが壊れる
 (※地味に知らないひとが多い)
  
(※天鋼:ヨキの刃の反対側に鋼を入れてあり、衝撃に強くしてある)
 
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『銀色の部分に鋼が。ここで矢を打ちます』
 
(※私のヨキは頭が800g。全部で約1kg)
 
 
昔はもっといろいろな使い方をしたのかもしれませんが、ペーペーの私が見るからには、
 
・矢打ち:70%
・枝払い:20%
・カズラ切り:10%
 
3点がメインな使われ方ではないでしょうか。
 
そうとなったらショックレスハンマーですよ、奥さん。
 
古的(イニシエテキ)な先輩(別名:レジェンド)は、
 
「ハンマーはカズラ(ツル植物)を切ったり枝払いが出来ないからつまらん。ヨキを持つように」
 
と言う方もいらっしゃいます。
 
「はい、その通りです。ハンマーは矢打ちにしかメインで使えません」
 
しかしですね…伐倒時の矢打ちの労力からしたら、ヨキよりハンマーはハンマーでも、ショックレスハンマーの方が26倍(※)ぐらいいいです。
 
(※当社比)
 
単純に、
 
「二刀流」
 
でいいじゃないですか、奥さん。
 
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『2本とも長さを一緒にしてます』
 
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『ヨキの柄には木の直径を直ぐに測れるように刻みを』
 
確かにショックレスハンマーは重いです。標準的に使えるショックレスハンマー(頭径50mm)の重さが約1kg望創家特製ショックレスハンマー(頭径60mm)に限りは約1.7kgほど。これにヨキ約1〜1.2kg
 
でも、本当に、特に夏場の伐倒時の矢打ち超疲れるんです。諸先輩方が1本木を倒したあとに休む姿、見ました。特に太い木で、絶対に反対方向に倒せない場合(民家や電線、公道があるなど)、ツルを多めに残し安全を確保したのち、矢打ちですよ、奥さん。
 
太くて長い木は重く、なかなか木が起きません。なので矢打ちも時間のかかる作業なのです。
 
それをショックレスハンマーで、力も時間もかけずに、
 
「カーン、カーン…メキメキ…」
 
といったら、楽じゃないですか。
 
たった1〜1.7kgほどの持ち歩く労力(※)だけで、伐倒時の労力が、
 
チェンソーワーク:30%
矢打ち:30%
 
になったら、残りの40%「安全確保」に回せます。そして休むことなく次の伐倒に進むことだって出来ます。
 
(※実際は伐倒時は次に伐る木は直ぐ隣近所なので、そこに「ポンッ」と投げることが多いので、あまり持ち歩きません)
 
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『チェンソーで切れ目を入れながら矢を打っていきます』
 
(※これで自分の方に倒れなくさせる意味でも「保険をかける」のです)
 
 
 
ショックレスハンマーの良い点:
 
・肘や手に振動が伝わらず、全ての力を矢に伝えることが出来る
(※ヘッド内部に小さな金属の球が無数に入っています)
 
・重機のバケットやグラップル替えのときの「ピン抜き」も簡単に叩いて抜ける
(※超楽です)
 
・重機のボディの凹みも、簡単に叩いて直せる
(※鈑金屋さん要らず)
 
・伐倒時に足場がないとき、近くの雑木で作った杭を簡単に地面に打ち沈めることが出来る
(※ヨキでは絶対に無理です)
 
・立木の根元の土をどけるときは、簡単に打ち砕くことが出来る
(※硬い土もバコンバコン崩します)
 
・とにかく身体に優しい
(※基本片手打ちで遠心力を使います)
 
・劣化した頭部分は取り替えることが出来る
(※エコです)
 
・ありえないパワーで矢を打ち込めるので「ダメだぁ」と思ったときこそショックレスハンマー頼みが出来る
(※とにかく使えます)
 
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『急な斜面での足場づくりに最適』
 
 
ショックレスハンマーの悪い点:
 
・林業用ではなく工業用なので、初期のショックレスハンマーの柄が短く、若干使いづらい
(※柄を長くしたら能率更にUP)
 
・重い
(※頭径50mmなら軽いです)
 
・ヨキと二本持ちになると、持ち運びにかさばる
(※工夫すれば大丈夫)
 
・柄が滑りやすいのでグリップが必要
(※グリップを巻けば無問題)
 
・本当に使いやすくするのに、柄を替える必要性があり、その苦労がなかなか
(※ヒッコリー製の柄以外は問題ないかも…)
 
・矢を連続でガンガン叩き過ぎると、プラスチックの矢の場合はプラスチック疲労(熱を持ち)で矢が折れたり割れる
(※その分楽出来ると思ったら…)
 

『左:直径50mm、中:直径60mm、右:望創家特性直径60mm』
 
(※左と中の標準ハンマーの全長370mm)
(※右の望創家特性ハンマーは全長450mm)
(※頭径60mmの標準柄は若干太いので使い辛く、『ダブルハンド(両手打ち)』には向かない長さです)
(※望創家特性ハンマーは柄を替えてあります。ヒッコリーから樫のヨキの柄に。1年間両手で叩きまくっておりますが、折れてません)

 
っとまぁ、矢打ち時のショックレスハンマーのススメなのですが、
 

ドイツのロームヘルド・ハルダー社
頭径60mm/全長370mm/重量1.7kg
ヒッコリー製柄
 
価格:13.000〜17.000円
 
(※頭径50mmのショックレスハンマーの2〜3倍はパワーがあります)
 
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『振り子打法で全く力入らずでガンガン矢が入ります』
 
このスペックのショックレスハンマーの柄をピン抜きでピンを叩き抜き(3〜4mm)、既存のヒッコリー柄をノコギリでサクッと切り落とし…
 
これからが大変。
 
残りの柄を電動ドリルで掘り…(削り)…(むしり取り)…(一番奥底に残るアルミ製の厄介なクサビ抜き)…
 
全て綺麗に残りの柄を取り除けたら、ヨキ用の樫の木の柄の挿し込み部を成形し(ディスクグラインダーがおススメ)、ある程度入ったらハンマーで叩き入れ(木殺し(※)してね)、ピンネジを挿すための穴をホジホジ電動ドリルで開け、ピン抜きでピンネジを叩き入れ、あとはお好みの柄の長さで切り落とし出来上がり。
 
ふーっ。
 
(※木殺し:木を叩いて少し凹ませる感じに硬くさせること?かな…)
(※柄の付け替えに関して詳しく知りたい方は望創家宛てにメール発射をしてください→nuvola1475@nifty.com)
 

『矢の入れ始めは、短く持ち「コンコン」と入れ、最後は「振り子打法」で。通常は全く力を使いません』
 
望創家的に使いやすい長さが「全長450mm(※)でした。片手持ちと両手持ちの両方出来る長さです。
 
(※ハンマー部も含む長さです。柄の長さだけではありません)
 
私の先輩たちは頭径50mmの重量約1kgのショックレスハンマーを使っています。出来れば柄の長さを私と同じにしたいそうですが…私の苦労を知っているので初期の370mmの長さで使っています。
 
慣れたら頭径50mm(※)でもいいのですが、やはり頭径が10mm違うと矢打ちの打点も小さく、慣れるまでが大変なのと、両手持ちでの矢打ちが「しづらい」、最大の違いは「パワーが2〜3倍違う」点。使い勝手が頭径60mmの望創家仕様ショックレスハンマーに比べて格段に下がる気がします。
 
(※頭径50mm/重量約1kg/全長370mm/価格6〜8.000円:ヒッコリー製の柄の場合)
 
 
頭径50mmのショックレスハンマー
→間伐用(小〜中径木用)
 
頭径60mmのショックレスハンマー
→間伐・全伐用(中〜大径木用)
 
使い分けるのもいいかもしれません。
 
(※しかし私はずーーーっと直径60mmでやってます。使えば分かります柄を変えるのが条件ですが…)
 
 
『標準の直径60mmの柄を持った感じ』
 
(※直径50mmに比べて、持ち手が太く、幅が狭い(短い))


『標準の直径50mmの柄を持った感じ』
 
(※細くて持ちやすく、持ち手も長いが、両手使いには若干短い気がします)
 

『左:直径50mm、中:直径60mm、右:望創家特性60mm』
 
(※望創家特性ハンマーは重機修理にも使ってるのでボロボロ…矢打ちだけなら、こんな傷は付かず、一生使えるのではないでしょうか。ヘッド交換もできます。直径10mmの差は大きいです)
(※頭径60mmで柄を付け替え全長450mmにしてみてください。もうランス(※)もビックリ)
(※ランス:広島にいた、あのひとです)

 
望創家ショックレスハンマーの理想
 
・全長450mm
・グリップ細め
・重量1.3〜1.5kg
・頭径55mm
 
ではないでしょうか。
 
ハルダーのショックレスハンマーの柄は3種類ありまして、
 
 
もしかしたらですね、ヒッコリー製の柄を選ばなければ、ピンネジを抜いたら「ヒョイッ」と柄が全て抜けるかもしれません。とにかくヒッコリー製の柄の場合はボンドで奥底でくっつけてあるんじゃないかってぐらい柄を全て取り除くのが大変です。
 
お金が余っていたら人柱にグラスファイバー製の柄のやつでも購入し、柄を替えてみるんですけどね。
 
これでも頭径50mmと頭径60mmを人柱に購入し、先輩にショックレスハンマーを一度使ってもらい、その結果今では二人の先輩が頭径50mmを使うようになり、
 
「もう、ヨキには戻れない(矢打ちで)
 
となっています。
 
ただでさえ過酷な林業。少しでも身体を楽させ、安全に力を注げたらと思い、出逢うひとにハルダーのショックレスハンマーを勧めています。
 
 
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『土佐斧はいいです。お値段もイイです』
 
(※これは8〜9.000円はしました)
 
今回の記事では、林業において「ヨキは不要」と言っているのではなく「餅は餅屋」と言いたいだけで、私はヨキとショックレスハンマーの二刀流で今後もいきたいと思っています。
 
この田舎からどんどんショックレスハンマーを広げていきたいと思います。それと土佐斧を。
 
枝払いなど、普段使いに便利な重量(頭の重さ)は700〜800g(柄の重さを入れると大体1kg)ぐらいではないでしょうか。ヨキで矢を打てるように天鋼付きをお勧めいたします。私は自分が使いやすいように柄を加工し、ショックレスハンマー同様の「全長450mm」(※)にしてます。どうぞご参考に。
 
(※ヨキを矢打ちで使いたい方は450mmですと若干短いかもしれませんので、標準サイズのままお使いください。私は「枝打ち」のときに柄が長いと使いにくかったので全長450mmに揃えました)
 

次回はその他の道具をちらほらとお話出来ればと思います。
 
ではまた。
 
Ciao!
 
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『スチールMS241Cとショックレスハンマーで効率UP』
 
 

 
追記:
 
田舎暮らしには薪ストーブ
 
そんな薪割り用のハルダーのハンマー&斧も見逃せません!
 
その他各種取り替えパーツも充実してますので、安心してショックレスハンマーも使えます。
 

『直径80cm超えの伐倒にも、臆することなく矢を叩き入れられます』
 
(※直径60mmの重さを持って回れるひとには、直径50mmではなく、直径60mmを!全く威力が違います)
(※矢が確実に入ってから、ダブルハンドですよ!そうしないと矢を折るかも?!)