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そぴあのブログ

今はカードキャプターさくらにハマり中です。
もちろんケヴィン・レイノルズ選手とニコライ・ホジャイノフ氏が好きです。
レイノルズ選手は引退されましたが、ホジャイノフ氏についての考察や感想も続けます。

医師と入れ替わるようにヴァレリーが昼食を運んできました。けびんは起きる気配がありませんでしたので、起きたら知らせるからと、ヴァレリーを下がらせ、にこらいは一人で食べることにしました。
食事を終えるころ、食器を下げに来たヴァレリーとともに、今度は天界からの使者がやってきました。補佐官のルカです。天使長からの親書を運んできたのでした。
親書には、けびんへの見舞と、にこらいをねぎらう言葉、マチウスの調査は進んでいるが、地上界の政治状況が、混迷の度を深めていることは確かであり、それが故に先を展望しづらいこと、もしかするとあと2~3か月もしない内に関係が破綻しそうな国々が認められることなどがつづられていました。
「にこらい様、けびん様のお加減と、にこらい様ご自身の体調はいかがですか。ユリウス様は、お二人の事を大層ご心配になられていました。」
親書に目を通したにこらいにルカが話しかけました。
「けびんは、今はご覧の通り、落ち着いています。医師の話では、かなり回復してきているということです。何でも、けびん自身が無意識に治癒術を行使していると言われたのですが。その分力を消耗するらしくて、寝てばかりいるようです。私は、もう大丈夫です。」
「そうですか、とにかくよかった。昨夜遅くに報せが来たときは、本当にびっくりしました。にこらい様が間に合ってよかった。それにしても、けびん様は、さすがですね。実は、けびん様とは、お小さい時にカザルス様に連れられ、天界に来られた時にお会いしているのです。利発で素直で、明るいお子様でした。それにくるくると敏捷に中庭を駆け回っておられる様子が、それは可愛らしかったですね。」
「え?けびんは天界に来たことがあったのですか?」
「もちろん。四つの要素の一つを操る、次期族長の候補として、天使長の認証を得るために、天界に来られていたのです。」
「ああ、そうでした。ルカ殿は会われていたのですね。…うらやましい。」
にこらいが、最後の一言を小声でつけくわえた時、けびんがにこらいを呼びました。どうやら目を覚ましたようです。にこらいは、ベッドの側に駆け寄りました。ルカも続きました。
「にこらい、奉納舞は…? あ…ごめんなさい。お客様?」
ルカはにっこりとしながら、答えました。
「お加減はいかがですか? お久しぶりです。けびん様。ユリウス様の補佐官ルカです。以前に天界でお会いしているのですよ。もっとも、あの時は、まだ幼くていらしたから覚えていらっしゃらないでしょうけれど。」
「天界で?あ、じゃあ、あの時、宮殿の中庭で一緒にかくれんぼをして遊んでくださった方ですか?」
「そうです!覚えてくださっていたとは、嬉しいですね。」
「今から思えば、あんなところで遊んでよかったのでしょうか?生垣が迷路みたいな素敵なお庭で、とっても楽しかった。」
「私もです。それにしても、けびん様は、あの時は本当にまだお小さくて、可愛らしかったのですが、こうしてみると随分大きくなられましたね。あ、でも今も可愛らしいのはかわりませんね。」
妙に嬉しそうなルカと、懐かしそうな親しい目でそのルカを見るけびんをかわるがわる見ながら、にこらいは、不機嫌そうに言いました。
「どうして、その時、僕を呼んでくれなかったんだ、二人とも。ひどいじゃないか。僕を除け者にして。」
「え?いや、除け者にしたわけでは、決してありませんが…。にこらい様もまだお小さい頃で、お勉強もあったはずですし…。認証式自体は公開しないものですし…。」
何故かしどろもどろになって、ルカがにこらいに弁解しました。するとけびんが朗らかに、にこらいに言いました。
「にこらいこそ、中庭に来てくれていたなら、僕達、その時に友達になれていたのに。本当、僕も、小さいにこらいに会いたかったなあ。」
「けびん…!けびんの小さい頃の様子、僕も本当に見たかった。もっと早く出会えていれば…」
けびんの一言で、途端に顔をほころばせて、機嫌を直すにこらいを見たルカは、何か珍しいものを見ているような顔つきになりました。今度はルカが、いきいきと楽しそうに語りあう、にこらいとけびんを、かわるがわる見て、感慨深い顔になりました。本当に昨日からのにこらいは、今までにない珍しい様子ばかり見せてくれます。
にこらいとけびんが、ほぼ同時に、どうしたのかしらと、黙りこくってしまったルカを見やりました。二人のやや心配そうな目線に応えるように、ルカがしみじみと話しました。
「いや、すみません。お二人はとても仲良しなのですね。けびん様、どうかこれからも、にこらい様の良き友であってくださいませ。」
「はい!もちろんです、ルカ様!僕のことも、よろしくお願いします!」けびんは、元気よく答えました。
「そうだ、けびん、食事にしよう。朝食を摂ったきりだろう。」
「…うん、そういわれてみればお腹が空いたよ。…あの、奉納舞はまだだよね、日の入まではまだかなりありそうだ。」
けびんは窓の外を見ながらそっとたずねるように言いました。
「けびん、君は、急な病気で、周りに感染の恐れもあるから、今日の奉納舞を辞退したことになっている。僕も感染したので、列席しないことになっている。…だから見学もできない。もっとも、どちらにせよ、今ベッドから出るなんて論外だがね。ルディ達の見舞いも断っている。うつっても構わないという彼らをなだめるのは大変だったそうだが。」
「ルディ達が…。うん…わかっている。ありがとう、にこらい。」
「あ。あのお、けびん様。にこらい様のかわりに、にこらい様のご兄弟のミハイル様が出席されます。私もミハイル様にお供いたします。後程、祭礼の様子をご報告いたしますね。」
とルカは、けびんをいたわるように言いました。驚いたのはにこらいでした。
「ミハイルが来ているのですか?主賓として参列するために?」
「はい。お兄様とお父様が大変なのだから、頑張りますと、仰って。もうすぐ、森に到着することでしょう。私は一足先に参りましたが。」
「引っ込み思案のはずのミハイルが…。ではビクトルは来ていないのですね。」
「それが、ユリウス様もはじめはビクトル様にとお考えになっていたのですが、ご友人方とどこかに遠出をされているとかで、お戻りいただけませんでしたので、ミハイル様が。」
「またですか。ビクトルにも困ったものだ。」
それまで黙って聞いていたけびんでしたが、とうとう我慢できなくなったのか、口を挟みました。
「にこらい、そういえば、にこらいってお兄さんだったんだよね。」
「え?ああ、次弟がビクトル、末弟がミハイル、男3人の兄弟で、僕が一番上だ。」
「うわ…3人…いいなあ。ミハイル様か…。ね!僕にも紹介して、にこらい。僕友達になれるかな?」
「え?紹介?」
何故かにこらいは、不意を突かれたように、黙ってしまいました。ルカが急いで続けました。
「けびん様、もちろんですとも!後程こちらにお連れします。ミハイル様もきっとけびん様にお会いしたいと思っておられるはずです。そうですね、にこらい様!」
「…ああ、いや、しかし、ミハイルは人見知りするから…。」
「にこらいの兄弟…。弟か…いいなあ。にこらいの弟さんだもの。僕だってお友達になりたいよ。」
「けびん…。」
けびんには、兄弟はおろか、両親さえも既にないことに、にこらいは思い至りました。
「ルカ殿、祭礼が終わったら、ミハイルもこの屋敷に滞在するはずですから、ミハイルを連れてこの部屋に来てください。ただし、こっそりと。今朝はけびんを見舞いたいという皆を断ったばかりですから、あまり知られない方がいいでしょう。」
「そうでしたね。お二人は感染症で他の方とお会いしないんでしたね!」
何故かうきうきと楽しそうなルカを後目に、にこらいは、けびんの食事の用意をしてもらおうと、ヴァレリーを呼びました。にこらいは、ミハイルを、ちょっとだけでしたが邪魔者扱いしてしまっていた、自分の気持ちに気付き、うしろめたい思いを感じていました。



(つづく・・・)

この物語は、作者の想像による創作物です。実在の人物とは、一切関係はございません。