そぴあのブログ -16ページ目

そぴあのブログ

今はカードキャプターさくらにハマり中です。
もちろんケヴィン・レイノルズ選手とニコライ・ホジャイノフ氏が好きです。
レイノルズ選手は引退されましたが、ホジャイノフ氏についての考察や感想も続けます。

祭壇の横にしつらえられた、主賓席に、長老とともに、天界からの来賓が現れました。まず、ミハイルが長老に促され、一歩前に進み出ました。後ろにルカも控えています。森のエルフ達の歓声に、ミハイルがにこやかに手を振って応えています。傍らには、ピーターも立っていました。しかし、フランツの姿はありませんでした。
「あれ、ちっちゃいにこらい様…じゃないね。いやむしろ、あんまり似てないかな。御弟君のミハイル様だったっけ。」
「そうだね。髪もあんまりくるくるしていないし。」クラウド、エドモンドがちょっと爪先立ちになって、祭壇の方を見ました。
「にこらい様、大丈夫かな。いや、ルディの考えが正しければ、にこらい様は病気ではないはずだけど。でも、巻き添えで怪我をしたという可能性はないかな。それで、やむなく欠席とか。ルディ、どう思う?」
リチャードが話を戻すようにルディに問いました。
「僕の考えでは、けびんを傷つけたものは、にこらい様のことは、絶対に傷つけたりしないはずだ。その人にとって、次期天使長のにこらい様は、一番に崇め、尊重すべき最も重要な方だから。」
リチャードは、少し声を落としてたずねました。
「重要、だって? にこらい様が? ルディ。それって、まさか…次期族長のことなのか?」
まわりを見てから、ルディも先ほどよりも声をひそめて、答えました。
「実はね、昨日、屋敷に向かう馬車の中で、僕は、けびん自身から、自分が森を守るのだという決意を聞いた。けびんが族長になるということだと思う。」
「けびんが?やった、けびんがとうとう決心してくれたんだね!」
子ども達が一斉に歓声をあげました。ルディも、友たちの反応を見て、満足そうに言葉を切りました。今や周囲も騒いでいるので、子ども達の話に耳を傾けるものはいないようでした。
「よかった。さすが、僕達のけびんだ。おっと、みんな騒ぎ過ぎたらだめだ。静かにね。ルディの話を聞こう。さ、続けてくれ。」
リチャードがまとめます。
「僕も、けびんの言葉を聞いて、嬉しかった。でも、もう一人の候補、ピーターの方はどうだろう。ピーターは、けびんと違って族長候補であることを強く意識している。それは、きっとピーターのお父上の影響だろうと思う。フランツ様は、野心のあるお方だ。けびんに何かあったら、得をするのは、ピーターの陣営だ。昨日、廟に来られた時も、けびんは、あの通り喜んでいたけど、僕の目にはとても好意的に激励に来たように見えなかった。いよいよ、族長はけびんに決まりそうだとなったら。…昨夜に、恐らく起こったことに、フランツ様が関係しているんじゃないか。けれどそうなれば、森を揺るがす大問題だ。余程確かな証拠があって、候補問題が片付くまでは、公表するわけにいかないんじゃないだろうか。」
「なるほど…だから、隠していると…。」男の子たちが、得心したというようにお互い顔を見合わせました。
「そんなの、そんなの、けびんがかわいそう過ぎるわよ!」
その時、キティが悲鳴のような声をげました。目には涙さえ浮かんでいます。
「だって、昨日のけびんを、皆も見たでしょう? フランツ様の言葉に、あんなに、あんなに、けびん喜んでいたのに…けびんの伯父様なのに! 今までだって、けびんの舞、誰よりも素敵だったのにまだ早いって言われ続けて、今日の舞台を、けびんは何年も待っていたのよ? やっと選ばれて、それからは毎日、あんなに一所懸命練習して。練習でくたくたのはずなのに、勉強も一つも手を抜かずに、どの学課も首席のまま。それでも相変わらず、こりすや、こぐまの面倒まで見て。今日は、けびんの長年の夢がかなう、最高の日だったはずなのよ! 私たちのけびんの、最高の笑顔が見られるはずの日だったのよ! それなのに!」
キティの目に浮かんでいた涙はみるみる大きな粒になり、もはやキティは泣き出していました。女の子たちと何人かの男の子たちも、うなずきながら、涙を流していました。
ルディも目をしばたかせながら、御座の方に顔を向けました。かがり火が囲むように焚かれ、白い御坐がほんのりと朱色に染め上げられています。最後の陽が落ちようとしています。
銅鑼が打ち鳴らされ、いよいよ楽の音が響き出しました。それぞれ大きさの違う弦が、いっせいに鳴り出し、引き継ぐようにたて笛の音が、やわらかく憂いに満ちた旋律を紡ぎました。御坐の中央では、舞手が音楽に合わせて、舞います。軽やかに右に左に。一本の脚で立つと、もう片方の脚を交差させながら、その場で回りました。金属の長い管を巻いた大きな笛が、力強く吹き鳴らされます。舞手は、跳躍しながら、御坐をぐるりと一周し、御坐の中央に戻りました。片足を前に残りの足を後ろにして、背筋をまっすぐに伸ばすと、沈み込む様に膝を曲げました。そのまま、同じ場所で高く跳躍し、空中で両手両足をそれぞれ左右に開き、また同じ場所に今度は足を交差させて着地します。手と足が、その先まで、なめらかに動き、空を切ります。笛の音が消えると、きらめく階段を駆け上がるように竪琴があらわれました。その音色に誘われるように、また舞手は御坐をくるくると回りはじめました。
「さすがは、ハロルド様ね。代役とは思えない、去年までの貫録そのままだわ…ちょっと衣装に違和感あるけど…。」とアンという子です。
「けびんが着るはずだった衣装だものね。」と、また、涙ぐみながら子ども達も舞に見入っていました。
ルディは、御坐をじっと見ていた目線をはずし、立ち上がると、友たちを見回しました。
「舞の途中だけど、僕は行くよ。」
「行くって、どこ…あ…お屋敷だね。」
たずねるリチャードに、ルディがうなずきました。
「けびんにどうしても会いたいんだ。会って…無事を確かめたい。」
他のこども達もお互いに見交わすと、次々に立ち上がりました。
「まったく、ルディも水臭いなあ。僕達がここでのんびり待っているとでも思った?みんなで行こう。そして今度こそ絶対にけびんに会わせてもらおう。」
クラウドが服の裾の草をはたきながら、にこりとして言いました。
「…みんな。」
「まったく、ルディばっかり、けびんに会おうとして。昨日だっていつの間にそんな大事な話をこっそりけびんとしてたのよ!当然よ、私達も行くわ!」
先ほどの涙をぬぐって、キティもすっくと立ちました。
「さあ、みんなで行きましょう!」
濃くなってきた夕闇に紛れるように、子ども達は、そっと廟の庭を出ると、屋敷に向かって駆けて行きました。


(つづく・・・)

この物語は、作者の想像による創作物です。実在の人物とは、一切関係はございません。