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そぴあのブログ

今はカードキャプターさくらにハマり中です。
もちろんケヴィン・レイノルズ選手とニコライ・ホジャイノフ氏が好きです。
レイノルズ選手は引退されましたが、ホジャイノフ氏についての考察や感想も続けます。

けびんは遅い昼食を摂り終わるとそれが合図になったかのように、また眠ってしまいました。ミハイル到着の知らせに、ルカも退出し、にこらいは一人でけびんの部屋に残り、机に向かうと、父への報告の文書を作成しようとペンをとりました。けびんは、よく眠っているようです。
その時、扉が叩かれました。返答しましたが、入室する気配がありません。そろそろ医師が来るころでしたので、にこらいは、すっと立ち上がり、自ら扉を開けました。
扉の前には、フランツその人が、一人で立っていました。屋敷のものは誰もついていないようです。
「にこらい様。我が甥、けびんの加減はいかがですか。突然の病とうかがい、とり急ぎ、見舞いに参上いたしました。にこらい様もご病気とのことでしたが…。」
「これ…は、…フランツ殿。わざわざご足労いただき、ありがとうございます。私は感染したといっても、たいしたことは、ありません。…大事をとるように言われ、本日の参列は見合わせましたが。屋敷の皆様が、祭礼のためにあわただしくされていますので、ちょうどよいと、私がけびんの看病を引き受けているのですよ。けびんの…病状はあまりよくありませんでしたが、今は…落ち着いて…寝ています。もうじき、医師が診察に見えます。せっかくお越しいただきましたが、今日のところはお引き取りください。既に使いを出しました通り、お屋敷にお邪魔するのは、けびんが全快してから、またの機会にさせていただきます。もちろん、けびんには、…見舞いくださったことを私から伝えます。」
今、にこらいは、激しく動揺していました。身体の奥から、沸き起こる、強い怒り、焼けつくような、粗暴な衝動と、格闘していました。けびんをこんな目に遭わせたその当の人物が、目の前に、立っているのです。どうして平静でいられるでしょうか。にこらいは奥歯をかみしめ、必死にこらえました。今にこらいが感情のままに、けびんが蒙った痛みをフランツに与えても、何もならないどころか、問題の種を増やすだけです。何よりけびんの気持ちを無視することになってしまうのです。そんなことはできません。にこらいは、息をつきました。何か感づかれはしなかったかと、フランツを窺うように見ましたが、フランツの表情はどこかうつろで、感情めいた色も、一昨夜の、やや狡猾そうな笑みもまったく見られませんでした。それにしても、フランツは何故、結界を超え、やすやすと屋敷の中に入ってきたのでしょうか。自分がいるので扉の前の見張りはもう不要、と屋敷のものに伝えてはいたものの、来客があるのに、誰も気付かず、一人で入らせるとは、どうしたことでしょうか。
「そうですか。けびんは…無事…なのですね。それは、よかった。そうですか、今は良く寝ているのですね。…奉納舞は、残念でしたな。けびんは…あの子のことですから、何より本人がとても残念がっておるでしょうな。…かわいそうなことをした…。」
にこらいは、聞き違いをしているのではないか、あるいは、自分は森の言葉を間違って覚えているのではないかとすら、考えました。今のフランツの言葉は、まるで、自分のしたことを反省し、けびんに謝罪しようとしているように聞こえたからです。何か他に、意図があってのことなのでしょうか、それとも、本当にけびんに謝罪しようとしているのでしょうか。しかし――。
「…無事でよかったとは…どういうことですか?フランツ殿。落ち着いてはいますが、けびんの…病状はあまりよくないのです。まだまだ安静が必要です。それに、…病はあなたのせいでは…ないでしょう。」
「いや、ああ、そうでしたな…そうでした、けびんの病状は重いのですな。ですが、今は落ち着いて寝ているのですね?」
「はい。峠は越しました。安静にし、ゆっくりと養生すれば、快方に向かう事でしょう。」
「そうですか。…よかった。…一目なりと会わせてはいただけませんか。」
「今は、どうかご遠慮願います。せっかく落ち着いて寝ているところなのですから。」
フランツの懇願するようなその様子は、心からけびんを心配しているようにしか見えませんでした。もし、本当にそうであるなら、一体これはどういうことなのでしょうか。にこらいは、怒りと疑問で、混乱していました。
ちょうどその時、ヴァレリーが、廊下をほとんど走りながら、やってきました。
「フランツ様、お一人でいらしたのですか? 申し訳ございません。誰も案内しなかったのでしょうか。どうかこのような時は私を呼びつけてくださるように願います。」
「これは失礼いたした。幼いころの癖が未だ、抜けぬようじゃ。裏の通用口に、園丁のトムがいたものだから、扉を開けてもらい勝手に入らせてもろうた。ヴァレリーすまなかったな。」
「ヴァレリー殿、フランツ殿は帰られるそうです。お送りしてください。」
「かしこまりました。さあ、フランツ様こちらへ。」
フランツは特に逆らわず、にこらいに挨拶すると、ヴァレリーに追い立てられるように送られ、今度は玄関の方に向かいました。にこらいは、フランツが去るのを確認すると、扉を閉めて、慌ててけびんの側に駆け寄りました。けびんは変わらず、安らかな寝息をたてて眠っていました。にこらいは、そこで、大きく息をつきました。少し目の前がくらくらしました。
「けびん、君の伯父上は、本当に君の言う通り、本気で君を傷つけるつもりではなかったのだろうか。…けびん、君には全てが、見えていたというのかい?」
にこらいは、けびんに話かけるともなく、小声でつぶやきました。今の伯父の様子を見たら、けびんは安心することでしょう。けれども、危険な武器を持つ人間を召喚してまでけびんを襲わせたのも事実です。結界を簡単に通り抜けたのは、少なくとも今のフランツは、けびんを心配する、けびんの伯父でしかなかったからです。フランツはこのまま、何もせず、大人しく引き下がってくれるのでしょうか。



(つづく・・・)

この物語は、作者の想像による創作物です。実在の人物とは、一切関係はございません。
11/16日 くわど森のけびんくん 
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