■はじめに――――――
本記事は、貴志祐介氏原作「悪の教典」(文春文庫/上下巻の小説、講談社/全9巻刊行の漫画版、作画は烏山英司氏)の二次創作小説となります。
閲覧に至っての注意点等は下記を。
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摩羅伽店内は、モーニング利用の来客も捌け始め、まばらになりつつあった。
その中にあって、怜花たち学生に混じって談笑しているかのように映る凛太朗の姿は、かなり異質にも見えるが、平日でもなし、特にいかがわしい雰囲気を醸している訳でもないため、周囲の客も意に介さず過ごしていた。
誰も今から、とある犯罪者の凶行を暴くための会合が催されることになるなど、思いもよらないだろう。
「そっか。三人とも二年生なんだ。来年からは受験だし、今のうちに楽しまないとね。進路なんかは決めてあるの?」
「いや、わたしはなんとなく、しか⋯⋯。圭介は京大志望じゃなかったっけ?」
「んー? まだ決まった訳じゃねぇよ。あくまで候補の一つ、ってだけ。雄一郎はどうすんだよ?」
「いや~、俺の今の成績だと中堅私大かなあ。もうちょい頑張って国立目指したいけどさ」
「ハハハ。まあ、まだまだ時間はあるんだから。ゆっくり考えて決めればいいよ。⋯⋯さて、と。この場では、そうも言ってられないね。そろそろ、本題に入ろうか」
凛太朗は潤滑油的な雑談を切り上げ、バッグからいくつかの書類を取り出すと、テーブルの上に置いた。
昨晩、彼が圭介に頼んで送ってもらった資料のプリントアウトである。
「ありがとね、早水くん。しかし、頼んでたもの以外にもこんなに情報を送ってくれて。おかげで昨晩中に構想を練り直すことが出来て、助かった」
「いやまあ、それは別に。気になることがあればなんでも、みたいなことも書いてあったからさ」
そう述べる圭介に一礼した後、凛太朗は、そわそわとした面持ちで座している怜花と雄一郎に鋭く言い放つ。
「俺は、昨今、君たちの学校で起きている不可解な事件にはすべて、片桐さんと夏越くんの担任教師である、『蓮実聖司』が関わっていると考えている。今から話すことは、その認識を前提に置いた上で、事件のうちのある一つの真相を解明することにより、蓮実を逮捕に追い込もうという、その計画についてだ。ただ、それを実行に移すには俺一人だけでは不可能で、どうしても学校関係者、それも、生徒の立場にある人間の協力が不可欠になる。そこで、早水くん含め、二人にも是非、力を貸してほしい。⋯⋯簡単に言えば、こういうことだよ」
双方とも、しばし呆然としていたが、怜花が狼狽したように答える。
「ちょっ、ちょっと待ってください! いきなりそんな⋯⋯。いくらなんでも、話が大仰すぎて⋯⋯」
「そうですよ! そりゃ、俺も怜花や圭介と同じで、蓮実のことは少し疑ってますけど。第一、こういうのって警察の仕事なんじゃ⋯⋯」
雄一郎もどぎまぎとしながら、言う。
「いや、今の状態だと方針が合わなさすぎて、徒に時間が過ぎていくだけだ。まあ、最終的には警察の手も借りることにはなるんだけどね。いずれにせよ、火急的速やかに動かないともう、引き返し不能点を過ぎてしまうところまで来ている」
口調こそ穏やかではあるが、真剣なまなざしで力説する凛太朗の姿からは、ことの重大性を何としても伝えてやろう、という強い誠実さが溢れていた。
「⋯⋯どうよ? ノる、ノらないはひとまず置いといて、さ。話だけでも聞いとくのはアリじゃね?」
圭介が後頭部を掌で擦りながら、二人に言う。
その様子を見ながら、怜花と雄一郎は互いに目を合わせると、静かに首を縦に振った。
凛太朗も会釈でそれに応じると、テーブルの上にある資料を何枚か見繕い、静かに話し始めた。
まず、今回蓮実の関与が疑わしい案件として、
・真田教諭の酒気帯び運転及び人身事故
・清田梨奈宅の火災事件
・釣井教諭の電車内での首吊り自殺
以上が再三上がってはいるが、凛太朗が圭介から入手した資料でも特に目を引かれた、というある一件が追加された。
それが、
・蓼沼将大の退学騒動
だった。
連携を受けたのはあくまで表面的な情報であったが、唐突に湧き上がったという、一人の生徒に対しての『ネットいじめ』、それもその生徒の担任が生徒指導部所属の、他ならぬ蓮実本人であったことに、謀の臭いを感じたようだ。
『計画』の概要は以下のようなものだった。
まず、真田教諭の運転事故に関して、校内周辺に残存している可能性が高い、とある物証を奪取する。
それを元に、下鶴刑事に蓮実に対する取り調べの敢行を依頼、自白を引き出す。
その後間髪入れずに、蓼沼に対して行われていたというネット掲示板への誹謗中傷書き込みに対して調査を要請、ことの真相を明らかにする。
清田家火災の件、釣井教諭自殺の件は現時点では脇に置き、以後の警察の動向を注視することとする。
大まかな流れを理解した怜花と雄一郎は、一応は話に頷く。
「はい、は~い! 志野センセー! ちょっと質問いいですか~?」
そんな中、圭介がまるで、授業中の生徒のように手を挙げる。
「ハイ、早水くん。何かな?」
凛太朗がニッコリと笑いながら発言を促す。
「事件の真相を明らかにして蓮実を追い込む、のは分かったけど、どうしてこの二つなんだ? そりゃ、真田の件も蓼沼の件も重要ではあるけどさ。残り二つは放火、かたや殺人だぜ? 蓮実の本性を暴いて、本格的に学校から追放するんだったら、どう考えても清田の件と釣井の件⋯⋯それこそ**高校自殺の件、とかさ。そっちの解明に注力した方がいいんじゃねぇの?」
カジュアルな語気だが、いかにも剣呑な発言内容に怜花は冷や汗をかく。
ただ、この場ではもはや、蓮実教諭=犯罪者という図式で固まってしまっているため、雄一郎とともに言われてみれば、そうだ、といった表情を見せる。
「いい質問だね。Good Questi⋯⋯! うん。不謹慎だからやめておこうか。確かに、清田さん宅火災の件と、釣井先生殺害の件を暴く方が、量刑的にも社会に与える衝撃も大きい。ただ、今回確実に蓮実逮捕を完遂するには、その二つ――及び**高校自殺の件――よりも、真田先生の件と、蓼沼くんの件にアプローチした方が効果的なんだよ」
三人とも、何とも腑に落ちない、といった顔をしている。
凛太朗は生徒への個別レッスンを行うかのように、自説の根拠の表明を始めた。
第一に『挙証可能性』について。
最初に俎上に上げた三つの事件のうち、真田教諭の運転事故に着目した理由として、突発的であることが透けて見える事件概要に加えて、唯一学園内で行われた犯行であるという点が挙げられた。
清田家の火災については、事件の規模を考えるに、周到な画策と準備に基づいたものであると断定でき、かつ早朝の、人目も皆無に等しい時間帯に発生したということもあり、蓮実の犯行を裏付ける物証を挙げるのは、かなり厳しいだろう。
釣井教諭の電車内における殺害についても、事前の計画性については乏しいと見做せるものの、これまた校外の、ほぼ目撃者ゼロの状況下で速やかに行われたであろうため、立証は難しい。
**高校自殺の件については言わずもがな。あれだけ本職の人員が粘り腰を見せたにも関わらず、解明を阻まれているのであれば、今のところは取りつく島がなし、と言う外にない。
そして、第二の観点として強調されたのが『事後効用性』について、だった。
「教職にある身で、こんなことは言いたくないんだけど⋯⋯」
凛太朗は前置きをした上で、説明を続ける。
「貰った資料から判断するに、釣井先生は、かなりの悪評判の持ち主だったみたいだね? 娘さんのことでしょっちゅう学校にクレームを入れていた、という清田さんも然り。事実、釣井先生自死の報があった際も、彼自体への先生方、生徒さんたちの惜念は希薄だったようだし、清田梨奈さんにしても、寧ろお父さんが亡くなってからの方が性格が明るく社交的になった、とあるから、こと『人望』というポイントで見ると、被害者二人とも相当な問題を抱えていたんだろう。無論、殺人による『問題の排除』など、言語道断だ。だが、もしこの二つの事件について蓮実の凶行が顕わになったとしても、深層心理において、奴に同情心を抱いたままの層は一定以上存在し続ける可能性がある。それに、人間心理の話で加えると、起こした事態が重篤であるほど、却って人は、犯人に対し擁護の視点を持ちやすくなることもあるんだ」
三人とも、暫し凛太朗の状況分析に聞き入っていた。
圭介はいつの間にか、顎に手を当てて深く考え込むような姿勢になっている。
「その点、真田先生は違うようだ。学園内ではもの凄く慕われていた、というのが分かるし、蓮実がなぜ彼を排除する方向に舵を切ったのかは不明だが、もしこの件の犯行を明るみに出されたら、言い分には相当窮するはず。いかに蓮実の人望が絶大であったとしても、今まで築いてきた評判の凋落は避けられないだろう。同僚の先生――周囲の評価は芳しくないものの――を轢き逃げした経緯もある上、教頭先生の車まで大破させてる訳だからね。教員、生徒双方からの誹りは、必至だ。それから⋯⋯蓼沼くんの話に移ると、色々と粗暴な子であることに疑いは容れないけど、情報の限りでは、数は少ないまでも、彼の不在を残念がっている子たちもいるんじゃないのかな?」
少し前まで蓼沼のクラスメートであった怜花、雄一郎が答える。
「はい⋯⋯。クラスの大半から浮いてはいましたけど、高橋さん、芹沢さん、っていう同じクラスの女の子とは仲が良くて。特に、高橋さんは蓼沼くんのこと、本当に残念がってました」
怜花が神妙そうに語ると、雄一郎も証言する。
「男子でも、泉っていう蓼沼と一緒にバンドやってる奴とは、すっごい親しそうにしてました。今、怜花が言った芹沢って子もバンド仲間らしくて。後、それとは別にグッチ⋯⋯山口っていう、リーダー格の男子がいて。そいつは蓼沼と掲示板の書き込みの件で揉めて殴り合いになってたし、表面的にはいがみ合ってるように見えるんですけど、顔を合わせてない時は、全然悪口なんかも言ってなさそうだし。寧ろお互い内心では認め合ってるんじゃないかな、みたいな⋯⋯」
凛太朗は、やはり、といった表情で頷く。
「もし彼が、全く手が付けられない、問題行動を起こしているだけの単なる悪童止まりだったら、排撃するに当たって、こんな回りくどい手法は使わないはずだ。小細工なしに、学級救済、という名目で皆の前で彼の非行を糾弾した方が自身の影響力向上に繋がるからね。それがこうした、影でこそこそとしたある種の『お膳立て』が必要だったということは、彼もまた、クラスに自分の居場所はきちんとある、一人の生徒だったということ。そんな可愛い自らの教え子に、ネット掲示板で、それも、クラスメートの仕業を装って誹謗中傷をしていた担任教師⋯⋯。この構図を白日に曝されたときの、蓮実への名声失墜効果には、無視できないものがある」
怜花は、淡々と、しかし理路整然と『レッスン』を展開する凛太朗の、円く、深遠な色をした瞳を見ていた。
何だろう? この感覚は以前にも味わったことがある。
どこか、心地よさも覚えるような畏怖の感情。幼いころの、名状し難いほどやわらかな記憶。
全面的に、とはいかないが、次第に目の前のこの人物に信頼を寄せ始めている兆候を彼女は、はっきりと感じ始めていた。
「と、まあ、こんなところだ。早水くん、納得はいったかな?」
圭介はうぃ、と短く返事をし脱帽する。
「ああ、ここまで論理的に説明されたんじゃあ、な。よく分かったよ。⋯⋯ん? だけど、蓼沼の件よりも何で真田の件を先に⋯⋯あっ、そういうことか」
「そういうこと、ってどういうことだよ、圭介?」
雄一郎が思わず尋ねる。
「要は、スピード勝負ってこった。蓼沼の誹謗中傷の件は、警察に相談したとしても、民事要素が強くて捜査速度がニブいんだよ。大事とはいえ、ネットでの誹謗中傷への訴え、なんざザラだし、取り合う真剣味も薄いだろうな。それなら、まず真田の件、歴とした刑事事件で先に動いてもらって蓮実を御用にした後に、警察に進言した方が、ことを運ぶにゃ段違いにスムーズだ。⋯⋯と、まあ、こんなところだろ? 『凛さん』?」
若干得意気に、しかも口調を真似られた挙句、呼称まで変えて自らに語りかけてくる圭介に、凛太朗もチャーミングに応じる。
「その通り。早水くん! Excelle⋯⋯!! またまた不謹慎だね。やめよう。付言すると、インターネットのアクセスログは、三ヶ月もすればサーバーから削除されてしまうからね。騒動から一ヶ月とちょっとは経っているから、のんびりとは構えていられない。今が好機、ということだ」
凛太朗は資料の中から、
・晨光学院町田高校の見取り図
・各クラス時間割表
・教員も含めた行事予定表
以上を並べ、これまでとは違うトーンで話を切り出す。
「これから、君たちへの具体的な協力内容を伝えることにする。先ほど早水くんが言ったように、聞いた上でやるか、やらないか、は各々の判断に委ねるよ。その前に、今の段階で『聞きたくもない』というのであれば、やめておく。お茶代は俺が出しておくから、存分に歓談を楽しんで帰ってもらって構わない。もちろん、それによって君たちを責める筋合いなんて、俺には無いからね」
三人の回答は一緒だった。
頬杖をついて、含み笑いをしている圭介。
全員の様子を見比べ、大きく息をついた後、居を正した雄一郎。
胸の前で強く手を握り締めた怜花が代表となって、彼に返答する。
「⋯⋯聞かせてください、志野先生」
凛太朗による、本日最大の『メイン・レッスン』が開始された。
時間にして、凡そ三十分ほどだっただろうか。
凛太朗は手に持ったペンをくるりと回し、話し終えるとともに、それをテーブルに置いた。
「どうだろう? 皆、大丈夫かい?」
武者震いだろうか。圭介の唇は小刻みに震えていた。
「⋯⋯あんた、すげぇな⋯⋯。これ、イケるぜ⋯⋯」
怜花、雄一郎の二人も、声を出さずに興奮しているかのようだった。
「まあ、とはいえ早水くんの事故についての見解あっての立案だから。それに、高確率で証拠を押さえられる目算はあれど、下鶴刑事の力添えが得られるかどうか、という要素もある。君たちに及ぶリスクは出来得る限り除いてはいるが、それでもゼロではない。⋯⋯だけどもし、『蓮実の暴走』をここで食い止めたい、という思いを共有できるなら、是非とも力を貸してほしい。ひとまず、俺からは以上だよ」
怜花は、そう力強く語った凛太朗の瞳を見返し、ハッ、と気付いた。
先ほど感じた、模糊とした記憶の正体。
それは、幼いころ両親と動物園に行った際、初めて間近に見た、『ヘラジカ』という巨大な生き物と目を合わせた、そのときに抱いた胸懐だった。
一瞬、泣き出してしまいそうな恐れに駆られたが、その黒々とした瞳を眺めているうちに感じた、寂しさと優しさを一様に纏ったような独特の佇まいに魅了されていた数秒間が、頭の中でフラッシュバックしている。
この先生だったら、わたしたちのことを本当に守ってくれるのではないだろうか?
ただ純粋にそう、思った。
黙考する三人の姿を見守っていた凛太朗が、ぽつり、と言う。
「早水くんの、直感力に秀でたお友だちは、どうやら片桐さんの方らしいね。⋯⋯答えは出たかい?」
「⋯⋯」
怜花は自らの警報装置の様子を確かめてみる。幾許かの不安は残っていた。当然だ。自分たちがこれから始めようとしていることは、ある一人の人生を破綻させるのに充分な威力を持っているのだから。
けれど⋯⋯。
胸の裡に、これまで『アラート』の対象になってきた人物の姿が、赤いランプの明滅とともに浮かんでくる。
園田教諭。
――ピピーッ、ピーッ。
柴原教諭。
――ピーッ、ピーッ、ピーッ。
次は、えっと⋯⋯釣――ッ!?
――ビビーッ!! ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!!
連想に割り込むようにして突如、蓮実の像が現れるとともに、けたたましい警報音が鳴り響く。
その直後、青いランプの仄かな点滅。
浮かんでいるのは⋯⋯。
今、動かないと取り返しがつかないことになる。――皆が、危ない。
怜花は、意を決した。
「やります。⋯⋯いえ、やらせてください!」
内気な彼女から発せられたとは思えないほど、力強い返答だった。
「っしゃ!! 雄一郎、お前はどうよ?」
圭介は自身の膝を一発叩き、未返答でいるもう一人の親友に白い歯を見せてくる。
雄一郎は苦笑しながら、肩をすとん、と落として目配せをする。
「ま、不安は不安だけどよ。お前ら放ったらかして一抜けなんてダサすぎだろ。やるだけやってみるよ」
三人の意向を得た凛太朗は目尻を緩ませる。
「君たちの勇気に感謝するよ。ただ、決して無茶はしないように。いざというときは自分たちの安全を最優先に考えて動いてくれ」
その言葉に怜花、圭介、雄一郎ともに大きく頷く。
以後、計画にあたっての決行日の選定や、細かいディテールの見直しなど、白熱した議論が成され、一同が摩羅伽を後にした際はもう、昼下がりになろうかという時間帯だった。
「三人とも、今日はありがとう。何かあったらすぐに連絡してくれ」
「はいよ! ま、すぐ吉報入れてやっから。楽しみに待っとけよ~!」
圭介が凛太朗にグッド・サインを送る。
「お前なあ⋯⋯遊びじゃねぇんだからさ」
「ほんとよっ。⋯⋯志野先生、その⋯⋯なんて言ったらいいか分からないですけど⋯⋯頑張ります!」
雄一郎と怜花が軽いノリの圭介に注意をした後、挨拶を交わす。
「ハハッ、難しいだろうけど、そんなに気負わないようにね。おっと、もうこんな時間か。それじゃ、俺はこれで。⋯⋯くれぐれも、気を付けてね」
そう言って、凛太朗は三人に別れを告げ、去っていった。
「よ~し、早速行こうぜ!」
圭介が、パシン、と雄一郎の肩を叩く。
「は? どこにだよ?」
「ホームセンターに決まってんだろ。まさか、ぶっつけ本番でやる訳にいかねぇからな。材料揃えて予行演習だ。お前らも付き合え」
腕を回しながら張り切る圭介の後を、雄一郎はへいへい、と生返事をしながらついていく。
「その前にどっかで昼飯にしねぇ? ん? どした、怜花?」
「あっ、⋯⋯ううん、何でもないよ」と、怜花も二人に連れ立って歩き始めた。
⋯⋯トクン。
心臓の音が高鳴っている。
今更になって、怖じ気づいた訳でもなく、いつも感じるような悪寒でもなかった。
『計画』説明の中で、凛太朗が自分たちに告げてきた、とある言葉が頭を過ったからだった。
蓮実との間に、過去何があったのかまでは語ってはくれなかったが、彼は、こう言った。
「奴は⋯⋯蓮実は、自分の利益のためなら殺人さえも辞さない。他人との共感性が一切抜け落ちている合理主義者。――反社会性人格障害なんだよ」
