最近はテレビよりラジオを聴いているゴンチです真顔

 

3/15 TBSラジオ
問わず語りの神田伯山の中で、ワタシに響いた言葉があったので記す。

*未聴の方はネタバレになりますので読まないように




神田伯山が話し始める。


92歳の落語家 三遊亭圓輔が3/12の浅草演芸ホールの夜の部の主任を務める日だった。
「この日は雨が降っていた」と話す辺りは、講談師らしく状況説明が非常に上手い。

この日、圓輔が高座で絶句した。


伯山は、悪い話ではなくて良い話だと思うので話すという。

お茶そして、過去の絶句にまつわるエピソードが話される


■三代目 柳家小さん 100年前の落語家
晩年に噺がまわるようになる。

 

ワタシがwebで調べたら、小さんは認知症だとあった。
絶句とはセリフを忘れてしまったりすること、噺がまわるというのは、「同じ噺を繰り返してしまう」「別の噺が混ざってしまう」ということらしい。

■八代目 桂文楽
「大仏餅」の中の「神谷幸右衛門」という名前が出てこなくて、客に「勉強し直して参ります」と頭を下げ、口座を下りた。

文楽は小さんのようになってしまったと落ち込み、その年(伯山は一年以上生きられたという)に死去された。

これは、有名な話でワタシも知っていた。

寄席では名人が絶句することはよくあることだと伯山は続ける。

 

お茶3/12浅草演芸ホール

圓輔が高座に上がり「野ざらし」を話し始めるが、途中で「辰巳の辻占」が混じってくる。

 

この絶句が起きた様子は、伯山が細かいディティールを散りばめて話しています。現場の雰囲気が伝わってきます。ぜひ聴いてみてください。

同じ噺を繰り返すようになり、客も噺が回っていることに気付いてくる。
楽屋では、どう対処したら良いか分からず、戸惑いが広がる。

五代目 柳家小さんが絶句した時には、弟子の十代目 柳家小三治が高座に上がり師匠に「師匠、もう帰りましょう」と声を掛け幕引きをした。

高座では圓輔が絶句中。
楽屋では圓輔を誰が止めるのかと騒動になったという。
それは、誰も「経験が無かった」からだ。

「絶句した師匠を高座から降ろす」という現場を、誰も経験したことがない。

高座では圓輔が25分の持ち時間を大幅に超えて50分になっていた。

その時、ついに一玄亭米多朗が高座の圓輔に「師匠!申し訳ございません!お時間が!」と伝えたという。
圓輔は「ああ、そうかい」といって幕引きとなった。

お茶ここからが、ワタシに響いた言葉が話されるシーケンスです。

楽屋には中堅の落語家や十数名の前座が沢山おり、圓輔に「お疲れさまでした!」とあいさつをする。

若者の目の前には、絶句し醜態をさらした老落語家がいる。

 

その様子は若者にとっては良い経験だと伯山は言う。

伯山「これは、自分たちが行く道。若者にしてみたら自分の未来の先の高座だ。」「『勉強させていただきます』とはまさにその通り」

 

老落語家の絶句は、勉強なのだと言う。

お茶

 

若者が取り巻く中で圓輔はゆっくりと着替え、お茶を飲み、話し始めた。

圓輔「みんな、面倒をかけたね。明日もよろしくね」

と言って、寄席を後にしたそうだ。


伯山は話す。

「勉強になるというか、落語家として全部見せる感じ。自分の弟子もその場におり、こういう姿を見て勉強になったなと、いい糧になってくれればいいなって思いましたねぇ」と。
 

 

ワタシに響いたのは「自分たちが行く道。若者にしてみたら自分の未来の先の高座(姿)」「(後輩に)こういう姿を見て勉強になったなと、いい糧になってくれればいいな」という部分です。

 

これは伯山が、先輩は老いていく様子を全部されけ出して良いし、後輩はその姿を見て得るものがあるはずだと言っているんですね。

 

お茶

 

さて、前段が長くなりました。

 

先日、久しぶりに会った照明さんに話しかけられました。彼は、ワタシより5歳以上は若いでしょう。お互い業界で30年以上は業界で働いていてその頃からの付き合いです。

 

照明「久しぶりですね。ゴンチさん、おいくつになったんですか?」

ゴンチ「〇〇歳ですよ。老眼も酷いし、体力も落ちて来たし、いつ辞めようか考えてるんですよ~(笑)

照明「いやぁ~、そんなぁ~ずっとやってくださいよ~♪ゴンチさんは俺にとって人生の先輩なんすから♪手本にしたいんすよ~♪

 

彼とは、長らくの付き合いですし達人の域の照明技術を持っています。

そんな彼が、ワタシを手本にしたいという。

急に、こんな事を言われて絶句してしまったんですね。

 

ワタシなんかを手本にしても良い事なんかないよと、心の中で思った。

きっと、彼の先輩にはロクな人がいなかったんだなと察しました。

 

照明業界の歴史では、ハッキリと「前期・中期・後期」で、技術者としての技量や人格の変化がハッキリしていました。これはまた日を改めて記したいと思います。

 

お茶

 

昨夜の伯山のラジオを聴いて、後輩から手本にしたいんですと言われたことを思い出した。

 

ワタシが圓輔という立場なんでしょうか。

 

ならば、若者に醜態をさらすべきなのだろうか。

ワタシは妙にプライドが高いので、醜態をさらすならば身を引こうとずっと思っていましたけど、今回気が変わりました。

 

醜態をさらして若者の糧になろう!

 

と、言ってもワタシの醜態を糧だと思ってもらえるかどうかは分かりませんねぇ~。

ヘタすれば、役立たずと言われオファーが無くなっておしまいというのも見えていますなぁ~。

 

生ビール


ワタシは、この回の放送を神回の一つに上げます。

圓輔の絶句の話が素晴らしいからです。

 

さらに、


30分番組の前半は、花田優一のエピソード。
後半で、寄席のエピソード。

伯山は、前半の貴乃花の部分、後半の圓輔の部分で「ガチンコ」というワードを使っています。
番組の前半と後半で、キチンと伏線をひいて回収しているあたり、構成力と言うか演出と言うか凄いですね。

 

ワタシも今回の記事で伏線を回収してみましたが、お分かりになりますでしょうか真顔

 

 

ワタシの拙いラジオ解説だったのですが、是非本編を聴いてみてください。

素晴らしい内容です。