たまには撮影の話でも記す。

撮影部長からの注意

先日、全六日くらいの番組で、二日目のロケにピンポイントで参加した。
ロケ出発前に撮影部長から注意があった。

ディレクターから「ズームをしないでくれ。寄るならカットで繋ぐのでパッと寄ってくれ」と注文があったそうだ。


ズームとは、ZOOM MEETINGではなくて(笑 ズームレンズを使用しているときにズームリングを回して画角を変える手法と機能の事です。

ズームをするなとはどういうことなのか。事情を聞いた。

何があったのか

この番組は、とあるタレントさんのしたいことをさせ、ところどころディレクターが同席しトークを行うと言った内容。
初日のロケで、タレントとディレクターのトークが感動的な内容に転んだらしく、タレントとディレクターの気持ちが高ぶってくる。カメラマン二人はそれぞれの演者を狙っている。ここぞと演者の二人にズームインしていったそうだ。
カメラマンも高ぶっているからね。
視聴者のためにも良かれと思ってズームインしますよ。

後日素材を観たディレクターが、そのズームインを気に入らないと言いだしたそうだ。
本番中は自身が出演しているからカメラワークの確認が出来なかったせいもあるでしょう。
前もってズームイン禁止とエクスキューズがあれば、カメラマンたちもワークを他の方法に変えたであろう。それがないまま撮影をしてしまったので今回のトラブルになったのでしょう。

撮影部長はズームの達人

撮影部長はその「ズームをするな」という指示が理解できないといぶかしがる。

「盛り上がったら寄るもんじゃん。ズームするなって訳の分からんこと言うんですよ」

寄るとは、ここではズームイン(被写体が大きくなる)のことです。被写体を大きくする手法は他にもトラックインなどがあります。
ちなみに、被写体が小さくなる”ズームアウト”は”引く”といいます。

私は、撮影部長がズームの達人であることを知っている。

追々ナレーションが付くことを想定して、その尺を配慮してズームのスピードを変えたりする。そのセンスたるや素晴らしい。
また、2段階ズームというテクニックを知ったのも撮影部長からだったと思う。

昨今は、ソーシャルディスタンスの意識もあり被写体とカメラの距離を取らざるを得ない。どうしてもカメラのズーム機能で画角をかえることになりますからね。

ズーム技法の意味合いの違い

ズームという技法をどういう意味を持って使用しているかの違いなのではないかと思いました。
映画とバラエティではズームの使い方が違うんですよね。

映画では、基本的にズーム技法を使用しません。何故なら観にくいからです。固定した画角をカット繋ぎで物語を紡ぐものなのです。
例外もあり、アクション映画などではズームを多用することもあります。
さらに、ズームでしか物語を語れないという場合も使用します。

”戦中。男女が事情があって離れなければならない。お互いを兵士が引き離す。いくら叫べど離れている相手には声が届かない・・・”

 

といった台本があった場合、まず女性を大きく映しておき、ズームアウトして画面に男性が入り込む。そうすると、ズームしている時間で「距離感」を表現することができます。

ズームという技法は「表現方法の一つ」なんですね。

バラエティ番組などを観ておりますと、ヒョイヒョイズームしてタレントを大写しにしたりしています。まぁこれも表現なんでしょうけどTVらしいと言えばそうなんでしょうけどね。

ズームは演出

「ズームしている時間」と先ほど書きましたが、この時間というのはズームのスピードになります。
ズームのスピードは、物語を紡ぐために重要なんですね。

先ほどの短編映画で考えますと、男女が引き離されて悲しい場面ですね。ズームを使用するカットが、場面のどの部分に使われるかでスピードが変わると思います。

男女がまさに引き離されている最中の緊迫感があるときは早いズーム。

引き離されてしまったあとの虚無感があるときは遅いズーム。

こんなに違うんですね。ズームスピード一つで表現したいことが変わってしまうんです。
もはや、ズームは演出の域の技法なんですね。

 

意識の違い

さて、件のディレクター。
おそらくですが、「ズームは演出の仕事なのでカメラマンの判断でズームしないで欲しい」というのが本音ではないだろうか。

私も同感です。

ヒョイヒョイお笑い芸人をズームで撮っちゃいけないんですよ。ボケが決まった時にヒョイっとか寄っちゃダメなんです。ヒョイッと寄っちゃうと演出になっちゃうんですね。「ここ笑いどころだよ!」とね。
じっと固定でいいのです。

とか何とかを10秒くらいで考えて、撮影部長に「まぁズームは演出ですからねぇ」と言ったら、「?」という顔をされました。

ズームの達人と私はちょっと意識が違うのですね

その日は、ズーム封印して撮影に挑みました。
なんか仕事した気がしなかった。

二段階ズーム作例

クイズ番組で三人の回答者。
番組の大詰めで、三人はほぼ横並びの成績。
若干点数の低い選手は次の問題で答えないと敗退が決まる。

現場的にはこう言った状況でした。達人はこの状況でナレーションが入ると想定して、ズームワークをしました。
まず三人を映し、すっと点数の低い選手の座る解答席のポイント表示にズームインする。
そして、選手の顔へ振り上げながらゆっくりズームインする。二段階ズームです。
1カットの中でズームスピードは一定にするというのがズームの基本ですから、思い切ったワークでしたよね。

でも、状況を画で説明できていると思いませんか?
そして、後々ついたナレーションは画に合わせたものでした。

ナレ「三人の成績はほぼ横並び。しかしBさんはこの問題を外すと、あ・と・が・な・い」

もちろん、「あ・と・が・な・い」の部分が、ゆっくり寄って行った部分にハマってます。

素晴らしいですよね。

ズームの達人も演出しているんですよね。ご自覚が無いようです(笑