グラスゴー空港に到着したと共に、すこぶる寒い風が吹く。
そして、私のトランクは、荷物ゲートから、いくら待っても出て来なかった。いきなり悪運を掴んでしまった。去年、イギリスでテロがあったこともあり、ヨーロッパの航空事情が厳しくなってるとは充分察知して行った。税関を抜ける時に、ペットボトルの飲み物は勿論、ビン、香水、化粧品や歯ブラシ粉までも没収された。(特に化粧品は厳しく、口紅からファンデーション、マスカラやアイライナーなどほぼ全部没収。同行した何人かは、本気で泣いていた・・・あいにく私は化粧品に関しては無縁でした)
日本を離れる時は、薄地のTシャツにサブリナパンツという軽装で出発したのに、香港経由、約15時間のフライトを経て、いざ空港を出ると、長袖2枚にニット、その上にウインドブレーカーを着ても縮みあがるくらいの寒さ。手荷物で、一通りの服のレパートリーを持ってて良かった。日本の11月末くらいの気候やったかな。機内泊で、足もパンパンにむくんでしまっていたが、グラスゴー時間で、朝の10時にはホテルに到着してしまっていたので、休む間もなく、街に繰り出す。
町並みは古く、建物の色はダークブラウン。質素であまり飾りっ気がなく、気取ってもない。観光地としても、熱を上げている雰囲気はない。ホテルが駅のすぐ裏だったので、迷うこともなく目的地へ行ける。
まずはグラスゴーの現代美術館へ。一通り繁華街を通り抜けて、ブティックやショップが建ち並ぶ町中に、ひときわ古い、宮殿のような建物。Gomaのどでかフラッグ。(Momaじゃないのよ)
美術館といえどもギャラリー形式、そして無料。ギャラリーといえども空間は宮殿。一階は吹き抜けの高い天井に、立体作品がドンドンドン!!配置を意識させることもなく、宮殿の中のフロアに、でっかいもん置いちゃいました的な見せ方だったけど、なんせ空間の魔力というか、壮大なスケール感が、見る私たちを、より楽しませてくれた。作品は、ヨーロッパ出身の作家が多かった。
新作も旧作もミックスされていた。二階にいくと、日本でも見られるような、美術館展示スペース。写真、絵画、ビデオアートなどの展示。そこに、3点ほど展示されていた、陶器の壺。これが私を魅了させた。日本にいても、最近は現代アートを見飽きていて、ああ、またこんな感じか、なんて見るたびにがっかりする事が多かったのだが、見落としそうな存在感のその壺は、ただ単にコラージュっぽく、シルクスクリーンでプリントがされていて、金彩と黄色の釉薬で焼かれているだけのようであった。でも、そこに、素晴らしいセンスが凝縮されていて(特に色のセンス)、見ていて楽しかったし、ノスタルジックな気分にさせてくれた。(まあ、一緒に行った友人はさほど興味を示してなかったけどね。)
お昼ご飯は、少し早めに駅近くの広場で、ベンチに腰掛けながらバーガーキングでテイクアウト。働き者の国、ジパングと違って、サラリーマンも杖をついたおじいちゃんも、のんびりと新聞など読みながら、世間話などをして、日光浴をしている。私たちもしばらく混ざって、ボーっとしながらハンバーガーにかぶりついていたが、まあ、足下を見ると、鳩に雀、カモメや鴨のような鳥たちが、わさわさと、おこぼれを狙っていた。(怖かった)
昼からは、ギャラリー巡りと、チャールズ・レニ・マッキントシュも勉学に励んだ、グラスゴー美術学校を見学する。
なだらかな坂に、ひっそりと、いくつもの学科別の校舎が並ぶ。通りを挟んで、学科棟と、実習室(共同アトリエ)に分かれていた。
実習室には、そこで制作している者以外は、入れなくしていた。マンションのように、オートロック形式だった。
外から覗くと、大きなキャンバスにペンキで絵を描きなぐってる人や、隣の制作者と、楽しそうにおしゃべりしている人たちの様子も伺えた。大学の事務所や展示室がある学科棟は、入口からもう、マッキントッシュ一色、て感じで、扉や窓枠、教室案内の看板までもが、マッキントッシュの装飾になっていて、紫や淡いピンクのガラスが埋め込まれていたり、何気ない照明がおしゃれで、マッキントッシュが日本の文化の影響を大いに受けていたっていう事実もあり、どこか懐かしい感じがして、落ち着く場所だった。
ちょうど、私たちが行った時期、グラスゴーの街は、マッキントッシュのお祭り的なフェアが開催されており、どこにいってもマッキントッシュ展だの、縁の地などの宣伝ポスターを見かけた。大学の展示室でも、マッキントッシュデザインの建築のパースなどが展示されていた。パースも、別に、特別何かが上手い、てことはない。この学校にマッキントッシュが在籍していて、それが現代に深く受け繋がれる為の刻印のように、時と共にひっそりと存在しているようだった。世界的に有名なデザイナーを送り出した学校とグラスゴーの街は、本当に質素で、ただ、そこに存在している、それだけの街なのだと思う。
美術学校の周りにも、いくつかギャラリーがあった。偏見かもしれないが、ヨーロッパの作家は、素材の組み合わせ方が、実にハイセンスだと感じた。(ミクストメディアと称する作品において)
ホテルに戻ると、トランクが届いてるではないか。よかった~、ホッとして眠りにつく。
2日目も、マッキントッシュにまつわる旅をする。バスでヒルハウスへ。100年前に個人宅として建てられた家。文句のつけようがない整備されきった庭園。海が近く、水平線が一望できる。現在は財団が管理しているそうだ。
私自身、マッキントッシュに関しての知識は薄い。有名なラダーバックチェアなんかは以前働いてた家具屋でお目にかかったこともあったけれど(複製やけどね)、家全体がまあここまで完璧にデザインされていると、逆に息がつまりそうだ。(マッキントッシュ好きにはたまらんのだろうな)部屋の間取りはもちろん、カーテンやカーペット、棚や暖炉、バスルーム、照明や時計まで、すべてにおいてマッキントッシュが炸裂していた。
ヒルハウスを見学した後は、ペイズリー博物館へ。
偶然にも、ペイズリーの柄のデザイナーさんに、色々と話を聞く機会があった。大体のペイズリーの、織物のデザインの工程は、日本で私たちが勉強してきたテキスタイルのデザインと、ほぼ同じであった。多くの布が展示されていたが、ペイズリーの柄の、大体のモチーフは、インドでは孔雀の尾、ヨーロッパでは植物を象徴している、という説もあるそうな。
しかし、博物館に記されていたペイズリーの由来については、何ともヨーロッパ優位の志向で書かれており、ちょっと疑問を感じてしまった。
その後、ウイスキー・ディスティラーを見学し、記念にウイスキー一杯とグラスをいただいた。ウイスキーは、大人の味がして美味しかった。(そのウイスキーが飲めるまでに、なんともひどい、いい意味でゆうとレトロきわまりない、ウイスキー構造過程のアトラクションを体験せねばならなかった・・・)
そして、最後は近くのエディンバラ城を観光する。
お城は個人的に大好きで、外観は、とても迫力があり、素敵だった。でも、敷地内に入ってしまうと、観光客が多すぎるのと、突風で、あんまし楽しめず、だった。
こんな感じでグラスゴーに滞在していたのだが、おおっと、旅の食事の事を書き忘れていた。
さて、イギリスのごはんがおいしくない事は、ご存じのこと、スコットランド、グラスゴーでも、衝撃の食べ物に出くわした。
ランチを、あるホテルのレストランで食べた時のこと。イギリスでは、クッタクタに煮込みすぎた野菜や、ひどい味付けのものが出てくる、と聞いていたので、相当ひどいもんがでてくるんや、と覚悟を決めていたが、普通にサラダがでて、ガーリックポテトと温野菜とどでかサーモン、味はぜんぜん無かったが、塩や胡椒をふりかけて、なんとかおいしくいただいた。な~んや、皆それなりに満たされて、まったりしていると、横目にデザートが用意されてるのが見える。パッと見は、ストロベリー&クランベリーとバニラアイスのパフェ、もしくは、上にイチゴが乗った、ヨーグルトドリンクのようなみてくれだった。おいしそ~、これは期待できる!と、皆、がっついて、ぱくっといったその瞬間・・・・。 おえ~!
し、塩味だった・・・・。正確に言うと、レモン汁の味と、生クリームをホイップする前の、なんともいえん乳くさい、乳脂肪の味。
お砂糖はひかえめどころか、全く使われていなかった。それに、ふんだんにストロベリー、クランベリー、ラズベリーなど、色んな種類のベリーさんたちが、混ぜ込まれていた。ああ、もったいない!もっとアイスクリームに混ぜるとか、普通のことすりゃいいのに~。皆、頑張って、コーヒー用のお砂糖を入れてかき混ぜてみたり、むりやり甘い、と思って食べたり、試行錯誤を重ねたが、もとが塩味なので、どうにもなるはずもなかった・・。
二度と食べたくないデザートだったわい。