CDレビュー: BiS(新生アイドル研究会) / Re:STUPiD | アイドルKSDDへの道(仮)

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心に茨を持つ山梨県民こと「やまなしくん」のブログ。基本UKロックが好きですが、最近はもっぱらオルタナティブなアイドルさん方を愛好しています。

2016年、わが国の音楽シーンに半端ない爪あとを遺した「アイドル界のアンチ・ヒーロー」こと新生アイドル研究会BiSが、まさかの復活。同年11月にリリースされた復活作『Brand-new Idol Society2』は収録曲の半数以上が既発曲だったが、本作は全曲新曲。新生BiSにとって、これが実質的な1stアルバムと言っても良いと思われる。

これこそBiS!と快哉を叫びたくなるエモーショナルなピアノ・ロック「gives」、陽気なスカパンク「Never Starting Song」など、キャッチーなメロディとパンチのあるロックサウンドを融合させるという、正調「松隈ケンタ節」を全曲で楽しむことができるが、同事務所の「もう一つのBiS」であるグループBiSHの楽曲と比べると、どこか軽やかで明るいアレンジが施されている。まるで旧BiSの1stアルバムのような、エモがグループを席巻する以前の初々しさや明るさを、そのサウンドや歌唱から感じ取ることができるのだ。

しかし、メンバー自身の手による歌詞に目を向けると、そこには若者らしく初々しい、孤独と不安が渦巻いているのを見てとることができる。「そうわたしは必要ないの この世界にいらないみたい」(「twisted grunge」)、「心のなか 閉めてるの 知らないでしょうね」(「ぎぶみあちょこれいと」)…だからBiSは(そして僕たちは)音楽に身をまかせ、「そう、舞い上がれ!!飛んで声を出せ」(「SAY YES」)と声高らかに歌うのだ。#8「ロミオの心臓」の歌詞は、こうだ。「ないものねだりが人生 そういうもんじゃない?」…その、諦念を静かに受け止めながら、そっと皆の背中を押してくれるような歌声!ミュージックビデオも制作されたこの曲は、間違いなくアルバムのハイライトとなる、感動的なナンバーだろう。

旧BiSに渦巻いていた、相次ぐメンバーの脱退・加入と破天荒な活動が生み出した熱狂とエモーションは、今のBiSには無い。そこに不満を持つファンもいることだろう。だが、あのような刹那的なインパクトを今さら繰り返したところで、いったい何になるのだろう?繰り返し書いてきたことだが、僕にとってBiSはただ「むちゃくちゃ良い曲を演るアイドルグループ」だった。美しいメロディ、充実したロックサウンド、そして孤独や不安や焦燥を抱えた僕たちに響く歌詞…それらこそが、時空を超え魅力を放つのである。そしてさらに、楽しいライブパフォーマンスを観られれば、もう最高だ。

このアルバムを一通り聴くと、何て良い曲が多いのだろう…と、改めて感じざるを得ない。そして、それこそがBiSの核心である。だから、形は違えど、間違いなくBiSは甦ったのだ。もう一度、はじめから楽しもう。