CDレビュー:Hauptharmonie(ハウプトハルモニー)『Herz uber Kopf』 | アイドルKSDDへの道(仮)

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心に茨を持つ山梨県民こと「やまなしくん」のブログ。基本UKロックが好きですが、最近はもっぱらオルタナティブなアイドルさん方を愛好しています。

識者によれば、女性アイドルの「戦国時代」はすでに終わり、現在は「多様性の時代」に入っている。かつての「可愛らしい元気なアイドルポップス」の枠に収まらない多種多様なジャンルの楽曲を披露するグループが次々と生まれ、音楽ファンにとって非常に魅力的なシーンが形成されていることは周知の事実だろう。

そんな中、「戦国時代を知らないアイドルたち」(公式サイト)ことハウプトハルモニーは、その「多様性」を一枚に凝縮するかのような驚くべきアルバムを世に放った。椎名林檎やエゴ・ラッピンのファンにもアピールしそうなリードトラック#2「Kidnapper Blues」を始めとして、ブルースロックを導入した#1、インディ・ギターポップ的な#4・#6、70年代ニューミュージックを思わせる#8、スウィングジャズ歌謡#9、がっつりスカを聴かせる#10・#13、壮大なUKロック風#12、ファンクロックに声の断片を張り付けた実験的な#16…等々、雑多なジャンルの音楽が、妥協のない完成度でズラリと並んでいる。いわゆるアイドルポップスらしい楽曲は#3と#14のみ…という「異常」ぶりである。

さらに注目すべきは、メンバー達の歌唱。「アイドルが敷居の高い曲の歌を背伸びして歌ったら、本当に背が伸びた」とでも言えばよいのだろうか…特徴ある楽曲を乗りこなし、さらに感情を吹き込んでいるといった印象。特に、ファンク歌謡曲#5「Alice in Abyss」での、ドスの利いたエモーショナルな歌唱には度肝を抜かれた。また、#6・#12は全編英語詞。アイドルの女の子たちが、豊かな表現力で、バリエーションに富んだ楽曲群それぞれにマッチした歌を歌っていることに、驚嘆せざるを得なかった。

このアルバムを通して聴けば、さながらロックフェスティバルで様々なアーティストのステージを観たような気分になれるだろう。言わば、一人フジロック状態。これを一部の地下アイドルファンだけの楽しみにしておくなんて、あまりにもったいない。フジロックや朝霧JAMへ行くようなリスナーこそ、手に取るべき作品だ。ああ、ロックフェスでハウプトハルモニーのライブを観たい。出演してくれ。てゆうか、ぜひ彼女たちを呼んでくださいフェス関係者の皆さん…。