CDレビュー:でんぱ組.inc『GO GO DEMPA』 | アイドルKSDDへの道(仮)

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心に茨を持つ山梨県民こと「やまなしくん」のブログ。基本UKロックが好きですが、最近はもっぱらオルタナティブなアイドルさん方を愛好しています。

「予定って 調和って くりっかえして 既視感満載 はい次だ!」

…1曲目「破! to the Future」、この超高速ピアノ・ロック曲で、でんぱ組.incは自らのイメージを打ち破ることを高らかに宣言する。続く「ファンファーレは僕らのために」で「大海原へさぁ出港じゃい!」と、広大なJポップと音楽の世界に飛び出した彼女たちは、4つ打ちEDM(「惑星★聖歌」)や、巨匠・村田陽一氏アレンジのスウィングジャズ(「アンサンブルは手のひらに」)さえも手にし、前へ前へと突き進む。

前作アルバム以降、頻繁に「でんでんバンド」の生演奏によるライブを繰り広げてきた、でんぱ組.inc。その勢いをそのままパッケージしたようなバンドサウンドがアルバムの主軸となっている。洗練された楽曲、そしてテクニカルな演奏は、さながら80年代のスティーリー・ダンやTOTOの如し。逆に、これまでのグループのトレードマークとなっていた「でんでんぱっしょん」のような電波ソングは、このアルバムでは封印されている。それゆえ「でんぱ組らしくない」との否定的意見が出るのも、無理からぬことではある。

しかし、「おつかれサマー!」をよく聴いてみてほしい。テレビ番組「ミュージックステーション」に水着+ステテコ衣装で出演したこの勝負曲を、サビで湘南乃風さながらにタオルを振り回すからといって「大衆に媚びた」とディスるのは早計だ。歌詞をよく聴けば分かることだが、この曲は、「リア充」を揶揄しながらも、それに憧れ、そろりと手を伸ばす…という機微を表現している。「内気なオタクが(震えながらも)外の世界に勇気をもって飛び出していく」というストーリーは、これまでも、そして現在もでんぱ組.incが体現しているストーリーではなかったか? それゆえに、ハロウィンソング「永久ゾンビーナ」やクリスマスソング「Dem Dem X'mas」といった、Jポップにありがちな「季節モノ」さえ、こなしてしまうのである。(筆者もさすがに狙いすぎかなーとは思ったが)

確かに、これまでのようなインパクトのある曲は少ないが、良質な楽曲と、メンバーの成長した歌声が、このアルバムにはつまっていて、普遍的なアイドルポップスとしての品格を備えている。これまでの「電波ソング」を敬遠していたようなリスナーこそ、手に取る価値があるだろう。そして、従来からのファンには、でんぱ組.incの変わらぬスタンスと成長を受け止めてもらいたい…そう思う。