CDレビュー:あヴぁんだんど「ピクニック at nerd park」 | アイドルKSDDへの道(仮)

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心に茨を持つ山梨県民こと「やまなしくん」のブログ。基本UKロックが好きですが、最近はもっぱらオルタナティブなアイドルさん方を愛好しています。

耳をつんざくエレキギターのフィードバック・ノイズでいきなり始まる冒頭曲「Feedback Friday」からして、このグループが他と一線を画した存在であることが分かるのではないか。

「見捨てられた(abandoned )アイドル」ことあヴぁんだんど(avandoned)は、『前田敦子はキリストを超えた』等の著書で知られる社会学者の濱野智史がプロデュースしたアイドルグループPIPの選考に漏れたメンバーによって結成されたものの、氏に「見捨てられた」ために自ら活動を始めた…という、特異な経歴を持つグループであるとのこと。

そんな彼女たちのリヴェンジは、この作品で達成されていると思える。転調を多用した、洗練されたテクノ・ポップ曲の数々そして歌唱は、音楽的な充実とアイドルポップス的「女の子感」を見事に両立させている。特に、インダストリアルテクノ風ビートにラップを乗せた「西鶴一代女」はとんでもなくカッコ良い!ので、ぜひともチェックしてほしいナンバーだ。

そしてもう一つの注目曲は、若者の間で支持を広げる話題の匿名詩人である最果タヒが作詞した「点滅ばいばい」。「見捨てられ 強くなるなんてバカみたいだね」とのサビの歌詞は、このグループの苦難の歴史を象徴するとともに、ティーンエイジャーの屈折した心理を愛を込めて代弁した、あまりに強力なパンチラインと言えるだろう。

ライブでは、すでに熱狂的なファンを多く獲得しているとのこと。2016年2月には世界的ノイズ音楽集団・非常階段とのコラボレーションCDのリリースがリリースされ、さらに非常階段のUSAツアーへの帯同も決まったようである。満足に練習すらさせてもらえなかった状況から、ここまで来た彼女たち。その活躍は、後続のアイドルたちへの励みにもなるに違いない。混沌としながらもクリエイティブな表現が次々と生まれつつある、現代のアイドルシーンを象徴するような存在であるあヴぁんだんど、チェックしない手はないだろう。


(追伸)
「点滅ばいばい」の歌詞について「ティーンエイジャーの心理を代弁している」と書きましたが、考えてみるに、特に十代に限定されるものではなかったですね。例えば、彼氏に振られた女性なんかにはドストライクな歌詞なのでは。多くの人の心をつかむ言葉だと思います。