CDレビュー:バニラビーンズ『VANILA BEANS Ⅴ』 | アイドルKSDDへの道(仮)

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心に茨を持つ山梨県民こと「やまなしくん」のブログ。基本UKロックが好きですが、最近はもっぱらオルタナティブなアイドルさん方を愛好しています。

バニラビーンズ(バニビ)と言えば、ピチカート・ファイヴの「スウィート・ソウル・レビュー」のカバーのような「渋谷系」オシャレ楽曲や、デビュー曲「二コラ」のような清涼感のある良曲ポップスを歌うグループ…というイメージだったので、このアルバムの内容は驚きだった。#1「Say Goodbye」こそ「北欧の風に乗ってやって来た…」というバニビのコンセプトに忠実ながら、東京女子流の楽曲で辣腕を振るった松井寛氏によるグルーヴィーなファンク歌謡である「女はそれを我慢しない」から一気に「踊れる」曲を連発。「Lady Survivor」ではPerfumeやCapsuleを彷彿とさせるエレクトロ・ポップを聴かせてくれるし、ラテンな「情熱バイオレンス」や豪快なブラスファンク「ビーニアス」は、往年のアイドル歌謡曲っぽさが懐かしくもカッコ良い!

また、洋楽へのこだわりもバニビの特徴。これまでに、イギリスのギターポップバンドBelle and Sebastianの曲をカバーしたり、アメリカのインディ・ポップバンドMGMTの曲をカバーしたりしていたので、フジロックへ行くような洋楽ファンにはちょっと見逃せない活動もしているのである。 今回はイギリスの覆面バンドGORILLAZの「DARE」をカバー。リミキサーRAM RIDER氏の手によって、アッパーなダンスチューンに仕上がった。また、THE STARBEMSの日高央氏は3曲を提供。ベースのリフのカッコ良さが鳥肌モノの「ナイト・アンド・フライ」は当然ドナルド・フェイゲンへのオマージュだし、「スタイル・アンド・カウンシル」はタイトルからしてもう明らかなわけだが、そんなヒダカ氏の遊び心がバニビの洋楽志向にバッチリハマっている。

ダンサブルなナンバーが多い本作だが、それだけではない。「lonesome X」では孤独なクリスマスを題材にし、「だって世界は君が思うよりもっと」では、奇跡のような夢への切ない希求を歌っている。ちょっと泣けるような繊細なポップス、その魅力をバニビは失ってはいないのである。

実に8年のキャリアを持つバニビは、いわゆる「楽曲派アイドル」の古参でもある。そのキャリアにふさわしい、良曲の詰まった充実した内容のアルバムだ。目指せ10周年!