CDレビュー:POP『P.O.P』 | アイドルKSDDへの道(仮)

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心に茨を持つ山梨県民こと「やまなしくん」のブログ。基本UKロックが好きですが、最近はもっぱらオルタナティブなアイドルさん方を愛好しています。

新生アイドル研究会BiSのカミヤサキが、グループ解散と同時にソロアイドルユニット「いずこねこ」のミズタマリと「プラニメ」を結成し活動するも、1年を経ずにミズタマリが脱退。その後4人のメンバーが集められ、5人組グループPOP(ピーオーピー)が誕生。プラニメの曲「Plastic 2 Mercy」から、"Period Of Plastic 2 Mercy"の頭文字をとってPOP…という、分かりずらい由来と検索に引っかかりにくいグループ名だったが、略称はピオピということで分かりやすく定まったようである。

POPの楽曲における最大の特徴はEDMサウンドの導入である。僕はそのジャンルに疎いので詳述できないが…アヴィーチーを想起させると話題になった冒頭曲「Plastic 2 mercy」を筆頭に、アクの強いシンセ音とダンスビートで彩られた曲が並んでいる。しかしガチEDMではなく程よい味付けで、アイドルソングとして素直に聴けるものになっている。アニメソングやボーカロイド曲に慣れ親しんでいるリスナーにも楽しんで聴けるのではないだろうか。そんな中で、アイドルソングっぽさ全開の「who am I?」やロック調の「UNIT」が良いアクセントにもなっている。松隈ケンタの泣きのメロディが炸裂する「pretty pretty good」、サビで「オーオーオー…」と大合唱必死の「3rd FLOOR BOYFRIEND」、疾走感あふれるドラムンベース「Daydream」が、個人的オススメである。

このアルバムは、タワーレコードのアイドル専門レーベル「T-Palette Records」からリリースされており、楽曲クオリティについてはもはや保証されたようなものであるが…アイドルの歌にありがちな斉唱を排し、サビにおいても独唱させることによりメロディの強度を失わせない作りは、評価に値する。メンバーの歌唱は「可愛らしさ」成分よりも「カッコ良さ」成分が百倍で、その媚びることのないひたむきな歌声は好感が持てる。ちなみに僕はPOPのライブを観たことがあるが、キレキレのダンスがすごくカッコ良くて、弾けるような元気さを感じることができた。パフォーマンスのスキルは相当高いと言ってよいのではないか。

歌詞は、10曲のうち8曲をメンバー自身(および"元メンバー"のミズタマリ)が手がけており、不安を感じながらも前へ前へと進もうとする彼女たちの心情が色濃く投影されている。特にカミヤサキによる「過去の思い出にすがりそうな僕は 進みだした 明日を選んだの」(「Daydream」)とのリリックは象徴的で、切迫した想いが読み取れる。2015年8月の、このアルバムのリリース直後に発表されたカミヤサキの無期限活動休止と同年12月の活動復帰は、それらの歌詞にさらなるリアリティを与えるに至った。「誰もが傷付かない星なんてつまらないのさ」(「Letter」)…POPの掲げるテーマ「キング・オブ・ポジティブ」とは、単に「前向き」を称揚することではなく、傷付きながら未来へ進もうとする意志であることを、このアルバムは教えてくれる。そんなアイドルの"戦い"を見逃すな!



(このPVひどいなー 笑)