先日、健康診断でいくつかの項目が引っ掛かり、循環器内科を受診してきた。
私は薬学部を卒業し、薬剤師資格も持っているが、現在は研究と教育を主とする立場にある。
だからこそ今回の受診は、一人の患者として、どこか新鮮な体験でもあった。
採血だけではなく、動脈硬化度の測定や心臓のエコー検査など、これまで受けたことのない検査が続く。
学生時代に講義で学んだ検査や測定法が、実際の医療現場で行われている。
画面に映る自分の心臓を眺めながら、「ああ、本当に教科書どおりなのだ」と妙なところで感心してしまった。
患者として受診しているにもかかわらず、どこか社会科見学のような気分でもあった。
そんな気持ちは、診察室で医師の説明を聞いた途端に吹き飛んだ。
「心臓の形が、少し普通とは違いますね。」
思いもよらない一言だった。
中性脂肪や血糖といった、血液検査の不良項目を取り上げて、「生活習慣を改善しなさい」と釘を刺されることを想定していたのに。
幸い緊急性はないようだが、それでも不安は募る。
次回の検査は数ヶ月後だが、その時までに何かあったら…そういえば以前より動悸や胸の苦しさを感じるような気がする。
家族歴はどうだっただろうか。
不整脈の可能性は。
そう考え始めると、次から次へと思考が枝分かれしていく。
学んでしまったがために、却って心穏やかではなくなった。
それでも、医師は他の項目の説明を続ける。
「薬を始めてもおかしくない数値です。ただ、まだ若いので、まずは運動と食事から頑張ってみましょう。」
耳の痛い話である。
正直、わかりきっていた。
高度肥満にあたる体型で、自分でも良くないとは思っていた。
それでも、正論は突き刺さる。
結局この日は、検査代と診察代を支払い、生活習慣を改めるよう諭されて帰宅した。
ことさら贅沢な休日である。
健康を損ねてからでは、このような権利はもう買えない。
そう思えば、この日は「叱られる権利」を買った一日だったのだろう。