テレビをほとんど見ることがなくなって久しいが、飽かずに観ているもののひとつに「家、ついて行っていいですか?」という番組がある。
終電を逃した人にインタビューし、自宅までのタクシー代を払う代わりに家について行っていいか聞き、OKした人の家で、改めてその人のこれまでや現状、未来の話など聞いていくといった内容。これだけ聞けばとても面白いとは思えないのだけど、観てみるとこれが面白い。
インタビューを受けるのは、終電を逃した普通の人たちなんだけど、話を聞いてみると、内容は千差万別、普通の人など一人もいない。
皆、何らかの問題や、大きな夢や、あるいは特殊な性癖や、所謂普通と言われるくくりから外れている何かがある。人との関係を築く上で凄く勉強になる。世の中に普通の人というのはいないということがよく分かる。
問題の無い家庭は無いし、個人的に完璧な人間もいない。希望のない人はいないし、無くて七癖、癖のない人もいない。
幸福を望まない人はいないけど、幸福の価値観は様々。
例えば別離というワードを聞けば、ネガティヴな印象、失敗のイメージがどうしても先行してしまうが、人によっては幸せになるための別れかもしれないし、それこそ、病気や貧乏なんかとは別離れられたら幸せだろう。言葉や物事の表面だけを捉えて簡単に判断を下すのはやめないと。普通に惑わされるな。普通に片付けるな。てか、普通って何?中2か。
「フェイブルマンズ」2022年 アメリカ
監督 スティーブン・スピルバーグ
スピルバーグの自伝的作品らしい。
頭が凄く良くて優秀な堅物の父と、色んなことに自由な精神を持った天真爛漫な母。かわいい妹たち。普通に幸せな家族だけど、問題が無い家庭などない。家庭の問題や、人種の問題、思春期の問題、どれも誰しも形は違えど同じような経験はすることだけど、そのなかで才能が醸成されていく。
何者でもなかった彼が、著名な映画監督の一言に心踊らせ、大きな希望を持つラストシーンは彼のこれからの成功を暗示しているようで心に残った。