口が渇く、足が震える
心臓がペコペコ・・・
そう、ドックンドックンなんて格好良いものじゃない!
シャツ、ベスト、ジャケットの上からあてた手に確かに伝わる鼓動・・・。

この舞台を作るために50人余りの出演者の皆さん
そして、スタッフの皆さんはどれだけの時間と情熱を費やしてきたのだろう…
と、思うとこの緊張は当然です。


ご自身の出演舞台のお知らせを送ってくださった
河野うさぎさん・・・うさぎさんの御挨拶状とチラシを見て
見に行きたい!!と思ったものの
なかなか自分の時間が作れず・・・千秋楽前日まで来てしまった。
何とか時間をずらして、見に行けるか…と思い切り。
前夜、うさぎさんにメールをしました。
千秋楽は競争率の厳しいモノです。まして今回の出演者、作品を考えると
メールの答えにゆだねようと・・・・。
当然一般売りは満席でしたが、席をご用意いただけました。

結果、本当に見ることができて良かった!!本当に素晴らしく、意義深い舞台。
見なければ後悔していたでしょう。
「特攻の母」と呼ばれた
鳥濱トメさんを中心に富屋食堂を訪れる
神風特別攻撃隊隊員の姿やその家族
そして、戦中戦後を描いた作品です。


興味というより
今の日本に生きるものとしての責任(?)とでもいうような感情で
うさぎさんのご縁に感謝しながら眠りについたのですが・・・・。


翌午前中に
「だめもとで・・」から始まるメールが届きました。
毎回、大林素子さんが主演という縁があって
トップアスリートの皆さんが開演前の朗読をされてきた。とのこと
本日の公演には、皆様の予定は合わずか
朗読の予定がなかったところに、
私が観劇させていただくことになり「朗読してもらえないか。」という内容でした。


僕は、以前から特攻に思い入れ…というか激しく心を打たれていました。
始めは漫画だったと思います。
そして、靖国神社・・・鹿児島公演に赴いた折
知覧にも行きました。

この舞台、
本当に深く重い作品です。
そりゃそうです。全てが実話!
なんの飾りもなく、強く潔く我が命よりも尊いと思える大切にしたい命を守るために
我が命を投げうって行った人たちの話なのですから。

特攻に対する意見や見解は様々あると思います。
どんな思いで特攻していかれたのか?
そのご家族は?
この作品でも「なぜ戦争をしたのだろう。」と
正解のない問いがわいてきます。


そのような舞台の始まりに
朗読を・・・・
移動の最中にも電話でお話しをしていました。
「本当にぼくが読ませて頂いて良いのか…」との思いをもちながら
決心したのは・・・唯一
特攻していった人たちの遺書を知覧で拝見した時の
「これは伝え残していかなければいけない!」との感情を思い出し、
その思いだけならば・・・
今回の出演者やスタッフの皆様に少しでも並ぶことができるのではないかと思ったからなのです。

きっと、これほど思い入れがなければ
悩む事もなかったでしょうし、簡単にお断りをしていたかもしれません。
思い入れがあるからこそ深く悩んだ部分もありますが…。


出演の決心をした結果が、
冒頭の文章の通りです。
(実は、緊張故のお腹の痛みは舞台開演後しばらくまで続いていました。)


楽屋に通され、久々の再会やはじめましてのご挨拶。
千秋楽のお祝いなどをさせていただき・・・
頂いたお部屋で朗読の原稿に目を通すと・・・・
1ページ目の半ばで・・・ダメでした。

最後の遺書の抜粋などは・・・・・・・。


重く深い題材を取り上げた作品・・・
多くの人の想いが詰め込まれた舞台・・・
より良い幕開けにならなければお邪魔した意味がない!!

何よりもこの作品を今この時代に
作りご覧いただく意味や、その時代を生きた人々の想いを
しっかりとお伝えしたい!!と
欲と言えば・・・そうでしょう。
自分で自分に、プレッシャーを。



最後のご挨拶でも申させていただきましたが
知覧で見た遺書の中に
A3判ほどの紙に大きな雄々しい字で
「大ありがとうございました」とだけ書かれたものが。
今でも覚えております。

この世に、残していく家族に、
最後にどんな言葉を・・・
何を言って死んでいくのか…
話したいこと、伝えたいこと、残したいこと
たくさんたくさんたくさんあったと思います。
どれだけ書いても書き尽くせない
どれだけ伝えても伝えきれない
・・・・それはそうです・・・・
今までのことのみならず、自分の見ることのできない
一緒にいられない、自分が死んだ後の
未来の事までもが心にかかるはずですから…。

書いても書いても足りないからこそ
この「大ありがとう」だったのだと思うと
僕たちは、この数少ない言葉から
沢山の思いを感じ、くみ取り、伝え、残していかなければならないのだと思います。

今ほどの自由と平和を与えられているのだから!!
当時の人だけが僕らと違う感情をもった生き物であったわけがないのだから!!


今回、思わぬことで
このようなすばらしい作品にひとときでも
参加させていただけたことを光栄に思います。


会場の皆様に少しでも
伝わっていれば報われます。
(ご覧いなった方、感想をお寄せいただければ幸いです。)



そして、今回
お誘いいただいた河野うさぎさんは
この6月5日からアフリカのマラウィに赴かれます。
アフリカに渡られる前の最後の舞台!!
拝見できて、そして、再び同じ舞台に立てて
暖かい気持ちを頂きました。

痛いほどの気持ち
生きた時間
生きている時間
大切なものを沢山

ありがとうございました。



ちなみに今回は再演でした。
再再演の時には是非ご覧ください。
色々な背景を背負った人々をトメさんを軸に
オムニバスのように心の流れを話の流れに結び付けている演出で
あっという間のノンストップ2時間半です。

大林さんはトメさんの亡くなった
89歳までやり続けたいとおっしゃってました。

是非!!



まとまりきらない文章を
最後までお読み頂きありがとうございました。
気付いたことはご指摘ください。