元重製陶所の元重慎市です。
島根県にある、日本でも珍しいすり鉢専門メーカーで働いております。
このたびはご訪問いただき誠にありがとうございます。
こちらの記事は以下の記事の続きになります。
~すり鉢の製造工程② 石だらけでそのままでは使えないの原料の粘土。石を取り除く方法とは?~
前回の記事までで、すり鉢の原料である粘土についてお伝えいたしました。
この記事では、その粘土を使って、すり鉢の形ができるまでをお伝えいたします。
すり鉢の内側には、皆様ご存知のようにギザギザがついております。
このギザギザは『櫛目(くしめ)』と呼ばれ、すり鉢の命とも言える存在です。
この『櫛目』どのようにしてつけられているかご存知ですか?
・型押しで次々と作られているイメージを持たれていた方もいらっしゃるかもしれません。
・器を作った後、最後にギザギザを貼り付けるものだと思っていた。という方も過去にはいらっしゃいました。
実は、元重製陶所のすり鉢のくし目はすべて1つ1つ職人の手作業でつけております!
※ちなみに、弊社では作っていませんが、型押しでくし目をつけるすり鉢も存在します。
では、くし目が手作業でなければいけない理由もふまえて、すり鉢の形ができるまで説明していきます。
まず、原料となる粘土を、真空土練機とよばれる機械で練ります。
粘土の内側の気泡を抜くためです。
気泡が混ざっていると、すり鉢のところどころに穴が開いてしまい、不良になってしまいます。
こちらが、真空土練機で練られて、
すり鉢1個分の大きさになった粘土です。↓
次に使用する機械が、自動ろくろと呼ばれる機械です。
ここにセットするのが、石膏で作られたすり鉢の器の形をした型です。
石膏型と呼ばれます。
この石膏型の中に、すり鉢1個分の粘土を置きます。
次に上から『コテ』とよばれるすり鉢の内側の形をした部品がゆっくりと降りてきます。
石膏型を回転させながら、コテが徐々に下がり、粘土を石膏型に沿って押し広げていきます。
最後にはみ出た粘土を切り取ったら、すり鉢の外側の形ができあがります。
この時点ではまだくし目がないので、ただの器です。
ここからくし目をつける作業になります。
金属を削って自作する「めかき」と呼ばれる専用の道具を使います。
ギザギザの部分を鋭く保つことが、鋭いくし目を作るコツなので、この「めかき」も包丁のように定期的に研いでメンテナンスを行います。
くし目をつける作業では、さきほどできた器にめかきを押し付け、粘土をかきとるようにして、くし目をつけていきます。
1箇所くし目をつけたら、器を少しだけ回転させ、新たに次のくし目をつけます。このとき、前に付けたくし目の一部を消すようにして新たなくし目をつけます。
このようにして、器を1周させて内側の全体にくし目をつけます。
すり鉢の内側を注意深く見てみると、三角形のピザのような形で、くし目がついている箇所と、四角い形でくし目がついている箇所があります。
この四角い部分は、最後にくし目を付けた部分で、手作業でくし目をつける場合、必ずこの四角い部分ができます。
ですので、この四角い部分が『ない』すり鉢=『型押しで作ったもの』です。
※最近、型押しで作られるものの中に、この四角い部分を再現したものも売られていますので、四角い部分が『ある』すり鉢=『手作業で作られたもの』とはならないようです。
型押しで「くし目」をつける場合、型の性質上、どうやっても鋭い「くし目」を作ることができません。先が丸くなります。
百円均一で買った型押しのすり鉢(側面から)↓
その点、手作業でくし目をつける場合は、鋭い金属の道具で粘土をかきとるので、鋭いくし目ができあがります。
弊社のすり鉢(側面から)↓
そのため、すりつぶしやすさは、間違いなく手作業のものが優れています。
弊社では、よくすれるすり鉢をお届けするため、手作業にこだわってすり鉢を作っております。
その後、ふちの部分についた余分な「くし目」を消し、軽く乾燥させます。
そして、半乾燥状態くらいで、石膏型からすり鉢を抜きます。
(石膏型から抜く作業は機械で自動で行います。)
石膏型から抜かれたすり鉢はフチがとがっています。
フチのとがった部分を削り取って、フチを丸く整えれば、すり鉢の形が完成します。
こんな感じで、カンナと呼ばれる道具を使って、人がふちを丸くします。
この作業を「仕上げ作業」と呼びます。
これを約2週間、風を当てながら乾燥させたものが素地(しらじ)と呼ばれます。
以上、すり鉢の命である『くし目』についてでした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
次の工程は
すり鉢の製造工程④ 焼き物作りには欠かせない工程『釉がけ』とは?
です。