「絶大なるもの」
Ⅰ
人間が自分で生きようとしたら
絶望でしかない
死に向かって
苦しみの道を歩く
昔人たちを
笑うなかれ
何一つ
変わりはしない
＊
這い上がっても
また落ちる
だれもが
そうでないと言えようか
まず
己のどうしようもなさを知ること
そこから
人生は始まる
＊
人間には
何一つ持ち合わせるものはない
そして
残されるものはなにか
死か滅亡か
悲惨か絶望か
ただただ
ここに与えられていることを思うがいい
＊
人間は
なにを知り
なにを求め
なにを失い
ああ 人間は
しかしまだ早い
ここで
ストーリーは終わらない
＊
ここにいる
その凄さ
人間は
託されている
熱き想いゆえに
いま
すべての人間は
存在する
＊
あなたが
そこにいる
わたしが
ここにいる
あまりに
絶大なる出来事ではないか
人間は
愛でできている
Ⅱ
なぜ
人間は戻ろうとするのか
それは
埋め込まれているからではないか
そこに
人間を超えた
ある意志を
考えないではいられない
横たわる死を超えて
人間は生きることができる
＊＊＊
あかるむ闇
その藍の光なごみ
美しき光景
うまれくるものよ
希望をひらく
ひとひらの静寂
葉先がかすかに
揺れたような
それをいのちと
呼んでいいか
＊＊＊
生きて不安や恐れは
消えず
だから
知るのだ
これほどまでに
与えられていること
これほどまでに
信頼されていること
ここに
置かれていること
Ⅲ
走ったけれど
乗れなかった
毎日 そんな
くりかえし
朝やけを
見あげながら
ふと
考えるのです
＊
人間にはすべてが不可能です
けれどすべてが可能です
信じて
つづけるならば
私たちは
結ばれています
託された分だけ
生きるのです
＊
目をつむると
となりで
だれかの呼吸が
きこえます
たしかに
信頼されているからこそ
生かされて
いるのです
＊
人間は
悲しい
本当に
悲しい
だから
このいのちに
希望を
見出すのです
＊
生きている
それが
どれほどのことか
生涯かかって
知ろうと思うのです
いま生きています
地上のすべての呼吸と共に
motomi
※ 雑多な音を聴き分けて、微かに響く声に耳を澄ませます。