夏の呼び声 | 一冊の詩集

一冊の詩集

人生終わるとき一冊の詩集が出来上がっていたら。
一日一日を大切に。

人のことは見えても、自分のことは中々気づきません。

自分の姿は、人との関わりの中で知ることができます。

「教えていただく」姿勢はいくつになっても大切ですね。

どうぞ、心健やかな一日でありますように。

 

 

「夏の呼び声」

 

  a

 

白い花は 純潔

おじぎする 向日葵たち

 

透きとおったブラウス

銀色のスニーカー

 

あなたに 会いに

 

  *

 

川原で

ボールをける少年たち

 

缶ジュースを飲みながら

歩く人さえ

 

熱い かげろう

 

  *

 

昔 はしゃぎながら

海 山 太陽と 出会った

 

いま

このひとつひとつを

 

人生に ささげよう

 

  *

 

立ち枯れたとうもろこし

戦い終わったように

 

耕された土も

赤くはだけていて

 

真夏の 静寂

 

  *

 

目の前を

さまざまな人々

 

それぞれに 苦しみをかかえ

それぞれに 耐えている

 

停留所という いのちの溜り場

 

  *

 

あなたに なにを

語ろう

 

きのう見た夢

あした見る幻

 

風ばかり 熱く

 

  *

 

じっとりと

アスファルト

 

うぐいすは

もう 鳴かない

 

そして セミ!

 

  *

 

なすが 炎天に つややかな

青むらさき

 

降りたバスが

カーブをくねって消えた

 

あなたは どこに

 

  *

 

霧雨のような

セミの声

 

肌にさめざめと

降りかかってくるよ

 

生きます 生きます いっしょうけんめい

 

  *

 

夏は

もう そこまで

 

どんなストーリーを

描きますか

 

心の 季節に

 

  b

 

つれてったなあ

 

あの子

 

わたアメ 金魚すくい

 

むこうには

 

八百屋 魚屋 酒屋

 

ならんでた

 

あ トンボ・・・・

 

虫たちが いちはやく

 

季節を感じるのは

 

心になんのわだかまりもないからです

 

夏まつりのころ

 

ときが逆さにめぐるのは

 

失われた日々が輝くからです

 

あれは 幻でしょうか

 

いえ 心に記されたいのちの証

 

  c

 

日傘を差して

小道を急ぐ

 

もう

アジサイも色薄く

 

この道

とうさん かあさん 歩いたわね

 

  *

 

一つ一つ数えながら

日陰をたどれば

 

給食室から

コンソメの匂い

 

子供たちよ

元気に遊べ

 

  *

 

ちらちら

スルスベリの訪れる季節

 

坂を見上げると

真っ白な雲よ

 

心はいつしか

宇宙の果てまで

             motomi

 

※ 季節は巡る、思い出を連れて。