久しぶりの朝井氏の小説。やはり小説は面白い。どんなに長いものでも物語ならいくらでも読み進められる。小説を手にした途端、隙間時間は全て小説に注がれ、夜中にまで及んで3日で読了。
煩わしいことをすっかり頭から振り払い、小説の世界に身を置く楽しさは格別だ。
江戸の終焉から明治、大正と激動の世の中を全速力で生き急いだ、西洋料理人丈吉とその妻の物語は、筋の通った商売人と政治家を炙り出す。
「国家国民を幸福ならしむこと得れば、我々の望みはそこで成っている」。そんなことを口にできるお人が今の世の中にいるのだろうか?
自分のためだけに私服を肥やすのが商売ではない、公けにも役に立ってこその商売人だ。と気骨のある生き様が胸に迫る。
女の立場から言わせてもらえば、男が寝食忘れて仕事に没頭できるのは、女の辛抱があってこそのものである。しかしほとんどの人は女性の価値を認識していない。歴史に名を残した数多の男どもは女を踏み台にしてその上で冠を被っているのだ。
歴史上の出来事と丈吉夫妻の営むレストランが世の流れに押されて変化する様が実に筆捌き宜しく、硬くならず、ユーモアたっぷりに描かれていて存分に楽しんだ。