井上道義氏のお話しandコンサートに期待をかけて出かけた。指揮者のトークが聞けることは滅多にないので、興味深々だった。期待に応えて、とても内容の濃いお話で、1971年にグィド・カンテルリ指揮者コンクールに優勝して以来、世界各地で活躍した豊富な体験が、私達の知らないお国事情をユーモアたっぷり、時には毒舌に語り、曲の理解を深めてくれた。

 演奏も芝居のように展開させたり、弦だけで演奏したりヴァイオリンがソロで奏でたり、とても変化に富んでいて「寝かせない」というだけあって楽しい演奏会だった。

特にルーマニアは馴染みがなかったので、バルトークの曲がとても印象に残った。

 指揮者自身の自伝的作品、ミュージカルオペラ「A Way from Surrender 〜降福からの道〜二幕より「降伏は幸福だ」は全曲を是非聞いてみたいと思った。

 「人は過去から学べないと感じさせる昨今ですが、私は自分を育てた両親、時代、環境、全てを描きおかざるを得ない愛と命の有限さを舞台作品にしました。(井上)」

 最後はヴィクトリア女王が君臨する大英帝国の最盛期から帝国終焉の時代を生きた英国人エルガーの祖国の魂をマーチに託した「威風堂々」で締めくくった。

万雷の拍手は鳴り止まず、いつまでも別れを惜しんだ。