もうすぐ四月ですが寒い日が多いです。

 

先日AKB48を卒業された柏木由紀さんは2020年に「手根管症候群」であることをyoutubeで公表されました。 

この時担当された医師から「本当は中高年の方に多いんですけど」と言われたそうです。 

この病気が中高年に多いのはある理由があります。 

 

手根管症候群は手首にある手根管(しゅこんかん)という神経や腱の通り道が圧迫されて指先や手の神経(正中神経)が障害されしびれや痛みが起きます。 

ボタンをかけるなどの細かい作業がしにくくなったり強い痛みが出ると眠れないこともあるほどです。 

進行すると親指の付け根の筋肉が痩せてきて最終的には手術が必要になります。 

 

これ以外にも手首から指にかけて痛みや変形を伴う同じような疾患は色々あります。 

ばね指(母指、中指、薬指がパチンとひっかかる)、ヘバーデン結節(指第1関節の腫れ痛み変形)、ブシャール結節(指第2関節の腫れ痛み変形)、母指CM関節症(母指の根元の痛み)、ドケルバン病(母指側の手首の腫れ痛み)などです。 

これらはリウマチ検査やレントゲンでも原因がわからず老化で片付けられることも多い疾患でした。 

ただこれらの病気が更年期以降の女性に多いことは以前より知られていました。 

近年、更年期の女性ホルモン(エストロゲン)減少とこうした疾患の関係が解明されてきました。 

エストロゲンの受容体は子宮内膜、乳腺、骨、皮膚、血管などにありますが、関節の内側を覆う薄い膜(滑膜)にも多く存在します。 

滑膜は軟骨へ潤滑油(滑液)や栄養を補給していて、エストロゲンがこの滑膜を柔軟に保つことで腱や腱鞘を保護しています。 

そのためエストロゲンが減少すると関節や腱が腫れて痛むのです。 

「更年期の手の障害」を更年期→menopause(メノポーズ)からMenopausal Hand(メノポーザル・ハンド)これを略して「メノポハンド」という名称を2022年に日本手外科学会が策定しました。 

 

更年期だけでなく授乳期でも妊娠中に多く分泌されるエストロゲンが元に戻るためやはり手指の痛みやしびれ、こわばりを起こすことがあります。 

ただ産後のエストロゲン減少は一時的であり、更年期では長く続きます。 

長期にわたり滑膜の炎症が続くと変形も起きてきます。 

手に限らずかかとの痛みや、首、股関節、腰などの大きな関節に広がることもあります。 

授乳期に手指の痛みがあった人や母親に症状のあった方は更年期に起きる可能性が高くなります。 

同時にエストロゲンは骨の新陳代謝に関係しているので更年期以後は骨粗鬆症の心配も出てきます。 

 

メノポハンドの病院での治療の第一選択薬はホルモン補充療法(HRT)です。 

また一部の病院やクリニックではサプリメントも推奨されています。 

疾患により違いはありますが炎症や痛みが強い場合は消炎鎮痛剤(NSAIDs)、ステロイド注射、さらに手術が選択肢となります。 

 

このメノポハンドの問題は(1)更年期(2)痛みとしびれ(3)変形の三つです。 

東洋医学において、まず(1)更年期は「腎」の衰えを意味します。 

腎とは腎臓の他に生殖器、骨,脊髄,脳を含み内分泌系,泌尿・生殖器系,中枢神経系の機能を有します。 

更年期にみられる症状はのぼせ、ほてり、寝汗、不眠(腎陰虚・心腎陰虚・心腎不交) 、冷え(腎陽虚)、食欲不振・疲労感(脾腎陽虚)イライラしやすい、抑うつ感(肝腎陰虚、肝陽上亢)などで腎の衰えが必ず絡んでいます。 

これらのタイプに合わせた漢方薬は更年期でも授乳期でも全体的な体調を整えてくれます。 

東洋医学ではエストロゲンを分泌する腎の機能をアップさせることで更年期をソフトランディングさせるという方法です。 

一方で西洋医学ではホルモン補充療法と、エストロゲン受容体に作用するサプリ、つまり少なくなったエストロゲンの補充という方法です。 

 

(2)痛みとしびれは東洋医学では体を流れる気血水が流れなくなると生じると考えますので気血水の流れを復旧させる方法です。 針灸も同じ考えです。 

メノポハンドに限れば場所が体の末端です。 

寒い日や、夕方から夜にかけてや、体が動かない睡眠から覚めた時痛みやこわばりが強くなる傾向があります。 

これらはまず「血」の流れを疑います。 

雨の降る日に強く成ったり、むくみがあるなら「水」の停滞を疑います。 

複合型もありますのでその方のタイプに合わせた漢方薬で対応します。 

西洋医学では痛みを発生させる物質を押さえたり、炎症を抑えたり、痛みを抑制する神経に働きかけて痛みを感じないようにする方法です。 

 

(3)変形は血行不良からくる栄養不足の側面があります。 

冷え切って固まってしまった場合、まだ炎症が残っている場合にそれぞれ対応する漢方薬で対応します。 

ただし変形になる前の早い段階で対応することが大切です。 

 

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・鎮痛剤・ステロイド・サプリと腎 

・腎を守るために