蒸し暑い日が続き、つい冷えたジュースに手が伸びる季節です。
ダイエットを謳う清涼飲料に使われている人工甘味料(アスパルテーム、ステビアなど)について、WHOは最近「長期的に体脂肪を減らすのに役立たない可能性が高い」という発表をしました。
人工甘味料は糖尿病・心血管へのリスクが以前から議論になっていて、清涼飲料水を飲む人は飲まない人と比べて糖尿病発症リスクが高くなるといった研究も実際にあります。
さらに人口甘味料入り炭酸飲料を飲むグルーブは、飲まないグループを比べると「腎機能」低下や「慢性腎臓病(CKD)」のリスクが高まるといった研究もあります。
他にも現代は農薬、食品添加物、非ステロイド性抗炎症薬などが腎臓にダメージを与えています。
腎臓病は急性と慢性があり、さらに糖尿などの原因から発症(続発性)することもあります。
腎臓で尿を生成する際、ろ過をする場所(糸球体)は毛細血管のかたまりです。
ですから糖尿病や高血圧、脂質異常、痛風、動脈硬化などで血管が痛むと腎臓病発症の原因になります。
一度壊れた糸球体は残念ながら再生しません。
近年腎臓の働きの低下を抑える新しい薬も登場していますが、慢性腎臓病(CKD)になると特効薬はなく進行をいかに遅らせるかが治療目標です。
腎臓の機能低下が3か月以上続くと慢性腎臓病と診断されます。
慢性腎臓病が進行し腎臓の機能が15%以下になると腎臓の機能が果たせなくなる「腎不全」となり透析や腎移植が必要となります。
腎臓は1日200Lの血液をろ過して老廃物の除去や水分、塩分、カルシウム、リンの調節、血圧をコントロールしさらに「赤血球」を作ります。
赤血球は「エリスロポエチン」というホルモンの一種で作られます。
赤血球が増えると酸素運搬能力が向上するので以前ドーピングで使用されたこともあるほどです。
腎臓が病気になると貧血になりエリスロポエチンを投与します。
このエリスロポエチンは腎臓から分泌されることはわかっていましたが具体的な場所は特定されていませんでした。
それが最近になり腎臓の「尿細管」の管と管の間のすき間を埋めている細胞(EPO産生細胞)で分泌されることが発見されました。
エリスロポエチン以外にも腎臓の病期によって様々な処方薬(降圧薬、利尿薬、コレステロール薬、ステロイド、腎性貧血治療薬、カリウム吸着薬、リン吸着薬)が必要になります。
さらに定期的な検査(尿蛋白、BUN、クレアチニン、クレアチニン・クリアランス、e-GFR、画像診断)と色々なコントロール(たんぱく質・塩分・エネルギー・リン・カリウム・水分)も必要です。
糖尿病など基礎疾患があればそのコントロールも必要となりますから腎臓疾患は定期的通院が前提です。
さて、この病気で起きやすい症状の一つに「こむら返り」があります。
腎臓病の方に限らずこむら返りで漢方薬のツムラ68番「芍薬甘草湯」を処方されておられる方は多いはずです。
足がつるとは筋肉の異常な痙攣です。
こむら返りは体内の電解質バランスが崩れて血液循環が悪くなり、筋肉が酸素不足で悲鳴を上げています。
腎臓の機能が低下すると老廃物の処理能力が低下し、水分・電解質の調整がよけいにできなくなります。
さらに透析中では血圧低下や体液量の急激な変化によりこむら返りがますます起きやすくなります。
芍薬甘草湯はこむら返りが起きてから服用しても数分で八割の方に効果が出ると言われています。
腎臓病でも芍薬甘草湯の「甘草」による「低カリウム血症」が問題となることはほとんどありません。
(担当医様にご相談してください)
ただし芍薬甘草湯でも効かない場合がありますし、カリウムの問題でどうしても甘草が使えないときは他の漢方処方があります。
こむら返りの他にタンパク尿、血尿、むくみ、高血圧、多尿、夜間尿、貧血(動悸、息切れ、めまい)は代表的な症状です。
それ以外にもだるさ、吐き気、食欲不振、頭痛、動悸、むくみ、咳、胸苦さ、息苦しさ、しびれ、不整脈、味覚異常、不眠、かゆみ、筋肉痛、身体機能の低下(フレイル、サルコペニア)、イライラ、記憶力低下、視力障害、眼底や歯肉出血、味覚異常など進行した腎臓病では多彩な症状が出てきます。
このため一つ一つの症状でなくより広範囲に効く漢方薬を処方する病院が増えています。
最近よく耳にするChatGPT、つまりAIに「腎臓病と漢方薬」について聞いてみました。
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腎臓病と漢方薬についてですね。 漢方薬はご本人の症状と体質に合ったものを服用することが大切です。 対症療法(小便の出が悪い、むくみなど)の症状改善を目的とする五苓散(ごれいさん)が効果的な場合があります1。 また、慢性腎臓病の場合は、腎臓の機能低下を遅らせることが重要です。 漢方薬では、牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)が高齢者によく用いられる「腎虚(じんきょ)」を改善する薬として使用されます2。
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「五苓散」は水分調節をする有名な漢方薬です。
むくみ、尿量減少、口渇、透析時の頭痛嘔吐など適用のシーンは多い処方です。
「牛車腎気丸」はむくみや口渇だけでなくさらに足腰の衰え(フレイル、サルコペニア)、心不全(拡張性)もカバーできます。
この二種類だけでなく他にも色々な処方があり、AIのいうとおり症状と体質に合ったものを選択していけばよい補助療法となります。
では補助療法だけでなく腎臓病の進行を遅らせることはできるでしょうか。
実は西洋医学の研究でも黄耆(オウギ 生薬名)を成分とする漢方処方(七物降下湯、防已黄耆湯)が腎不全の進行抑制効果を示したことが報告されています。
上記の二種類の他にも色々な漢方薬にその期待ができます。
つまるところ腎臓病は水分と老廃物の停滞問題であり、それが原因で体全体が弱っていく病気です。
漢方では腎臓機能(腎)の低下からの水分代謝失調(水毒)と老廃物停滞(痰飲)、さらに血流の停滞(お血)、慢性炎症(熱)、腎臓病後期の体力低下(気血両虚)を分析してそれぞれに対応するものを選んでいきます。
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