今年も残り少なくなりました。

 

現代はTVのCMやネット上でプチ整形やダイエット注射、美容サプリ、アンチエイジングの広告が氾濫しています。 

しかし老朽化した家屋の基礎を直さずに外壁をペンキだけで塗り替えるような儚さを感じます。 

こうした方法だけでは手に入らない美しさもあるのではないでしょうか。 

 

世界三大美人と言えばクレオパトラ、楊貴妃、小野小町です。 

クレオパトラと言えばシーザーやアントニウスを虜にした話術、知性、そして魔性の魅力。 

楊貴妃は当時の美の基準であったふくよかさとともに肌の美しさ、そして舞踊や音楽の才能にも秀でていました。 

小野小町は多くの求婚者を退けた美貌とともに和歌の才能も持ちあわせていました。 

容姿だけでなく「知性」と「才能」を持てた理由は「精神と肉体の健康」です。 

 

 

 

 

 

病気を治すために漢方薬を服用している方が、ご家族やご友人から「きれいになった」「肌艶がよい」などと言われることはよくあります。 

東洋医学的美しさとは外壁ではなく、あなたの体の基礎を補強します。 

東洋医学的美しさとは言い換えれば「気・血・水」が滞りなく巡っている状態です。 

これらが巡らなければ冷えやホルモンバランスの乱れなど不調が起き、それが外面に影響を及ぼします。 

東洋医学的な見地から考えると化粧水、美容液などによる外側からのケアは限界があるという結論に至ります。 

化粧品が届くのは肌の表皮の角質層までであり肌の状態を根本的に左右する要素に直接働きかけられないからです。 

肌のハリや弾力のもととなるコラーゲン、エラスチンが作られるのは表皮の下にある真皮層です。 

一般的な化粧品の成分の多くは真皮層まで深く浸透することが難しいためハリや弾力の根本的な生成を促すには限界があります。 

化粧品に血行を改善する作用はなく内臓の冷えや全身の血の滞りを解消することもできません。 

外部からのケアは「肌の乾燥を防ぐ」「一時的に保護する」というメリットはありますが、「肌を作り変える」「体質を変える」という根本的な美しさには内側からのアプローチが不可欠というのが東洋医学的な美容法の考え方です。 

美容液やクリームは最後の「仕上げ」にすぎません。 

 

サプリや医薬品は美容に必要な「物質」をピンポイントで補うという実に西洋医学的な考えです。 

現代はコラーゲン、ヒアルロン酸、セラミド、ビタミンCやE、プラセンタ、NMN他いろいろなものがあります。 

これらがあなたの体に不足しているかどうかは不明であり、またこれらの物質は生体内の複雑な代謝回路の中の一つの歯車です。 

例えば鉄欠乏性貧血なら鉄の補給です。 

しかし高濃度の鉄イオンは胃や腸の粘膜表面のタンパク質と結合し物理的に刺激して炎症を引き起こし「胃がキリキリする」「ムカムカする」といった症状がでます。 

また緩やかに吸収される食事からの鉄分と違い、腸管内や血液中に吸収しきれない「フリーの遊離鉄」が急速に増えます。 

遊離鉄は悪玉菌の餌になりやすく腸内での炎症から便秘・下痢・ガスの発生や活性酸素の発生を招くことがあります。 

また鉄は非常に反応性が高い物質であり遊離鉄は活性酸素を発生させ細胞膜やDNAを直接攻撃して酸化損傷を引き起こすことが知られています。 

 

一方東洋医学では「鉄が足りないから鉄を足す」ではなく「なぜ鉄が足りないのか」を見つめます。 

どんなに良い物質(鉄)を摂っても、それを血(けつ)に変える「脾」の力が弱いと、その物質は熱や毒に変わると考えます。 

体が処理できなければそれは栄養ではなく体にとってのゴミ(酸化ストレス)になり結果として細胞(DNA)の老化を早めてしまうことになります。 

さらに脾だけでなく血の元となる腎の「精」が不足していれば貧血どころか体の根本的な生命力が落ちます。 

つまりサプリを受け取る「体という器」を整えなければ効果は表れません。 

鉄補給が火事の火を消す作業なら東洋医学の「脾や腎を整える」のは火が出ないような家造りをする作業です。 

東洋医学のピンポイントは物質ではなく「体質」です。 

その人の体全体のバランスを整え最適な状態に導くという根本的なアプローチを取ります。 

東洋医学が見つめるのは「内面」であり「見た目」はその結果です。 

私たちは一時的な潤いではなく、あなたの体の「基礎工事」を通して美しさをサポートします。 

本当に美しい肌は内側から光を放っています。 

表面的なケアの前に細胞レベルからケアしましょう。 

東洋医学はあなたの体の土台に優しく働きかけ、見せかけだけの「理想の体型」ではなく疲れを知らない健やかな体を作ります。 

 

ダイエットが必要なら栄養不良による体への負担をなくす東洋医学的な補助もできます。 

一時的な「理想の顔立ち・プロポーション」ではなく内側から湧き出る生き生きとした血色を作ります。 

本当に大切なのは少しずつ確実に築き上げる「揺るがない健康美」です。 

あなたの肌と体は基礎から建て直す価値のある最も美しい宝物なのですから。 

 

「あなたの体質」を東洋医学理論からさらに具体的に掘り下げましょう。 

東洋医学的な美しさとは「気(エネルギー)」「血(血液)」「水(体液)」が巡ること、そしてそのためには内臓(五臓六腑)の機能が整っていることが必要です。 

楊貴妃の「艶やかでふくよかな美しさ」は、東洋医学でいう「血」や「気」が充実し、体全体が健康であった証です。 

例えば東洋医学では肌や髪の栄養は「血」によって運ばれると考えます。 

血の巡りが悪く栄養が届かなければ、いくら表面から潤いを塗布しても肌細胞は活性化されません。 

東洋医学はその人の血の巡らない原因を五臓(肺・脾・肝・腎・心)から探り論理的に浮かび上がらせます。 

その人の血の滞りの原因は汚れているのか(質)、少いのか(量)を探っていきます。 

お肌の実況見分では、シミやくすみは「血」の滞り、ニキビや吹き出物は「肝」や「脾」の負担など五臓六腑の不調を結び付けます。 

そこに舌診・問診で裏をとっていきます。 

そして根底にある問題、例えばストレス(肝)や冷え(腎)、胃腸(脾)などを解決することで血が巡り揺るがない美しさが実現します。

 これらをまとめれば3つの段階で構成されます。

 (1) 気・血・水の特定 肌のトラブルは「気・血・水」のどれかが滞ったり不足したりしているサインです。 

●気の巡り・・・ストレスや疲労によって気が滞ると肌のトーンが暗くなったり(気滞)、くすんだりします。 

●血の巡り・・・血が不足すると肌に栄養が行き渡らず乾燥や肌のハリ不足につながります(血虚)。         

        また血が滞るとシミやクマ、ニキビ跡として現れます(お血)。 

●水の巡り・・・水分代謝が滞ると、むくみやたるみにつながります(水滞)。         

        一方で、水分が不足すると乾燥や小じわの原因になります(陰虚)。 

 

(2)五臓(内臓)の特定 

真の美しさは「五臓」の生命力が作り出す健康美です。 

五臓(肝心脾肺腎)とは、東洋医学における人体の機能を指す概念で現代医学の臓器名とは異なり「機能の系統」を意味します。 

言い換えると生命活動に必要な「気・血・水」を生成・貯蔵・循環・調節する五つのチームです。 

東洋医学では特定の肌の悩みは特定の五臓の弱りとして現れると考えます。 

原因が潜む五臓をピンポイントで正すことで気血水の巡りをよくします。

 

 ●五臓(肝心脾肺腎)と美容の悩みの関連 

・「肝」は全身の調整役と血の貯蔵庫でもあり、肝臓、自律神経、目、筋肉を司ります。  

ここに問題があればシミ、イライラによる肌荒れ、目の下のくすみ、ニキビ、気の滞りによる血行不良が起きます。 

・「心」は精神とつながり血を統制し、心臓、脳、精神神経系を司ります。  

ここに問題があれば顔の赤み、血色の不良、ニキビや吹き出物が起きます。 

・「脾」はエネルギー生成の工場であり消化器系全体と脾臓を司ります。  

ここに問題があれば肌のハリ、たるみ、むくみ、唇の荒れ、クマ、顔色の悪さが起きます。 

・「肺」 は呼吸と感染バリア機能を持ち、肺、気管支、鼻、皮膚、大腸を司ります。  

ここに問題があれば皮膚乾燥とカサつき、肌ツヤの欠如・くすみ、毛髪の乾燥、アトピー、肌荒れ、アレルギーが起きます。

 ・「腎」は生命力の源と水の調節機能を持ち、腎臓、副腎、生殖器、骨、耳を司ります。  

ここに問題があればシワ、白髪、抜け毛 、顔の輪郭の緩みが起きます。

 

 (3)問題のある気血水と五臓の機能強化 

問題のある五臓、気血水に応じ症状に合わせて治療(温める、冷やす、補う、きれいにする、汗や便で浄化、水分調節など)します。 

気血水と五臓は実際には複数が絡んでいることの方が多いです。 例えばお血と心肝腎、血と肺脾、水と肺肝、気血水と肝腎といった具合です。

 

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