マイちゃん卓でLOを回収。

 

ボス(マイちゃん)の指示で、ラッソン終わりまで被りの卓に時間を使えとの事。

専属の内勤化しようとしてるのかな。

 

その代わりと言って、ゴリラみたいなヘルプが死ぬほどピンドンを飲まされていました。

 

最終的にこのゴリラみたいなヘルプはボスのお気に入りになります

 

 

さとみの卓に戻り、ワイワイやってると正面にいる陽介さん卓が見えました。

エースのかおりんを腕に抱き、静かにルイ(ブランデー)をくるくる回してました。

 

通常、LO後にその日1番売上が高いキャストへ内勤がスッと「ラッソンです」とデンモクとマイクを持ってきます。

 

陽介さんは勝利の"その時"を静かに待っていたのです。

 

僕は圧倒的な売上でこのイベントを牽引した、陽介さんがラッソンだと確信していました。

 

オープン直後から被せまくり、シャンコの嵐、マイクパフォーマンス、ホストとしての振舞い。

「やっぱりこの人凄いな」と純粋な憧れの眼差しで正面卓のカリスマを眺めていました。

 

 

その時、突如店内BGMが止まります。

 

 

代表「本日も沢山のご来店いただき、誠にありがとうございます。わたしから最後のオーダーを発表いたします。」

 

 

 

なんで、代表がマイク持ってんだ?

と、不思議に思っていると、正面の陽介さんが一言

 

 

「うーわ」

 

明らかに動揺しているような顔でした。

 

 

僕「え?何?」

 

代表は続けます。

代表「最後のオーダーです。No. 1セツナさんのテーブルより!なんと!ドンペリホワイト1発いただきましたー!!」

 

 

店内ホスト「あざーーーーす!!!!!!!」

 

 

 

僕(え、ドンペリじゃん。何で、陽介さんあんな焦ってるの?)

 

 

 

 

 

 

代表「そして!!!!!!」

 

そして??

 

代表「同じくセツナさんのテーブルより!!!

 

 

まさか、、、、

 

 

 

 

代表「本日2発目の

ルイ13世いただきましたーー!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

店内・セツナチーム「うおおおおおおおおお!!!!!!!!」

代表「只今の結果を持ちまして、本日のラッソンはセツナさんとなりました!!対決イベントの結果についても、10万円差でセツナチームの勝利となります!皆さま本日は誠にありがとうございましたー!!!」

 

 

 

セツナエース「きゃああああああ!!!!やったああああ!!!!!!」

 

セツナ「よっっっっっっっしゃああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

やられた。

 

ノーコールで最後の最後にやられた。

 

 

 

陽介さんが負けた。

 

 

 

 

ソファにうずくまり起き上がれない陽介さん。

ガクっと肩を落とすかおりん。

 

 

 

 

何も声をかけられないヘルプ。

 

 

 

 

 

 

 

まさかの出来事に声を失う僕。

 

 

 

 

 

 

 

今日は陽介さんの日だろ。

なんで陽介さんが負けるんだよ。

 

 

 

 

 

 

LO後の内勤は素早く動きます。

そういった各テーブルの状況も理解しながらも、ラッソンとお会計を素早く終わらせないと1:00の退店時刻に間に合いません。

感情を無にして動きます。

 

 

店内の空気とは真逆に、すぐにラッソンが始まりました。

 

ラッソン者が歌ってる最中に、他の全卓へ伝票をロボットのように渡しにいく内勤達。

 

 

ラッソン者はセツナ。

L'Arc〜en〜CielのDriver's Highを狩野英孝ばりのクセ強で歌い上げます。

 

 

 

うなだれる陽介さん。

そこへ内勤が、かおりんへ伝票を手渡します。

 

 

バカ騒ぎしてるセツナのラッソンが流れる中、カバンから大金を取り出し、淡々と150万以上のお会計を伝票にパンパンに挟み手渡します。

 

 

 

ホストクラブでは、こういった残酷なお会計シーンが存在します。

普通の世界では、150万円なんて使ったら王様の様に扱われるものです。

 

 

 

いくら大金を使おうが、勝ちと負けがハッキリ出るホストの世界。引き分けはありません。

 

 

そのリアルな光景をみて、非常に僕も残念な気持ちになりました。

 

 

 

個人としては初ナンバー入り・売上100UP・初被り、どう考えてもとても嬉しい日でした。

 

けど、それにしても、陽介さんが負けたの目の当たりにして信じられない気持ちでいました。

 

 

最後のセツナのルイ13世は狙ってきたものです。調整してギリギリ勝てる所を狙ってきました。その証拠に同時にドンペリを入れて保険をかけてきたのです。

 

陽介さんと自身の売上差額をしっかり計算し、オールコールで陽介さんがルイ13世を入れたのを見て「もうLOでの追加はないだろう」と読み、ノーコール(シャンパンコールはせずにマイクだけで済ます)でまくってきたのです。

 

 

陽介さんもシャンパンコールはせずに、LO後ノーコールでいってたら、もしかしたら勝ってたかもしれません。

 

 

ただ、陽介さんは"店のイベントを盛り上げる"というパフォーマンス的な部分を優先し、それが最後の勝負所で裏目に出た形となりました。

 

したたかで戦略的な部分はセツナの強みです。

ただ、それであるからNo. 1なのです。

 

認めたくはないですが、彼は相当なリアリストなので勝てる勝負を確実に勝ち続けるホストです。女の子が大金を使って勝負に出る時には必ず勝つのです。だから女の子からの信頼が高い。安心して高額をぶっこめる要素が備わっています。だからずっとNo. 1なんです。

 

ホストの世界において、今日の出来事は陽介さんの詰めが甘かったという話になります。

 

 

 

  ブチ殺す

 

ショックを隠しきれない陽介さんに追い討ちをかける出来事が起こります。

 

 

 

ラッソン終了間近。

 

 

テンションブチ上がり中のセツナがやってくれました。

 

ニッタニタした顔でシャンパンファイトを行い、店内をシャンパンまみれにしています。

 

 

止まらないクセ強ラルク。

 

 

ラッソンは店内にいる全員が聞いています。

そんな中、最後の大サビで事件は起こります。

 

 

L'Arc〜en〜Ciel 「Driver's High」

歌い手はセツナさん

 

 

"駆け抜けてよー時間切れまでー

生まれつーきの!カリスマなのさー!Woh!

Clash!Into the rolling morning!

聞け!ケイトと陽介ーーー!!!

来世でまた会おうーー!!!

イエーーーーーーww

 

 

 

それを聞き手を叩いて大爆笑するセツナエース。

 

 

若干引く店内。

 

 

 

代表が走ってやって来て即座に注意するも、絶賛テンション爆上がり中のセツナは

「関係ないからー!関係ないからー!」と言ってお構いなし。

 

 

そしてセツナはソファに立ち、

僕に向かってベロを出し、中指を立ててきました

 

 

 

 

 

 

殺す

 

 

 

 

 

 

今日こそヤツをブチ殺す

 

 

 

 

 

 

 

「テメェこっち来いよ」と怒鳴る僕。

それを見たセツナも更に興奮して臨戦態勢へ。

 

 

 

 

ヤツを全員の見てる前でブチ殺して店を辞めよう。

そう決意してセツナ卓へ行こうとすると、内勤が飛びかかって止めに入ってきました。

 

 

内勤を吹っ飛ばし、セツナの所へ進撃。

 

 

 

陽介「やめろケイト。落ち着けお前」

 

目の前の卓から、静かな口調で陽介さんが止めにきました。

 

僕「いやアイツは調子に乗りすぎだろ!!今からあのクソ野郎を殴っ・・・」

 

 

 

 

 

陽介さんが、、、、

 

泣いてる。

 

 

 

 

 

陽介さんはそれ以上は何も言わず、僕の頭を軽くポンと叩き自分の卓へ帰りました。

 

 

 

目のずーーっと奥がグッと押されるような鈍い感覚。

 

 

 

陽介さんに止められるのはこれで2回目か。

これで僕が暴走するのは、陽介さんのメンツを潰してしまう事になります。

 

 

落ち着け俺、落ち着け俺、落ち着け俺

 

 

セツナとセツナエースは僕に聞こえるように

「酔っ払いはこえーわ」とか「ど素人が」とか「勘違いしてんじゃねえよ」的な事を言って騒いでいました。

 

 

 

なんで、こんな事が許されてるんだ?

この店がそうなのか?そういう世界なのか?

 

今思えば、そういう世界でもありながらも、された事は普通ではないと思います。

 

当時の代表は売上主義なので、要は「売上があれば何でも許される」って感じだったのです。

 

まあ時代もあったと思います。

 

 

とにかく納得がいかないが、自分を抑えるしかない。

陽介さんに止められた時、一瞬だが確かに陽介さんは泣いていた。

 

 

よっぽど悔しかったんだろう。

 

 

オープン前に俺たち下っ端に気合いを入れて、本当に締日のように売上をあげた。何より"ホストの見せ方"を俺たちに教えてくれた。

 

 

そんな陽介さんに止められたのなら、暴れるのだけはやめよう。

 

 

スッと前回の煽りの時に言われたセリフ「ここで殴ったらお前の負けや」的な事を思い出しました。

 

吹っ飛ばした内勤に謝りにいきます。

 

内勤は殴られると思っていたのでしょうか、シャンパンタワー時に使用するテーブルクロスをサラシのように腹に巻き、ファイティングポーズをとってきました。

 

いやいやお前こういう状況慣れすぎだろ。

 

素直にゴメンなさいと言うと向こうも「あ、全然いいよ!気持ちは分かるから、プロとしてあと少しだけ頑張ろう!」と優しく声をかけてくれました。

 

 

そうだまだ仕事中だ。

どんな状況であれ、送り出しはスピーディーにしないといけません。

今はまだ営業中。切り替えろ俺。

 

 

  送り出し

 

さとみ「何あいつ。ヤバくない?」

声が震えてます。

 

僕「ああ。あいつヤバいんだよ。」

 

さとみ「ケイトかわいそ」

 

僕「は?いいよ、もう。お前もうるせえ」

 

なぜか、八つ当たりをする僕。

 

さとみ「ごめんね」

 

僕「(ヤバい素が出た)ごめんごめん。さとみは悪くないね。ごめんごめん」

 

 

冷酷ヘルプ「でも、確かにさとみちゃんはうるさかったかもですね」

 

さとみ「だから、謝ったじゃん‥」

 

(絶対悪いの俺で草)

 

 

さとみ「お会計終わったし、帰るね!」

 

僕「なんか最後変な感じになってゴメン。また来てよ!」

 

さとみ「そのうちね」

 

冷酷ヘルプ「来週来たらいいじゃないですかヘラヘラ」

 

さとみ「あんたはうるさい」

 

このまま返したら切れるかもな。どうする俺。

 

僕「さとみ、来週同伴してほしい。こう見えて俺パンケーキ好きだから、表参道でも行こうよ!」

 

さとみ「パンケーキ食べるー!土曜ね!」

 

(めっちゃ簡単で草)

 

 

僕「了解、了解!」

じゃあ俺はここで!!

 

さとみを冷酷ヘルプに送り出してもらい、僕は速攻でマイちゃんの元へ帰卓。

 

 

酔いが回ってるのか、顔を赤らめ「あぁ〜んコラ?」みたいな雰囲気になってます。

 

 

マイ「これはこれはご機嫌斜めなケイト君ですか?」

 

僕「少しだけ斜めだよ」

 

マイ「少しじゃないでしょ」

 

僕「少しだよ」

 

マイ「顔キレてるよ」

 

僕「まじか」

 

そんなマイちゃんの顔もキレてるけどね。

 

 

明らかに不機嫌なマイちゃん。

 

そこへ陽介さんが現れました。

どうやら同じチームとして売上に貢献してくれたマイちゃんにお礼を言いにきたようです。

 

 

この時点で、"完全な触るな危険"の人物登場に卓に緊張が走ります。

 

 

陽「マイマイ情けない姿を見せてしまってごめんね。セツナのラッソンもごめん、、」

目が真っ赤の陽介さんが、マイちゃんに謝ります。

 

本来、陽介さんが謝る事はないのです。

メンタルめちゃくちゃキツイ状態で、マイちゃんを気にかける陽介さん。

 

 

マイ「情けなくない。陽介さんはカッコよかったよ。エースの女の子もカッコよかった。今はセツナなんてどうでもいい」

 

 

陽「ありがとう。あ!そんな事よりケイト初ナンバーおめでとうやな!暗くしてごめん!

 

パァッと明るい笑顔で祝福してくれる陽介さん。

 

 

マイ「初ナンバーだったねケイト!忘れてたよ!よかったね!全部あたしのおかげだね!」

 

 

僕「ありがとうございます!全部マイちゃんのおかげです!」

(良かった。卓の雰囲気が良くなった。陽介さん本当に感謝します)

 

 

  決戦のゴング

卓のテンションが戻り、ゴリラみたいなヘルプも盛り上げようと、バックヤードからテキーラを大量に盗んできた模様。

普段だったらブチギレられるけど、この状況であればめちゃくちゃ優秀!!!

 

ショットで乾杯します。

ワイワイやってるとそこへなんと

 

代表がやってきました。

 

 

代表がヘルプに着くというのはすなわち

「大事なゲスト」という事です。

 

 

 

代表「マイさん。代表の○○です。ご一緒よろしいですか?」

 

 

(本当に代表きた!!!!

マジかよ!!!!

なんて卓なんだ!!!)

 

 

と、卓に緊張が走ります。

 

 

僕「え!!!あ、どう」

 

 

 

 

 

マイ「嫌です」

 

 

一同「え?」

 

 

マイ「帰ります」

 

卓「・・・」

 

 

マイ「帰りますので」

 

僕「・・・」

 

代表「わかりました。。良かったら次回は着かせてください」

 

 

マイ「嫌です」

 

 

取り付く島もないとはまさにこの事です。

 

代表もペコっとおじぎをしてバックヤードへ戻っていきました。

 

さっさと帰る準備を済ませ帰ろうとするマイちゃん。

 

 

テンションがジェットコースターのような卓です。

盛り上がった→盛り下がった→盛り上がって→盛り下がった

 

 

セツナの前回から続く暴言、態度そういったキャストに対してロクな教育が出来ていない、それにしっかりとした代表としての謝罪がない事にマイちゃんは腹を立てていたのです。

 

 

 

 

陽「マイマイ、また今度ゆっくり、、」

陽介さんもマイちゃんの代表に対する態度にビックリしていました

 

 

マイ「陽介さんありがとう。もう一回言うけど今日の陽介さんはカッコよかったよ」

 

 

陽介さんには優しいマイちゃん。

 

 

ヘルプも全員抜けて僕と2人になりました。

 

僕「本当にもう帰る?」

 

マイ「帰る。」

 

僕「わかった。じゃあ送ってくね」

 

 

気難しさランキング年間上位者であり、曲がった事が大嫌い選手権3連覇中のマイちゃんは、こうなるとかなり厄介です。

 

 

マイちゃんのカバンを持ち、出口に向かいます。

 

帰り際、出口付近にはいつものセツナエース卓があります。

セツナエース卓には何人ものヘルプが着いています。

 

その横を通る時、もちろん僕はセツナにメンチを切っている状態です。

セツナもこちらに睨みをきかせています。

 

(こいつはいつか必ず仕留める)

 

担当同士が一触即発の状態で、まさに横を通り過ぎようとした時

 

 

 

「・・が。」

 

 

 

 

僕・マイ「??」(なんか言ってきたな)

 

 

 

 

「・・が。」

 

 

 

 

僕・マイ「、、、、」

 

 

 

聞こえるか聞こえないかくらいのボリューム。

ただ絶対に相手に聞こえるタイミング。

相手は2度言ってきました。

 

 

 

 

 

 

 

「ブスが」